origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

古英語と中英語

2008-06-10 21:16:42 | Weblog
あるラテン語学者が、ラテン語は規律のしっかりした言語だと書いていた。これに比べれば語尾変化に富んだフランス語も完璧ではないとのことらしい。
古英語と中英語には大きな差がある。チョーサーの中英語は単語さえ学べば、大まかな意味合いを掴むことはできる。中英語と新英語の間に起こった最大の出来事は母音大変化であり、発音上の変化であった。それなので書き言葉としては、中英語のチョーサーと新英語のスペンサーは意外と近いところがある。
それに対して、ベオウルフやアルフレッド大王の古英語は単語を知ったところで理解できない。そもそも英語という言語とは全く別の種類の言葉なのではないかと思ってしまう。あくまでも書き言葉としての英語に注目するならば、古英語と中英語の間に起こったノルマン・コンクエスト及びラテン語・フランス語のイギリス支配こそが、英語史上最大のイベントだったのではないか、と思えてくる。
英語は、SVOを中心とした行為者と行為を重んじる言語である。ほとんどの文章で主語と動詞が必要とされる。しかし、そのSVOを中心とした英語とは、あくまでも中英語以降の英語に過ぎない。中英語以降の英語とは、古英語がラテン語・フランス語との化学反応を起して新たに生まれた英語である。それは私たちの知っている英語には近いが、アングロ・サクソン人のオリジナルな言語とはだいぶ遠い。中英語とはロマンス語化された古英語なのである。

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