Organic Life Circle

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オーガニックはホントに高い?

2007年11月17日 | 農 業

有機野菜を初めて食べた人は、まず味が濃く甘みが強いことに驚きます。昔の野菜の味がするという人もいます。農薬や化学肥料が登場する以前の、ほんの70年ほど前の野菜は、すべてオーガニックでした。有機野菜のうまみや味が特別なのではなく、それが本来の野菜の味なのです。

近年、野菜の栄養価が下がってきています。化学肥料でいくら大きく育てても、野菜の細胞の数自体は変わらないので、水ぶくれ状態になるからです。風味や栄養が少ない食品は食後の満足度も低く、必要な栄養素が補えないため、体がもっと食べるように要求し、結果的には肥満を招きます。

また、野菜を見栄えよく育てるために窒素肥料を多用すると、野菜の中に亜硝酸が発生します。それが胃の中で発ガン性物質であるニトロソアミンを作り出し、血液中の赤血球ヘモグロビンと結合して、酸欠・チアノーゼをまねきます。また、穀物も最も栄養のある胚芽に農薬が残留します。農薬のほとんどは油に溶け込む性質があるので、脂肪分の多いゴマやピーナツのような種実にも残留農薬が多くなります。健康を考えて胚芽米や玄米菜食にしても、オーガニックでなければかえって健康が脅かされることになるのです。

一度オーガニックの野菜や果物を食べると、そのおいしさに目が覚める気がします。見かけは小ぶりでも、うまみや香りがぎゅっと凝縮された味は比べものになりません。バンクーバーのレストランの中でも、Bishop や West など素材の味を大切にしている店は、どこもオーガニック野菜を仕入れています。

さて、気になる有機野菜のお値段は? 品種にもよりますが、一般の野菜より1~2割程度高いようです。ただ近年は、一般農業も農薬・化学肥料・石油燃料・遺伝子組み換え種子・温室資材などの購入に大幅な経費がかかり、有機農業との値幅は小さくなってきています。また、有機野菜の需要も年ごとに増えているため、一般農法から有機農法に転換する農家も多くなり、競争力がついたため全体的に値段が下がってきています。

単に値段だけを比べればオーガニックは高くつくという印象になりますが、安いなら安いだけの代償もあります。

野菜を安くするには、
一品目を大規模農場で育て、
防虫・防菌・除草の人手を減らすために農薬や除草剤をまき、
見栄えよく早く大きくなるように化学肥料を使い、
ガソリンを使って人口が集中している遠隔の消費地に運び、
大規模店で大量に販売する必要があります。

人件費の安い開発途上国では、農薬や除草剤の害を知らされることなく人々が農業に従事しています。農薬や除草剤を浴びた人々の子供に奇形児が多いのは周知の事実。生産物は流通市場に回され、農業従事者は自分たちの食べ物を生産する機会すら与えられないのが現状です。つまり、彼らの人権を踏みにじって得られるのが、私たちの求める「安い」食べ物なのです。

農業に使用された農薬や化学肥料はどこへ行くのでしょうか? 農薬は土壌にしみこみ、地下水に流れ込み、やがて川や海へ、そして大気に蒸発し、雨となって大地に、私たちの頭上に降り注ぎます。その過程で、健康な土を作ってくれる虫や微生物を殺し、飲料水や海洋生物を汚染し、動植物の生態系を乱していきます。近年、鮭などの漁獲高が減ったのは乱獲のためだけではないでしょう。「安い」食べ物の代償はここにもあります。

そして私たちの健康。なぜこれだけ多くの人々がアレルギー疾患に悩まされているのでしょうか。アレルギーは、汚れた土、水、空気、毎日食べる食品に含まれる残留農薬や添加物、身の回りにあふれる化学物質などが複合的に引き起こした大規模環境汚染症候群ともいえます。しかも慢性的なので、親から子へ、その子孫へと遺伝子の中で受け継がれていきます。この連鎖を止めるためには、「安い」だけの食べ物を求めることを、どこかでやめなければなりません。

では「高い」オーガニック食品を食べるメリットはどこにあるのでしょう。

まず、農業に携わる人々が農薬被害から解放されます。
農薬や化学肥料で地球の環境や生態系が汚染されなくなります。
おいしく安全な食べ物で、自分だけでなく地域の人々や
私たちの子孫が健康に暮らせます。
地元産品を買うようにすれば、地域社会の活性化に繋がり、
貴重な石油の消費や公害も減らせます。

今は「高い」オーガニック食品でも、多くの人が求めるようになれば、需要と供給の原理で自然に値段は下がっていきます。「私だけが始めても……」と思われる方も多いでしょうが、一人でも多くの人が草地を歩けば、やがてはそこが大きな道になります。100ドルの買い物ならその1割の10ドルでも、10品買うならそのうちの1品だけでもオーガニックを選んでください。1千万人が参加すれば、1億ドル規模の運動になり、企業も政府もその流れに逆らうことはできなくなります。

家庭菜園で野菜を育てると、小さな種から立派なトマトを育て上げるまでの農家の人々の手間や苦労が分かるようになります。ネギ一束でも、種まきから収穫までにたっぷり1年もかかります。イチゴやラズベリーの収穫も、一粒ずつの手作業です。1パックが3ドルもすると文句を言うなら、自分で育てましょう。それができず農家の人に自分たちの食べ物を育ててもらうなら、その絶え間ない労働に見合った対価をきちんと払うべきです。会の活動の一つである農場訪問で、自分たちの食べ物がどこでどのように育てられ、誰が自分たちの代わりに労働してくれているのかを知ると、感謝の念から有機野菜の値段に対して謙虚になる人がほとんどです。

環境保護団体に寄付する代わりに、毎日の食卓にオーガニック食品を選んで、おいしく楽しく確実に環境保護にも寄与しましょう。

(石川まりこ)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2005年5・6・7月号(No.63)掲載

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