毛唐もすなるブログといふものを

日本男児もしてみむとてするなり

EU憲法・その2~ドイツの目的

2005-05-06 10:41:34 | 国際
二度の世界大戦の戦場となった欧州では「外交の延長線としての戦争」を欧州域内で起こすことは許されないという機運が広がりました。科学技術と総力戦が自らの文明の滅亡をもたらしかねないということが自覚されたからです。

そういう流れをフランスは利用し自らを中心とした欧州統合を国家の戦略目標にするようになりました。しかしフランスに単独で欧州の軸となる実力はないことは明らかでした。どこかと組まねばならない。しかも「フランスの栄光」を守らなければならない。そうであれば過去300年覇権を握りその当時も覇権の一端を握っていた米英と組むことは選択肢とはなり得ないのは当然でした。フランスにとっての現実的な選択肢は仇敵ドイツと組むことだけでした。

ドイツはこのフランスの誘いに飛びつきました。欧州随一の実力を誇るドイツは国民国家の建設が遅れたばかりに二度の世界大戦を戦う羽目になり、それに連敗して歴史的な領土を大幅に失っていました。ドイツがその領土を取り返すには通常は戦争に勝つしかなく、それが不可能と観念されていたところにこの話が舞い込んだからです。

欧州が統合されれば放っておいても一番力のあるドイツ人が主流になるのは明らかだからです。欧州統合の暁にはドイツ人が旧ドイツ領に流入するでしょう。そうしてその地域の実権を握り実質的に失地を回復するのです。それが欧州統合を目指した当初のドイツの目的に違いありません。ヒトラー後遺症でドイツが前面に出られない以上ドイツとしてはフランスを名目上立てておいて実質的な部分をいただくつもりだったのです。(続く)