Organic Life Circle

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岡田流 自然農法

2006年02月23日 | 農 業


1935年、哲学者・岡田茂吉(1882~1955年)は、落ち葉や藁など植物だけを利用した堆肥を用いて、野菜や稲を育てる実験を始めました。結果は質、量ともに素晴しく、農薬で健康を害する恐れもまったくなく、世界の人口が増え続けても十分に食糧供給が見込めるものでした。1948年、土の本来の力を生かしたこの農法は、自然の植物が化学肥料や厩肥(家畜糞)なしでも育つことから、「自然農法」または「無化学肥料栽培」と名付けられました。

「大自然を尊重し、その摂理に順応しよう」と語る彼は、自然農法を柱に、貧困や戦争がなく「真、善、美」を道義とする地上の楽園を作ろうと尽力し、それを実現させるため、後に宗教団体となる世界救世教(SKK)と Mokichi Okada Association (MOA) を興しました。1953年には、岡田茂吉の思想と活動に共鳴する人々が自然農法普及会を設立し、それにより自然農法を紹介する実験農場が日本中に作られていきました。

日本では、自然農法というと、福岡正信さんや川口由一さんの「無起耕農法」を指すことが多いのですが、岡田流の自然農法では、耕すことは否定しません。


<自然農法の原則>

自然農法では、厩肥などの動物性肥料や農薬、殺菌剤、除草剤は使いません。たとえ良質な有機質肥料でも、多く入れ過ぎると土壌が不純になり、栽培作物の質が低下します。堆肥など植物性肥料だけを適量用いて土壌を健康に保つことで、微生物が活性化され、病害虫を抑えることができるのです。一般に、自然農法の畑の表面は、自然の様子を模して、落ち葉や刈り草、ワラなどで厚く覆われています。

自然農法では本来、厩肥の使用を認めていませんが、最近では、十分に熟成させた厩肥や、有用微生物資材(EM)で処理した厩肥や家庭・工場廃棄物なども肥料として認める自然農法のグループも出てきています。


<ほかの農法とくらべてみたら>

作物生産に投入されるエネルギー消費が少ない順に並べてみましょう。

          動物性肥料   化学肥料    農薬
自然農法      使わない    使わない    使わない
有機農法      使う      使わない    使わない
無農薬農法(注1) 使う      使う      使わない
減農薬農法     使う      使う      減量して使う(注2)
慣行農法      使う      使う      使う
大規模集約型農法  使わない    使う      使う  

(注1)カナダでは Natural というと無農薬農法を指すことが多い。
(注2)一般農法の約50%以下


<自然農法の野菜は栄養がいっぱい>

私が日本で農業を営んでいたとき、自然農法で生産された野菜や果物をつぶさに観察してみました。葉の大きさは一般のものより小さく、色も明るい緑色ですが、根も実も充実していて味が濃く、特に滋味に富んだ甘みが感じられます。つまり、自然農法で生産された作物は、窒素分は少なめで、太陽の光をたっぷり浴びながら十分な時間をかけて、水分と二酸化炭素でブドウ糖を光合成します。

肥料を与えすぎて窒素過多になると、亜硝酸塩という毒素が植物の葉の部分に溜まりますが、自然農法の作物ではそのような状態にはなりません。植物が窒素過多になっている場合は、葉の色が黒っぽい緑色になり、葉の大きさも水分で毒素を薄めるために自然に大きくなります。

植物はブドウ糖から各種栄養素を合成するので、ブドウ糖、果糖、ソルビトールなどの糖分が豊富な作物には、体にいいビタミンや抗酸化物質などがより多く含まれていることになります。自然な甘さがおいしいと感じることは、健康を維持するための自然の理なのです。自然農法で栽培された作物は、豊かな香りと深い味わいに満ちています。おいしくて安心な作物というだけでなく、その生命力には人間を健康に導く働きがあるのです。

(海波農園 菅波 任)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2002年10・11月号(No.48)掲載

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