夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

学期末にまた倒れる

2005年02月06日 | profession
さんざんな一週間だった。

まず、また病気で倒れた。
前期も、最後の講義の夜に過労で倒れて大学病院に一週間入院した(このブログの最初の項「入院の顛末」参照)が、やっぱり学期末って、疲れがたまるのか?

1月31日(月)、東京で中国法研究会に出席してから、夕方の高速バスに乗った。乗る直前に新宿のデパートに入っているすし屋で買った穴子寿司をバスの中で食べたが、どうも、端っこばかりを詰め込んだみたいで、煮詰まりすぎているような味だった。
S本に着く頃、ちょっと気持ち悪かったので、「バス酔いしたかな」と思いつつ、研究室に行って、深夜2時半まで仕事をしていた。

気持ち悪くて、何も食べられない。黒酢飲料のみ飲んで寝たが、吐き気がして、とうとう一睡もできなかった。朝、2度ほど吐いたが、水分しか出てこない。下痢もひどくなってきた。

2月1日(火)は、一限、担保法の試験、2限、社ゼミ最後の授業、4限、ジェンダーと法の最後の授業の予定だった。
学生委員の先生に電話して、担保法の試験監督の応援に来ていただき、健康安全センターに行ったら、すぐに大学病院の消化器内科を受診せよとのことで、受診したところ、点滴を受けることになった。社ゼミについては、今日は、現地集合で法律事務所の見学の予定だったので、弁護士の先生と学生に連絡して私抜きでやってもらうよう依頼した。
3限のオフィスアワーにアポのあった学生さんにも、病院の方に来てもらって点滴しながら廊下で会った。
500ccの点滴が終わったところで、担当医師が、「もう一本やるので、4限は休講にしてください」といったが、「最終講義なので、休みたくない」といい、200ccに換えてもらって、14時半に点滴を終え、ジェンダーと法の講義を行った。

前回からレイプ裁判の資料を読んでいるが、国家によるレイプの例として、柳美里の『8月の果て』従軍慰安婦の部分も教材として扱い、「ジェンダーバイアスは全てのマイノリティの差別、圧制につながる」と話した。
また、大学のセクハラ事件についても、なぜ好意を伝えたことがセクハラになりうるのか、この授業をやる者の責任と思い、説明した。

法科大学院の入試の問題は、私は今回全く入試に関与していなかったので、私自身もHPに書いてある時間に試験が行われると思っていた。それにしても、解せないのは、29日土曜日に起こったことを、31日(月)の夜にしか発表しなかったこと。そのため、2日(水)にしか多くのマスコミが報道できなかった(1日(火)の朝刊にはごく一部のマスコミしか間に合わなかったようだ)。
また、2ちゃんねるには、試験問題の誤字が非常に多かったという書き込みが複数ある。
このことを知って、身体だけでなく、心にも大きなダメージを受けた。

翌、2月2日(水)、吐き気と下痢は収まらないが、予定通り、2限に担保法期末試験の解説講義を行った。試験問題は、真剣に取り組むから、その解説は学生にとって吸収しやすいと思い、赴任以来必ず実行している。昨年度担保法を受講して単位を取得したI君が、ゼミの後輩に聞いて、今年度も解説講義だけ聞きに来てくれたのがとてもうれしかった。
解説講義の後、ちょうど授業で扱った短期賃借権、連帯保証人、執行認諾文言つきの公正証書等の出てくるドラマ「ナニワ金融道3」のDVDをみんなで見た。
午後は、法科大学院関係の会議に出た。 

2月3日(木)朝9時に大学病院に再び行ったら、「白血球が増加しており感染症の疑いあり」として、15時過ぎまで点滴を受けた。
頭にきたのは、その間中点滴を受けている人のカウチが4つある処置室で、女性の検査技師と男性の研修医が、ずっと大声で私語していたこと。しかも、内容が身内の噂話で、研修医がこの科に今日来たばかりなので、技師がいろいろと教えてやっていたようだが、スタッフの悪口、特徴、カラオケの趣味、結婚問題等、全部聞こえてしまった。こちらは吐き気がして治療を受けているので、静かにしたいのに、仕事の話ならともかく、くだらない話を聞きたくないし、第一、大學の一員として恥ずかしい。また、経済学部は予算が削られて大変なのに、病院はそんなに暇で余裕があるのか、と怒り心頭に発した。
看護師にいっても収まらないので、とうとう、点滴をもって起き上がって注意し、苦情相談の医事係にも車椅子で連れて行ってもらってきっちり話してきた。

それから、夜24時まで研究室で仕事をしても期末の仕事は終わらない。

何が大変って、ジェンダーと法の採点だ。
知らない人が多いようだが、学則上、3分の1以上欠席したら単位を取れないことになっているし、きめ細かい評定をしなければならないという文科省の指導で、出席をとらなければならない。
ほとんどこれを実行している先生はいないようだが、私は、出席をとることで講義時間が減るのも悪いと思い、毎回小テストをやっている。15回分、220名分の小テストやレポートを採点し、データを名簿に打ち込むのが本当に大変だ。体調が悪いなか、泣き言をついいいたくなる。
恩に着せたくないけど、「昨日飲み過ぎて疲れたから」2コマ続きの授業をはじめの60分で切り上げたり、期末試験だけで評価するのにその期末試験も翌学期が始まってもまだ採点しないような人間が上にいると思うと無性に腹が立つ。

でも、ジェンダー問題についてまじめに考え、気づく学生の真摯なレポートを読むと、心打たれ、疲れも吹っ飛ぶ。

2月4日(金)、最終のバスで東京に戻るつもりで、朝から採点等の期末仕事をしていたが、その途中である事実が発覚し、担当の委員会の先生方と一緒に対応することになり、それどころではなくなってしまった。

がーーーーん、裏切られた。

結局、5日の朝まで徹夜で仕事し、バスでやっと東京に帰ってきた(2週間前とおんなじ)。

もう、心も身体もぼろぼろ。

それにしても、法学者として、従来、危機管理、リスク計算ということを日常生活でも考えているが、それを見直す必要があるなと思った。

日本以外にいるときは、「交通機関が理由もなく予定どおり動かない」「列車が軍隊の都合で運休になる」「業者が契約を守らない」「人が約束を守らない」「飲める水がない」「お湯が出ない」「英語が通じない」「店が宗教上の理由で全て休業」というリスクまで計算しなければならない。
米国でさえそういうことがあったので、留学したばかりの頃、かなり落胆した。
が、日本にいるときは、せいぜい天候のために交通機関が動かない、遅れるくらいのリスクくらいをみておけばいい。その点だけはこの国に住んでいてありがたいが、実際、日本ほど、こういう点がwell organisedな国は世界に類がない。

しかし、最近では、こういうリスクも念頭において行動計画をたてて、いろいろなところに支障がないようにしておかなければならないので疲れる。

●自分が病気で動けなくなる。
●契約の相手方(使用者である大學、在学契約の相手方である学生等)が誠実に契約を履行しない
●複数の教員でやっている授業なのに、その一人に採点を完全に放棄される。しかもその人間が命令権・権力を持っている。
●仕事上必要なことを10回以上照会しても、上司が全く回答しないので、先に進められない。サインが必要な書類も無視されるので、提出期限に遅れそうになる。
●上司があとで「そんなことを言った覚えはない」とすぐ梯子を外すので、大事なことは、他の人が同席している場所で聞いておかなければならない。
●義務を履行しているだけなのに(履行している人はほとんどいないので目立つというだけ)、刑法上の侮辱罪に該当するような態様で誹謗中傷を受ける。
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