にいはんは周回遅れ

世間の流れとは違う時空に生きる

次の人は誰ですか?

2007-11-30 | オーマイニュース

オーマイニュース(以下OMN)の初代市民記者編集委員(以下編集委員)は、今日で3ヶ月の任期を終えます。今回の編集委員は、持ち回りでの記事・サイト批評、週間市民記者賞の投票といったルーチンワークに加えて、年間市民記者賞の選定に関わったり、編集委員の方向性を決める為にOMN本社まで出向いて編集部員とオフラインミーティングを行ったりと、初代ならではのお役目もありました。

編集委員の皆様、まずは3ヶ月間お疲れ様でした。

編集委員としての記事を読み返してみると、市民記者それぞれの立場から様々な提言がなされていました。「編集委員として何もできなかった」というような反省の弁も聞かれましたが、多くの場合では編集部に何かを提案し、それが実現するまでに最長で3ヶ月というのはあまりに短すぎます。

自分達が出した提案が今後どのように活かされていくかは、ある程度長い目で見る必要があるでしょう。編集委員を退任してからも、一市民記者としてOMNを見つめ、時にはその後の成り行きを記事にしていただければと思います。

そして、明日からは二代目の編集委員が、初代編集委員からバトンタッチを受けて活動を開始する可能性が高いと思われます。

ん?可能性が高いと思われますってどういう事??私はなんでそんなもってまわった言い方をしたのでしょう???

それは、二代目編集委員について未だにOMNのサイト上で何のアナウンスもされていないからです。


OMNはきちんとアナウンスをしましょう



朝日には苦闘の1年に見えたらしい

2007-11-29 | オーマイニュース

11月27日の朝日新聞朝刊社会S面(東京本社14版)に、『「オーマイニュース」苦闘の1年』というタイトルの記事が掲載されました。石川智也記者による署名記事です。結構大きなスペースを割いての掲載でしたので、一部引用を交えながら記事の概略を紹介し、ところどころツッコミを入れていきたいと思います。(引用部分はイタリック体で表示、フォント変更・太字・改行は筆者)


リード(前文)

鳴り物入りでスタートした日本版オーマイニュース(以下OMN)が目指す「実名主義」「責任ある言論」は、匿名性の高い日本のネット文化のせいで苦戦している。

適当にまとめてみましたが、別にどうということはありません。石川(智)記者はOMNが未だに「実名主義」を掲げていると思っているようです。その前提がなければ、OMN苦戦の原因を日本のネット文化のせいにはできませんから、現状には目をつぶってこのリードを書いたのでしょう。


小見出しその1

匿名の中傷、なえる記者

なぜ市民記者は辞めてしまうのかがOMN内に波紋を広げている。編集部提供のデータを元に現状を暴露したからだ。その中では記事を修正された元記者の反発なども紹介している。この記事がきっかけでコメントや新たな記事による議論が起きた。

編集部も10月、平野日出木・編集次長名の記事で「批判は真摯に受け止めるが、数字の使い方がミスリーディングだ」などと反論した。「こうした批判記事が載り、議論の過程が公開されること自体が市民メディアらしい」。元木昌彦編集長は言うが、実際広がりの足は鈍い。

創刊当初1日100万のページビュー(以下PV)があったが、現在は平均20万ほど。記者数も現在約4千人と、1年で1万人の目標には遠く及ばない。

初めから、匿名が主流のネット文化と衝突、翻弄されての船出だった。

(略)鳥越俊太郎初代編集長のゴミタメ批判に端を発するサイト炎上、オピニオン会員廃止等これまでの出来事が紹介される。

今年4月からは、匿名のコメントを受け付けるかどうかを記者が選べるようになったが、以降の記事約6300本のうち、コメント拒否は3分の2原則の「実名主義」も、中傷対策としてペンネームで記事を執筆する人が1割いる。

(略)佐々木俊尚氏のコメント。オピニオン会員廃止騒動当時と変わらない批判的なスタンス。石川(智)記者は「手厳しい」と評している。

まず木舟周作記者の記事の紹介ですが、とにかく浅い。未編集掲載とはいえ、記事の内容はデータを元にした編集部への提言で、その一部だけを取り上げて暴露などというのは、木舟氏に対しては勿論、自分達にとって耳に痛い記事をきちんと掲載したOMN編集部に対しても非常に失礼な表現です。

