絵じゃないかおじさん

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ピカ輪世代です。
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仮想はてな物語 「万葉おおみわ異聞」  14/34

2015-12-09 07:59:00 | 仮想はてな物語 
  copyright (c)ち ふ


 一目見た時この人だわと感じたの。
 私が捜していた人は、この人に違いないと思った。
 あの人は、空ばかり見上げていた。
 私が、話しかけると、口の辺りを指差して首を横に振った。


 ああ口が不自由だったのね。
 悪いことをした。
 あの人は、私に手の平を出すように合図してきたの。


 それで私が左の手の平を差し出すと、
 顔を紅葉葉のように真っ赤に染めながら、
 それはそれはゆっくりと手文字を書いてくれた。
 震えているようだった。
 その仕草がとても可愛くて印象的だった。
 あの人の指先はとても冷たかった。



 けれども、手先の冷たい人は心が暖かいというわ。
 きっと、あの人も優しくて暖かい人に違いないわ。
 あの人が書く一文字ごとに背筋にビクッビクッと雷が走ったの。
 そのお話が楽しくて楽しくて仕方なかった。
 あんなに楽しい時間を過ごしたことはなかったわ。
 雨が上がっていたのも気がつかなかった。


                              つづく


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