昔の望遠鏡で見ています

125SDPで星を見る

 天文台の観察室には、一般貸出用の望遠鏡があり、ライセンスを取得すると借りることができる。今回ようやく天気に恵まれ、実際に使用することができた。




 郊外に向かう道は、テールランプがどこまでも続いている。遠くの山々には、少し雲がかかっているが、まずまずの空模様だ。

 天文台に着いた時には時間外となっていたため、裏の守衛室前から入る。事務室で、書類を書いていると、今晩は他の望遠鏡は皆キャンセルされているため、地震被害を受け修理中の40cm・TOA150赤道儀を除き、どの望遠鏡でも利用できるという。今日予約していたのは、125SDP(天文台では通常写真儀)・イプシロン180・TSA102が同架された赤道儀だ。眼視での観望が主体のため、普通だったら150ED望遠鏡も選択肢に上るのだろうが、予定どおりの機材を借りることにした。なぜなら、この日のためにSDP用の眼視アダプター(φ60.2⇔2インチ:C工房製(下の画像矢印部))を用意していたからである。

 P社の望遠鏡は、写真撮影を強く意識した仕様になっている。Fは明るいが、フラットナーが組込まれているため、像が平坦という特徴がある。以前の天文と気象に、接眼鏡のテストを行った記事があったが、この時に使用されていたのは同社の75mm鏡であった。基準鏡としての性能を、持っているということなのだろう。それ以来P社の望遠鏡に対して、ずっと興味を持っていたのだが、高価な部類なので所有している友人も少なく、じっくり見るのは今回が初めてである。




 観察室では、自動導入用のパソコンを接続する。その後は、画面をクリックするだけで、目的の天体はするすると導入される。望遠鏡は剛性も高く、ピント合わせの時にグラグラする等ということも無い。空の明るいうちに、SDPに眼視アダプターと2インチ天頂ミラーを装着して、恒星を導入する。接眼筒の繰出し長さが大きいのに驚きながら、大口径のヘリコイドリングを回す。すると、最初に青空の中に淡い光が見えてきて、最後は針でつついたような点になった。光路長を確保できていないのではと少々心配していたのだが、ピントが出たので良かったと思った。




 手持ちのXL40を使って、125SDPとTSA102を交互に見比べてみる。前者の視野を注意深く見ると、外側2割位だろうか、ほんの僅かだが歪んでいるのが判る。後者は、その量を比較すると少し大きいようだ。P社はフラットナーの効果で、視野の平坦性に優れているのだろう。中心像は100倍近くまで上げていくと、後者の方が鋭く感じ始めるのだが、このことは今後、さらなる高倍率で惑星などを見て、比べることが必要だ。

 どちらも一流の鏡筒で、良く見えていたと思う。接眼筒の動きも、とても滑らかだ。このような望遠鏡を覗いたら、天文ファンだったら皆幸せを感じるのではないかと思った。
 今回見た中で、一番に美しかったのはと聞かれれば、125SDPに持参したPa24を装着して見たM57付近の星野だと答えるだろう。それは、引き締まった星々の中に、華やかさを感じたからだ。この組合せを、もっと暗い星空の下に持って行ったら、どんなにか素晴らしい事かと想像した。

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