「あれは……なに?」
小頭が呟く。お母さんの体からなにか生えてる。水色の上半身のなにか……どうやらお母さんはなにかに取り憑かれているようだと小頭は思った。
「皆下がっ――」
おばあちゃんがその姿を若々しくしてどうにかしようと動こうとした。なにせここで『力』をもってるのはおばあちゃんと鬼男だけだ。だからここは自分が……とおばあちゃんはなったんだろう。
でも……もう一人……鬼男は何も言わずにすでに行動をしてた。静かに、けど確実に拳をふるった。それによってお母さんの上半身になってた水色の物体がパァァァァァン――と弾け飛んだ。
「え?」
おばあちゃん唖然である。だってこれから何が起きるのか、一体どうしようか? そんなことを考えてたはずだ。けど……それらすべての考えを一蹴に帰す一撃。それを鬼男は放ったのだ。
ドサ――とお母さんの体が糸が切れたように倒れる。小頭もお父さんもお母さんにかけよる。お父さんがお母さんの名前を呼んで揺さぶってる。小頭はそんな二人をみつつ鬼男に非難めいた目を向けた。
「もっと慎重にできなかったの?」
「……悪い」
それだけしか鬼男は言わなかった。ちょっとカチンときた。だって一歩間違えたらお母さんがどうなってたのかわからない。だから小頭はカチンときたんだ。
「お母さん何かあったら!」
「小頭ちゃん」
興奮した小頭を抑えたのはおばあちゃんだった。元の姿に戻ってるおばあちゃんの手が添えられたことでそっちに小頭の意識が向く。
「これできっと良かったのよ。そう思ったんですよね」
そう言って優しく微笑むおばあちゃん。実際鬼男はこんな見た目でそこまで暴力的でも無鉄砲というわけでもない。だから今の行動がヤケクソ……ではないんだろうと小頭も思い直した。
出来ると思ったから鬼男はやったんだ。
「ごめんなさい」
カッとしたことに対して小頭はそう誤った。だって鬼男は良かれと思ってやってくれた。一瞬で決めてくれたのはいいことでは有るだろう。だってお母さんの体で暴れられたら……それを想像すると小頭はゾッとする。
それを未然に防いだだけでも、鬼男はお手柄なのだ。
「う……ん……あなた」
お母さんが意識を取り戻した。どうやら今度はちゃんとお母さんのようだ。取り付いてた何者かが鬼男によって倒されたからだろう。こうなるとやっぱり鬼男のいち早い決断は行幸だったといわざるえない。
お父さんがお母さんを抱きしめて泣いてる。娘でも、その中には入れないなっておもった。