結婚式はそれぞれ親族やら友人、会社の人達……そんなくくりで席が決まってたりするものだと思う。だからどこら辺が騒ぎの中心なのか、主催である小頭はすぐに気づいた。実際それまでの準備の記憶なんてのは勿論だけどない。
けどなぜか小頭にはそこが親族席なのはわかった。白い煙が立ち込めて、ざわざわとしてる会場。そんな中、拡散してく白い煙の中から現れたのはその角を長く輝かせてる鬼……鬼男だった。
そしてそれを見定めた瞬間から小頭はわかった。
(ああ、助けに来てくれたんだ)
屈強なその姿。素晴らしい筋肉美をしてると小頭は思う。でも、それはこの結婚式には似つかわしくない。当然だろう。だって彼は上半身裸だし。上半身裸で結婚式に参加する奴はいないだろう。皆さんきっちりとした服装をして参加するのが礼儀というもの。
でもそんなマナーなんてしらないとばかりに鬼男は上半身裸だ。実際、鬼男はそんなマナー知らない可能性あるしね。なにせこの世界とは鬼男は関係ないわけで……小頭は彼の視線に射貫かれて拳を握った。
周囲の皆さんは鬼男をまだ足軽だと認識してるのか、そういう風に声をかけてる。でも、鬼男はそれに聞く耳を持たない。ただ輝く角を見せつけて更に小頭を見てる。それだけで小頭の手は汗ばんでしまう。
すると背中越しに彼が……アランが言ってくれる。
「大丈夫だ。お兄さんにも認めてもらうさ」
実際本当にあれが野々野足軽なら、アランの方が体格もいいし、強そうではある。でも……あれは足軽ではなく鬼男なのだ。アランも外国人なだけあって体格良い。でも鬼男にはかなわない。
そもそもが鬼と、人……
「帰るぞ」
そう静かに言う鬼男。ざわざわしてる会場なのに、やけにその声はよく通った。行かなきゃいけない……それは小頭にもわかってる。だってこれは……現実じゃない。いうなれば夢だと小頭もわかってるんだ。でも……
「邪魔しないで。ここでなら、私は好きな人と一緒に成れるの!」
そういった。鬼男は小頭の前に立つアランを見る。そして察したんだろう。一度目を伏せる。でも……彼は目を開けて左腕を横に振るった。するとバキイイイイン――とどこにもぶつかってないのにそんな音がして、空間が割れた。
それで鬼男が何をしようとしてるのか小頭にはわかった。彼はこの夢を壊そうしてる。
「やめて……壊さないで……」
でも鬼男の角は更に強く輝きバチバチと周囲に鳴ってる。そして今度は右腕で空間を……
「やめてええええええええええええええええ!!」
その小頭の絶叫は空しくそこに響いてた。