「なんっ!?」
『そうでしたね。あれも私の一部です』
穴の中からドラゴンのでっかい爪が出てきてた。それのせいで、穴はそのままだけど、その穴を中心に空にヒビが入ってた。せっかくいい雰囲気だったのに……と野々野足軽は思う。というか、既にもう解決した体だった。どこかに腑に落ちないって感じてたが、風の子と風の少女が抱き合ってるのを見てたら、これでよかったんだ――と野々野足軽は思ってめでたしめでたしって感じになってた。
いや、というか風の少女がこっちに来たんだから、ドラゴンは消えたのかと勝手におもってたのもある。だってあのドラゴンは風の少女だったんだ。彼女が絶望して変質した姿。それがあのドラゴンだった。なら本体は風の少女だったはずだ。核といってもいい。でも実際、どうやらまだドラゴンは生きてる? と表現していいのかわかんないが、そこにいる。風の少女が野々野足軽の手を取って表れたから、野々野足軽はその時に穴から手を抜いてた。
あの穴とこっちの世界は隔絶してる。いくら向こう側に力を残してたといっても手を抜いてしまったら、穴の向こうの状況は全くわからない。だから確かめるなんてことはできなかった。それにやりたくなかった……というのもある。だってなにせ一番危険なのが、手を突っ込む時なんだ。だからこそ、もう一度あれをやるのは怖い。
それに実際、ドラゴンはいた。まだあの穴の向こうに。ある意味であのまま忘れられるのなら、それが一番良かったのに……との野々野足軽は思う。けど今、ドラゴンは外に出ようとしてる。今度こそ……絶対に……その気概というか、なんかめっちゃ執念? というのが漏れ出てるというか? そんな感じだ。なにせ爪が一回引っ込んで、今度は穴の上の部分に爪が出てきた。そしてバリバリバリとした斜め方向に切り裂く。けどそれでも出てこれないのか、今度は口の先が出てきた。そしてさらにはそこをぐりぐりして無理矢理引き裂いた空を広げようとしてる。
まさに絶対に出る……と感じる行動だ。
「こいつ! させる――っ!?」
力を使って吹き飛ばしてやる……と野々野足軽は力を集める。あの穴は力とかを全く通さなかったが、今やドラゴンはこっちの空間にその口をだしてる。なら、こっちの攻撃も通ると思ったんだ。けどそれはできなかった。なぜなら、ドラゴンが口の全体を出して、わずかにその深い怒りの目が光ったと思った瞬間、やつはブレスを吐き出したから――空に黒い炎が吹き荒れたんだ。