Organic Life Circle

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自然養鶏・事始め

2006年02月19日 | 農 業


私が、鶏をできるだけ自然な状態で飼ってみたいと思い、飼い始めたのは2000年の春からです。まだ始めて日が浅いのですが、皆さんに鶏と卵への知識を深めていただき、また鶏を飼ってみたい、オーガニックの認証を受けたいと思っている方々への参考になればと思い、その経過を報告したいと思います。


<ひよこを飼うには準備が大切>

初めて鶏を飼うにあたり、同じ村の有機認証を受けたベテラン農業家アイゼンハワーさんに、認証を受けるための知識、ひよこの世話の注意点をお聞きしました。

生まれたから一日たったひよこを、薬剤なし(抗生物質、ワクチン)の条件で受けとったあと、薬剤を含まないひよこ用の餌 chick starter を与え、約1ヶ月間、紫外線ランプ(100w程度)で保温すること。水は毎日新鮮なものを与えること。

ひよこの入る箱には隅を作らず、底には新聞紙を細長く切ったものを敷いて、汚れたら取り替えること。ひよこがかたまりになるようでは寒すぎるので、紫外線ランプとひよことの距離を近づけること。また、給水器watererの作り方なども教わりました。アイゼンアワーさんは、底に目の細かい金網がはってある、ひよこを入れる箱まで貸してくださいました。

注1:オーがニックの認証基準では、鶏に卵を抱かせて孵化させ、子育てさせるのを推奨してるが、初めて鶏を飼う場合は、有機認証を受けている鶏(ヒナ)を譲ってもらうか、普通の孵化場から、餌を食べてない一日ビナdayoldを、薬剤投与なしで導入する。

注2:鳥類の免疫機能は、ほぼ哺乳類なみに発達しており、微生物やウイルスの毒に効果的に対応できるようになっている。


<ひよこを注文する>

ひよこを入れる箱や給水器、給餌 feeder の準備ができたところで、孵化場 hatchery にひよこを注文することになります。

Abbotsford にある Happy Hens Hatchery へ、いろいろな色の卵を生む鶏のひよこをミックスした「Colourful Combo」を一群れ(25羽)、到着希望日を指定して注文しました。2000年3月6日、孵化場より電話があり、今日発送するので、明日最寄りの郵便局で、ひよこを受け取るようにとのこと。

翌朝、ひよこを取りに行かなくてはとおもっていると、郵便屋さんが、ひよこの入った小さな箱を抱えて、にこにこ笑いながら届けてくださいました。「ピヨピヨピヨ」と大変元気そうです。受け取りに行かなくてすんだので、郵便屋さんに大感激です。

準備していた箱は少し大きすぎるし、まだ外は寒いので家の中の使っていない部屋に入れることにして、さっそく段ボール箱に新聞紙を敷き、給水器と給餌器を置いてひよこを入れ、紫外線ランプをとりつけました。

2週間はどして段ボール箱が狭くなったので、アイゼンハワーさんから借りた箱に移しました。羽もひよこの黄色から、カラフルな羽に入れ替わりました。


<シェルターと運動場の制作>

ひよこはあっという間に大きくなっていきます。大慌てで鶏小屋(シェルター)を作りました。夜はシェルターで寝て、昼間は近所の有機農業家ジョセフィンが持ってきてくれた、高さ3フィート、幅4フィート、長さ10フィートの金網で囲った屋根つきの箱(運動場)の中で、運動をしながら草を食べます。

餌は一日一回だけ、夕方にシェルターで与えます。この方式で、約7ヶ月、卵を生み始めるまで、草地を巡回させ、草を食べること、夕方にはシェルターに戻って寝ることを覚えさせ習慣づけました。


<チキンキャラバンの制作>

鶏が、シェルターでは狭くなり、卵を生み出すようになる頃には、もっと広い幌馬車のような形のチキンキャラバンと屋根なし open air の運動場に移しました。

チキンキャラバンとは、自動車やトラクターで移動することのできる車輸つきの鶏小屋です。これで、農場の中を巡回できるように作りました。

運動場は、長さ5フィートに切った鉄筋を地面に立てて、スタッコワイヤーで囲んで作ります。これもアイゼンハワーさんのアドバイスで、一般の高さ48インチのスタッコワイヤーでは、鶏が飛び越えてしまうので、高さ54インチのスタッコワイヤーを使いました。