また、記事を修正された元記者というのは、田村圭司記者の事を指していると思われますが、その後コメント欄で編集部の対応についての報告がありますから、元記者という表現は誤りです。おそらく、木舟氏の記事にある記事投稿をやめてしまった元・記者という部分に反応したものと思われますが、これはあくまで木舟氏個人の感覚に基づいた表現で「市民記者登録を解消しない限りは市民記者」というOMNの考えとは異なります。

次に数字の面からみると、1日平均20万というPVに関しても疑問が出てきます。ちょうど1年前のJ-CASTニュースにも、OMN広報担当のコメントとして1日20万PVという数字が紹介されています。しかし、AlexaのグラフではPVの落ち込みがしっかりと確認できます。3ヶ月前に、編集部は宮本聰記者が記事で紹介したPVの推測値について以下のような注釈をつけていました。

宮本記者の提示した数値は、実態からかけ離れておりますが、トレンドとしては正しいため、掲載しました

推測値がトレンドとして正しいのであれば、1年前と現在の1日あたりのPVが同じというのはいかにも不自然な話です。PVを比較するのであれば、創刊当初ではなく1年前のそれと比較した方がよりリアルな数字が出てきたものと思われます。PVは本当に1年前から変わっていないのでしょうか?

そして、匿名(未登録者)のコメント受付に関する記述がまたひどいものです。匿名のコメントを受け付けていないのが全体の約2/3という比率は正しいものと思われますが、その全てが匿名のコメントを拒否しているというのは、ミスリードを招く表現です。石川(智)記者は、編集部から提供されたデータの上っ面しか見ていないのでしょう。匿名コメントを受け付けないのがデフォルトの設定である事や、常連記者であっても匿名コメント欄の存在を知らない人がいる現状を知らずに書いたとしか思えません。

ペンネームの執筆者が1割いるというのは、おそらく初めて対外的に公開された数値だと思われます。この比率は興味深いものではありますが、その全てを中傷対策とひとくくりにしている点には首を傾げざるをえません。署名ポリシーを明らかにしているOMNがそのような事を石川(智)記者に話すとも思えませんし、そこにはネット上の匿名をどうしても悪者にしたい朝日の意図が透けて見えます。


小見出しその2

広告低調、親会社頼み

(市民メディアの)多くが無料サイトのため広告収入に依存するが、閲覧者が伸びず収益につながっていない。

OMNの場合、「収支を合わせるのはとても無理。赤字は億単位」(元木編集長)。広告収入と記事の配信収入で8割に達するという本家韓国法人とソフトバンクに頼らなければ、運営は維持できない。

(略)JANJANでは運営費3億円のほぼ全ては親会社からの広告収入。竹内謙社長のコメント「市民メディアは武士の商法。結局は親会社の心意気次第」。
ライブドア本体から切り離され別会社化されるPJニュースの例。小田光康編集長のコメントコスト構造を変えるのは、閲覧が飛躍的に増えない限り無理

OMNは大量退職が始まった団塊世代を取り込むキャンペーンも計画中だ。

(略)市民メディアにとってはブログが競合相手。竹内氏は楽観的に受け止めている。

一方、佐々木さんは「日本の市民メディアと、ブログ的なものとの親和性は低い。拡大のためには、匿名が主流のブログ文化をすくい上げていくしかないが、団塊世代を中心にした市民活動的サイトとして一定の地位にとどまる道もある。どっちつかずでは人が離れていくだけだろう」と話す。

こちらは石川(智)記者の主観が入っていないように感じられるせいか、比較的すんなり読む事ができました。赤字は億単位という元木氏のコメントは、外部から見ていてなんとなく想像はできても、実際に編集長の口から聞くと改めてずしんと響くものがあります。平野次長が3月に武蔵大学で述べた「お金を燃やし続けている段階」が今も続いているという事なのでしょう。前述のJ-CASTの記事によれば本家も楽ではないとのことですし、現段階で収支を合わせるのは無理にしても、ソフトバンクにおんぶにだっこの状態がいつまで続くのか、たいへん気になるところではあります。

そこで出てきた新事実が、団塊世代を取り込むキャンペーン。 

計画→実行→いつの間にかなかった事

OMNではよくこういう事がありますが、それが成功につながるのならばやってみる価値はあるでしょう。しかし、団塊世代の取り込みが、今でも内輪でゴニョゴニョやっている印象が強いOMNにもう一つの仲良しクラブを作るだけに終わる可能性もあります。佐々木氏のコメントはOMNだけではなく市民メディア全体を念頭に置いたものですが、既に市民活動的サイトにはJANJANが踏み出している気がしますし、そちらの方向ではもっと気合が入った感じのNPJというメディアも先日発足しました。

