Organic Life Circle

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鶏肉

2006年02月19日 | 農 業


広い農場の草っぱらで、ミミズをつっつきながら歩く鶏の群れ……なんてのどかな光景は、もうほとんど見られない。北米ではもう20年以上も前から、鶏の大規模人工飼育が一般的。

その結果、鶏肉が大量に安く手に入るようになった代わりに、食べ物として一番大事な要素である「味」を失ってしまった。おいしくて、おいしくて、安心して食べられるチキンって、いったいどれ?


<一般市場用チキン>
conventional chicken

一般のスーパーマーケットなどで売られている鶏肉。成育期間は、飼育から出荷までの回転を早くするため約5~6週間と短く、若鶏 broiler として販売される。自然光を遮断した窓のない鶏舎で、人工的に温度・湿度をコントロールし、24時間照明をつけて絶え間なく餌を食べさせ速成飼育する。

一棟で平均3万羽が飼育され、ケージが高層ビルのように何段にも重なっている。鶏一羽あたりの飼育面積は 0.75 sq/ft (約7cm2)ほどで、運動は極端に制限され、屋外飼育は皆無。過密飼育のストレスから起こる共食いを防ぐために、くちばしを切る。

トウモロコシ飼料には肥らせるための成長ホルモン剤、酸化防止剤、防カビ剤、伝染病予防の抗生物質、糞にハエを寄せつけないための殺虫剤、黄身の色を濃くする着色料などが配合され、残留農薬や遺伝子組み換えトウモロコシが含まれている可能性も大いにある。

これらの薬剤はほとんどが鶏肉に残留するが、抜き取り検査で規定量を超える発ガン性物質が見つかり、廃棄処分命令が出たとしても、その時点ではもう店頭に並んでいる場合が多い。

飼育場の洗浄、立ち入り検査に厳格な規定はない。食肉工場で、サルモネラ菌に汚染された冷水層で鶏肉が洗浄され、そのまま出荷されるケースも多い。


<平飼い/放し飼いチキン>
natural / naturally raised / free range chicken

自然食品店などで広く販売されている鶏肉。成育期間は特定されない。飼育場に日光が当たることは必要とされるが、一日の日照時間の規定はない。鶏一羽あたりの飼育面積は平均1.25 sq/ft(約12cm2)。

放し飼いであれば屋外飼育は特に必要とされず、餌は抗生物質やホルモン剤などが入っていない一般飼料。ただし飼料はオーガニックである必要はないので、残留農薬が含まれている可能性がある。洗浄、立ち入り検査についての規定はない。


<オーガニック・チキン>
certified organic chicken

認証済み有機養鶏場から出荷される鶏肉。出荷までの成育期間は約14~16週間。飼育場には一日16時間以上、自然光が必要とされる。鶏一羽あたりの飼育面積は2sq/ft(約19cm2)。

飼育場から水はけのよい屋外に放し飼いできるようにし、餌として与えるのは認証済み有機飼料や有機栽培の野菜のみ。抗生物質やホルモン剤など、化学薬品は一切使わない。

掃除に使うのは、British Columbia Association of Regenerative Agriculture (BCARA) など地域の認証団体が認めた洗浄剤のみ。年に2、3回、認証団体の立ち入り検査を受ける。

オーガニック・チキンの鶏肉はよく身がしまっていて小ぶり、脂肪のつき方も少なめ。小さくて値段が高いのでちょっと買うのをためらうが、昔、田舎で食べた地鶏の濃い味を思い出すと「これしかない!」と思うようになる。

Choices、Capers などの自然食料品店、有機野菜宅配サービス Tama Organic Life で購入できる。


☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆


鶏肉だけでなく、七面鳥も放し飼いのものは身がしまっていて味がいい。一般のスーパーで売られているものは、やはり大規模飼育で味が落ちているので、味つき油やMSG入りの出しを塗ったり、皮下脂肪にバターと称してココナッツ油などを注射して補っている。

一方、自然食料品店で季節的に予約販売している七面鳥はほとんどが小規模農家から仕入れたもので、特別に手は加えていない。鶏や七面鳥の骨でスープをとると、その風味の違いがはっきりわかる。

(石川まりこ)


<参考>

Thomas Reid Organic Chicken Farms
http://www.trforganic.com/

The Goldbecks' Guide to Good Food
(Nikki & David Goldbeck 著/Prume 社刊)


オーガニック・ライフ・サークル会報
1997年12月号(No.3)、2000年10・11月号(No.34)掲載

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