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5月の課題本 長嶋有『猛スピードで母は』

2016-05-04 21:55:58 | ・例会レポ

長嶋有『猛スピードで母は』
文春文庫 2005年

「私、結婚するかもしれないから」 アクセルを踏み込んで前方の軽自動車を抜き去ると、母は結婚を口にした。外国帰りだというその男に慎は気をゆるすが…。芥川賞受賞の表題作と文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。 (Amazon 内容紹介より)  

すっかりUPが遅れてるうちに、合宿まで終わってしまいました。

今さらながら先月の例会レポです。

昨年刊行された長嶋さんの『愛のようだ』にほれ込んで、
そのデビュー作をバリバリの自信をもって掲げた推薦人ですが、
おも本会員の皆さまの反応や如何に。

●評価点:胸に沁み込んでくる
・・・そうでしょう、そうでしょうとも。

・小学生の息子がよく母を見ている。
・ひとつひとつの表現が浸透して、読後和やかな気持ちになった。
・起伏はないが心地よい。自分が昔味わったような、心の底に触れる共有感がある。
・これが良かった人には『パールストリートのクレイジー女たち』もおススメ。
・小説は現実的であれ、非現実的であれ、そこに描かれた宇宙で遊べるかどうかが勝負。自分の中に浸透してくるかどうか。この本では『サイドカーに犬』の方が好き。
・長嶋さんは単行本の懸賞に自腹で賞品を提供するいい人。全作品を読んでいて、すごく好き。
・『サイドカー・・』のぼんやりした主人公は、弟に言われるまで女が父の愛人だと気づかなかった。淡々とした小説で、ボクシングでいえばストレートを出さずにジャブの応酬。すごく良かった。
・読み終わったあとに余韻が残る。麦チョコ、山口百恵、あちこち登場する小道具の選び方の感性が自分に合う。ピースがはまる感じ。
・退職して小説を読もうとしたとき、初めて手にした小説。日常をこんなふうに描けるのがすごい。人の気持ちもうまく表現している、子どもがすごく親をよく見ている。親は子を見ていない。WetじゃなくDryな、心地よい距離感がある。
・大人の世界を垣間見た「小学生の夏休み」が琴線に触れる。「静か系」の小説。仲の悪い両親のもとで育つ子どもは、親に「男」や「女」の側面を見る。他の子より少し大人になる。
・主人公=子どもに入り込んでいく。読み終わると情景が浮かぶ。さらっと読んだが、読後に重いものが残る。

●不評価点:淡々とし過ぎて何も残らない
・・・えぇぇ、なんですって。

・よくできた本ではあるが、芥川賞を獲る作品とは思えない。
・淡々とした日常がつづられていて、どこがいいんだろう? 母子家庭に悲壮感はなかったが、あまり好きではない。
・文章は心地良いが、何も引っかかるところがない。わざわざ読みたいとは思わない。小説には非日常を期待する。
・面白いといえば面白いが、詰まらないといえばつまらない。ただ親を見て語るだけ。
・子どもの観察力がすごいが、好きでも嫌いでもない。
・周辺にシンママがいないせいか、リアルに感じられない。インパクトはなかった。

・・・まとめてみると、全般的には好評でしたわね。
そして講師評。

 日常のディテールを描く小説が最近は増えてきた。作家のセンスが良くてひらめく表現がうまい。取り出し方、スケッチが上手い。しかし、その一方で「だから何だ」と言いたくなるところもある。
2作とも「子どもの視点」で書かれた点は成功している。女性のキャラクターの突っ込みが鋭いし、男の子も女の子もよく書けている。この種の作品は、読者のほうが思い入れて自分を重ねる場合が多い。そのせいか、女性読者に好まれる。男性は距離感をもって読むのではないだろうか。

ううむ、先生、いまひとつ、でした?      (文責:ままりん)

 


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