夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

学会発表デビュー

2006年12月08日 | profession
この週末のジェンダー法学会で初めて学会発表というものを経験した。

テーマは「英米法におけるUndue InfluenceおよびUnconscionabilityの概念とジェンダー・バイアス」。
夫の債務について妻が保証したり担保提供したりする取引は、英米法において"sexually transmitted debt"としてequity上の契約取消原因であるUndue Influence(英国)、Unconscionability(オーストラリア、カナダなど)によって、一定の要件を満たせば取り消しうるという判例法理がある。
1994年のO'Brien判決がリーディング・ケースとされるが、その前提として、妻の夫への感情的・経済的依存関係を認定しているため、その問題から派生するフェミニズム法学の根源的なジレンマ(結果として弱い立場の女性が救済されるのは歓迎だが、女性=夫との関係で弱者と定義するのはいかがなものか)について提起した。
来年施行予定の改正金融商品販売法で適合性の原則が私法上無効の原因として規定されたこともあり、これについての判例も蓄積していくと思われ、その際、他の条件は全て同じなのに女性ということで投資適格がないと判断する傾向が出てきた場合、日本法でも同じジレンマに直面するのではないかと結んだ。

ジェンダー法は、公法、刑法、労働法、家族法の文脈で問題にされることが多く、私が専門にする財産法についてジェンダー問題が議論されることはあまりないので、そういう意味でも先鞭をつけられたと考えている。

自分で言うのもなんだが、会場からいろいろな質問・意見が出て、発表後もたくさんの研究者や実務家(とくに女性の弁護士)から「参考になりました」と声をかけられて、成功だったのではないかと思う。
会場が自宅の隣のお茶大だったこともあり、夫も聴講料を払って聞いてくれた。

それまではその準備で大変だったが、翌日は2学期の成績提出の締め切り。
採点自体はあらかた終わっていたが、採点基準を決めるために悩みぬいて結局徹夜してしまった。

ということで、またほとんど睡眠をとれない一週間であった。
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