鶏は、昼間、畑の中の草地を囲んだ運動場ですごし、夕方チキンキャラバンで食事をし寝ます。チキンキャラバン内には、卵を産む箱が据え付けられ、日中、鶏が自由に出入りできるように、小さなドアをつけてあります。産卵箱は、産んだ卵が自動的に集まるように設計しました。飲料水は、毎朝、新鮮な水を運動場に置いた給水器に入れて与えるようにしました。


<餌の配合>

有機認証では、餌にペレットなど一般の配合飼料は使えません。アイゼンハワーさんによると、鶏が卵を産むまでは、餌にはカルシウムを混ぜなくてもよいとのことです。そこで鶏が卵を産むまでは、オーガニック認定の小麦や大麦、砕いていないオーツと小石、それにオーガニックの玄米を精米して出た自家製の米ぬかをあたえました。

小石を与えるのは、鶏は、石臼に相当する器官(砂ぎも)を持っており、そこで小麦などの粒を砕いて、粉にしてから消化するため、小石を常に少量供給する必要があるためです。ペレット状や粉末の餌を与える場合には、すでに砕いて粉になっているため、小石を与える必要はないのです。

鶏が卵を産むようになってからは、この配合に、カルシウム源となるかき殻 oister shell を砕いたものと、油用の黒いヒマワリの種を与えました。このヒマワリの種を水につけたところ発芽したので、今年はこのヒマワリをたくさん畑にまいて栽培しました。この他今年は、鶏の資料用に大麦と小麦も栽培しました。


<健康な鶏と美味しい卵>

日本の太平洋沿岸の山中で有機農業をしていたとき、畑の中に野生の雉の卵をみつけて食べたことがありました。その卵は、白身は盛り上がり、黄身は濃いオレンジ色で、とても美味でした。野山の草や虫しか食べない雉が産む卵の素晴らしさに驚き、そこから鶏に草地を巡回させる飼い方を思いつきました。

カナダに来てから、近くの放し飼い養鶏卵を買っていたのですが、どうも今一つ卵の質に納得がいきませんでした。そこで、その生産者を訪ねたところ、山の上の同じ所で、何年も鶏を飼っており、鶏が食べる草がまわりにほとんどありません。それに、給仕器 feeder には市販のペレット飼料がなみなみと注がれており、鶏がいつでも食べられるようになっていました。これを見て、自分で鶏を飼うしかないと決意しました。

一般的に、卵の黄身に黄色を濃くつけるためには、鶏にコーンをたくさん与えます。飼料用コーンは農薬汚染や遺伝子汚染(GMO)で問題になっています。ペレット状や粉末の配合飼料には、コーンが細かく砕かれて混ぜられており、草を食べなくても、黄身に黄色の色がつくようになっています。この他にも黄身に濃い色をつける方法はいろいろあります。草を食べさせると、黄身が黄色になるのは、葉緑素のうちのひとつが黄色であるからかと思われます。

今回、草地を巡回させて鶏を飼ってみたところ、野生の雉の卵ほどではないものの、それに近い卵の質が得られました。また、鶏の健康状態も良く、病気になることもなく、トサカは真っ赤で、元気に草地をほじくって駆け回っています。

一度、一羽の鶏の片足が腫れて熱をもち、びっこをひいていたことがありましたが、足の傷を消毒して、清潔なところに隔離しておいたら、一週間ぐらいで自然になおりました。居住環境(住、空気、水、土、草)が良ければ、鶏には抗生物質などの薬剤は一切いらないことがわかります。これは、人間にも通ずることでしょう。

次なる実験は、冬の間に果樹園に鶏を入れて、病気や虫のついたリンゴの実や葉を食べてもらうことです。というのは、最近、果樹園のリンゴに、leafroller、fruitworm、codling moth などの害虫被害が多く出てくるようになり、リンゴの実の1、2割しか販売できないくらいに被害が広がってきたからです。

冬、落ち葉や落ちたリンゴの実についた虫が、果樹園の草地で越冬し、春、木に登ってきて卵を産み、孵化した幼虫が被害を与えるのが原因らしいとわかりました。これを防ぐには、落ち葉を集めて燃やし、落ちているリンゴの実も集めて処分し、下草も短く刈って、刈り草を処分することです。

これらのことをすべて鶏はやってくれ、さらに草に隠れている虫を見付けて処分してくれるのではないかと期待しています。もし、これで綺麗な無農薬のリンゴがたくさんとれたら、鶏さんたちに大感謝です。

(海波農園  菅波 任)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2001年10月・11月号(No.42)掲載

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