今から他の市民メディアの後を追うのか、ブログ文化をすくい上げるなりして他の方法での浮上を模索するのか、OMNの選択が注目されるところではありますが、最後の佐々木氏のコメント「どっちつかずでは人が離れていくだけだろう」この部分には私なりに強く共感します。

このエントリで紹介した記事については、OMNでも矢山禎昭記者が自身の記事のコメント欄で簡単な感想を述べています。そこにある「書かれていることは1年前の状況」「木舟氏の記事を暴露とは大げさ」といったあたりは、まさにその通りと思いました。

ただし、問題だと思うのは1年前の状況が1年経った今になってもほぼそのまま通用してしまう部分も多い事。実名主義云々は別にしても、ビジネスモデルの確立といった点では飛躍的な前進があったようには思えません。

過ぎてしまった時間を取り戻す事はできませんが、1年後にも同じような記事を他のメディアに書かれぬよう、拙ブログでも同じようなエントリをアップせずに済むよう、OMNには方向を決めて前に進んで欲しいものです。


【おまけ】
朝日記事本文の脇に、市民メディアについての簡単な説明がありました。その中からOMNについて書かれた部分を一部抜粋します。特にコメントはありません。

鳥越俊太郎・初代編集長に代わり今年2月から、元週刊現代編集長の元木昌彦氏が指揮を執る。


【関連エントリ】
公開講座に行ってきました(3)


勝手に予想!三代目は誰だ?

2007-11-28 | オーマイニュース

オーマイニュースの自称勝手カフェでは、二代目世話人である小宮山圭祐記者の編集部入りにともない、三代目へのバトンタッチが近いうちに行われるものと思われます。

そこで、どこよりも早く三代目世話人を大胆予想してみます。(並びは50音順)

・林美幸記者
・三田典玄記者


この2人のうちどちらかでほぼ決まりでしょう。

小宮山氏の報告記事によれば、9月と10月の参加者はどちらも5名にとどまり、11月は開催そのものがありません。参加人数を見た限りでは先細りが懸念される状況の中でも、上記の両名は、9・10月の両方の会合に出席していました。他に小林泰大記者も同じように出席していますが、氏は現役の高校生ということで予想からは外しました。

都合が合った時、気が向いた時だけ参加すればいいのが自称勝手カフェのいいところではありますが、世話人だけはそういうわけにもいきません。市民記者スペースの使用許可や、編集部員のゲスト参加要請等、編集部との折衝作業も行わなければなりません。

実際に三代目が誰になるかはわかりませんが、決まった人は頑張ってください。


勝った負けたは時の運

2007-11-27 | オーマイニュース

予告されていたオーマイニュース(以下OMN)のメンテナンス作業は、どうやら無事に終了したようです。私のところでは未登録者用のコメント欄を開く時のレスポンスは相変わらず悪いですが、今回行われたのは他の部分のメンテナンスなのでしょう。担当した皆様、お疲れ様でした。

なお、今回のメンテナンスにあたっては、事前にトップページ上部に赤字ゴシック体で実施がアナウンスされていたり、メンテナンス中のトップページにお知らせが出ていたりと、拙ブログで再三批判してきたOMNのアナウンス体制に大きな前進がありました。今後もこのような姿勢を忘れずにサイトを運営していただきたいと思います。


さて、話は変わって昨日の出来事になりますが、年末ジャンボ宝くじが発売になりました。西銀座チャンスセンターの行列は毎年恒例になっていますが、今年はOMNでも吉川忠行記者を送り込み、発売開始から約1時間後の9時33分にはその模様が掲載されました。

この出来事は他の多くのメディアでも伝えられましたが、目を引いたのは未登録者用のコメント欄でのやり取り。速報性を評価した読者のコメントに対して、吉川記者は「共同(通信)には負けた」と返しました。共同はOMNより15分早い9時18分に同じニュースを伝えたとのこと。そこで、共同の記事を見てみました。

どうやら、掲載時刻の差は、写真の違いにあったようです。

共同の写真には詳しい撮影時刻が書かれていませんが、売り場の窓口はまだ開いていません。写真は事前に撮影しておき、発売開始直後に購入者のインタビューをとって出稿作業に入ったものと思われます。

