origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

梶田昭『医学の歴史』(講談社学術文庫)

2008-09-08 14:46:26 | Weblog
自然治癒に信頼を寄せた古代ギリシアのヒポクラテス、ヒポクラテスを継承した古代ローマのガレノス、中世イスラムの天才的な医師イブン・シーナー(『医学典範』)、ガレノスやシーナーを批判した「医学界のルター」であるパラケルスス、ルネサンスの代表的な解剖学者であるアンドレアス・ヴェサリウス、循環論のハーヴィー、啓蒙主義時代のオランダ・ライデン大学の医師ブールハーフェ(『医学論』)、スコットランドのエジンバラ大学の外科医ジョン・ハンター、天然痘研究で有名なハンターの弟子ジェンナー、細菌学の創始者パストゥール、食細胞運動の発見者メチニコフ、結核菌・コレラ菌の発見者コッホ、生理学の大家パブロフ、二重螺旋モデルのワトソン……。
本書はヨーロッパやイスラムの医学の歴史を追った書物である。著者の文章は大学の講義のようで、話題はいろいろなところに飛び、自由闊達に話は進む。論理的に書かれたものではないが、著者の博識ぶりを窺い知ることができて楽しい。『西洋医学と日本人』という本では、戦国時代以降の日本における西洋医学の輸入の歴史について簡潔に触れられている。江戸時代の日本の医学は、オランダのブールハーフェの医学から影響を受けており、著名な『ターヘル・アナトミア』もブールハーフェ医学の解説書のようなものだという。