それに対し、吉川記者の写真が撮られたのはキャプションによれば9時08分。直後に現場を離れたとして、記事掲載までの所要時間はわずか25分です。これは立派な速報記事といっていいでしょう。取材から掲載までの所要時間でみれば、OMNと共同は大差がないか、若干OMNの方が上回っていると考えられます。

宝くじ発売というイベントは、写真さえなければ現場を取材しなくても記事掲載が可能な性格のものです。当然、記事の大部分は事前にテンプレが用意されていたのでしょう。それに加えて、OMN本社から程近い場所でのイベントで、手軽に取材に動けるという地の利もありました。

とはいえ、このスピードでの掲載はお見事です。OMNも条件さえ合えば、大手メディアとも張り合えるところを見せました。

吉川記者は負けたとコメントしていますが、共同記事との条件の違いはここに書くまでもなく、自身がよくわかっていると思います。コメントを読む限りでは、目を吊り上げて他社と張り合っている印象もありません。やるだけやって「あ~負けた」というのは、爽やかな感じすら受けます。

なんかこういうのっていいなあと、ガラにもなくほっこりさせられました。


何気ない一言には違いないが

2007-11-26 | オーマイニュース

一昨日のエントリでも紹介した記事の中で、執筆した市民記者は次のように述べました。(引用部分はイタリック体で表示、フォント変更・太字は筆者)

今のオーマイニュースは昔の浦和レッズを見ているようである。

あおむし商会ヲ印支部のハートマソ軍曹氏は、未登録者用のコメント欄でこの表現について不愉快さを明らかにするとともに、謝罪と撤回を要求しています。それに対して、記者からの返答は今のところありません。ただし、未登録者用のコメント欄を設けるかどうかは記者が選択する事ですから、設けた以上は目を通しているものと思われます。今後このコメントにどのように反応するか、あるいは黙殺して見なかったことにするのか、編集部入りを明らかにした記者にとって、早速の試金石ともいえそうです。

さて、記者の目には昔のレッズがどのように映っていたか、同じ記事から引用してみます。

 浦和レッズの今の人気と実力は昔からあった訳ではない学生時代、レッズサポーターの友人と何度か試合を観戦したことがある。素人の私が観ても本当に弱かった。罵声がサポーターから飛び、ある意味緊迫した雰囲気さえあった。

本論に入る前に、まず、人気に関しては昔からあったと反論しておきます。記者はオーマイニュース(以下引用部分を除いてOMN)と比較する為にこのような表現を用いたと思われますが、チームの弱さとサポーターの熱狂ぶりは初期のレッズの2枚看板でした。罵声は人気に伴わない実力に浴びせられたものです。初期のレッズは、ダメ虎と呼ばれていたかつての阪神タイガースとよく比較されていたものです。

さて、実力についてですが、こちらは普通の人の目にはそのように映っていたという事なのでしょう。確かにその弱さは半端ではありませんでした。OMNと比較したくなる気持ちも理解できなくはありません。

しかし、どれくらい弱かったかをもう少し詳しく知っていれば、軽々にレッズを引き合いには出せなかったものと思われます。

初期のレッズは、いろいろな相手に公開虐殺を食らっていました。私などは、ヴェルディやマリノス、アントラーズあたりとの試合は見たくないとすら思ったものです。どうせボコボコにされると思えば、そんな気持ちにもなります。最初に引用した部分は、関心を持っている一般の市民記者や読者であっても、中でやっている事があまりにお粗末で目を背けたくなるほどにOMNがひどかったと言っていることになります。

それでも結局はTVのチャンネルを合わせ、あるいはラジオで実況を聞いたりしていたわけで、そのあたりは、今のOMNを見ている心境に重なり合う部分がかなり多いようにも思えます。

そして、罵声がサポーターから飛び、ある意味緊迫した雰囲気さえあった。のくだりは、レッズについて書いている文章でありながらも、さほどOMNに高い関心を持っているわけでもない大多数の読者の見方と重なります。

外からは殺伐とした雰囲気の中で悪口雑言が飛び交っているように見えても、実際にフィールドの中で耳を澄ましてみれば、その中身が不甲斐無いプレーに対する叱咤激励であったり、いいプレーをする為の提言だったりします。時には経営側に対する謝罪要求や提言が行われる事もあり、それに対して経営側が謝罪したり、善処を検討するとの回答があったりもします。

ただ、その謝罪や回答がその場しのぎの口先だけと思えば、更に選手や経営陣に厳しい言葉が浴びせられる事になります。そうなると、最初にあげられた問題に加えて経営陣の不誠実な対応への批判が加わり、事態はますますこじれていきます。OMNが抱えている諸問題を認識した上で、再度同じ箇所を引用してみましょう。

今のオーマイニュースは昔の浦和レッズを見ているようである。

浦和レッズに興味が無ければあっさり読み飛ばしてしまいそうな一文ではあります。しかし、記者はそこまで考えてOMNと昔のレッズを対比させたとは思わないものの、こと実力面に関してだけは、この表現はOMNの現状をかなり正確に言い当てた鋭い比較、言い換えればOMNが抱えている傷口を深くえぐっているような気がします。


【速報】市民記者が編集部員に転進

2007-11-24 | オーマイニュース

今日、オーマイニュース市民記者の小宮山圭祐氏が、来年1月からの編集部入りを表明しました。

ソースはこちら

思い返せば、つい2ヶ月前には平野日出木編集次長が藤倉善郎記者のインタビューに答えて、以下のように発言していました。(引用部分はイタリック体で表示、フォント変更・太字は筆者)

──最終的には「100%ノンプロ記者」のメディアを目指しているんですか?

 そんなことはありません。市民記者から出発して、他の媒体にも記事を採用してもらえるフリーランス記者が生まれたり、編集部員になって、100%近い時間をオーマイニュースのために投入してくれる人が出てきてくれればいいなと考えています。

平野次長の発言は、小宮山氏を念頭に置いて出てきたものだったのかもしれません。

いや、これはいろいろな意味で驚きました。

【おまけ】
今日確認したところ、採用情報のページも更新されていました。仕事が速い!


【関連エントリ】
近日掲載予定です


実はプロ記事こそ使い捨て?(下)

2007-11-23 | オーマイニュース

実はプロ記事こそ使い捨て?(上)からつづく

軸丸記者は自らの記事のコメント欄で、一般記事がないとメディアとしては先がないという、おそらくは編集部の考えを述べました。一般記事(ファクト)とオピニオンが半々という記事の比率が人を呼び込む事につながると、編集部としては考えているようです。

しかし、記事の執筆で飯を食っているわけではない一般の市民記者にとって、現場に足を運んで自らネタを拾ってくるというのは、なかなか簡単な事ではありません。いきおい、どこかで提示されたファクトに反応するオピニオン記事の比率は高くなると思われます。そこでオーマイニュース(以下OMN)が現在行っているのが、プロ記者によるファクトの補完なのでしょう。

かつてOMNでは、オーマイ速報という形で他のメディアが報じたニュースを伝えていた時期がありました。それによって、不足しているファクトを補完しようと考えていたわけです。オーマイ速報は諸般の事情により創刊から約半月でその幕を下ろしましたが、その際に出されたお知らせは以下のように締めくくられています。(引用部分はイタリック体で表示)

新たな速報体制も整えていく方針です。ご期待ください。

それから1年以上が過ぎましたが、新たな速報体制はその概略すら明らかになっていません。

OMNの規模からすれば、それも無理からぬ話です。インターネットによって情報の発信は容易になりましたが、現場に足を運んで取材を行う為にはそこに人を送らなければいけないのは、基本的に昔と変わりません。何か事件やイベントがあった時、OMNが現場に送り込める人数がどれだけいるか。オーマイ速報に代わる速報体制を築くのは、物理的に不可能といってもいいでしょう。

そんな中、軸丸記者は改正入管難民法関連の速報記事を書き、朴記者が素早く反応してオピニオン記事で答えました。これは編集部所属記者同士による内輪のやり取りという側面はあるものの、自力でつかんだファクトからオピニオンに発展した例として、記憶にとどめておきたいと思います。

ニュース報道の世界では、ファクトはただそれを表に出すだけでは満足に輝く事はできません。ある問題をメディアが伝えたとして、そこから様々なオピニオンが噴出したり、あるいは新たなファクトがあぶり出されて、ようやく最初にその問題に光を当てた記事の価値が認識されます。今回の例でいえば、朴記者のオピニオン記事によって軸丸記者の元記事に光が当たったという事です。

そのように考えると、ファクトを書くのは実に損なものだと思えます。

ファクトでもオピニオンでも、読むに値しないと考える読者が多ければ読み捨てられてしまうのはどちらも一緒です。それでもオピニオンの場合には、その元となったファクトの記憶が薄れる事はありませんが、読み捨てられたファクトは新たなファクトの発掘につながる事もないままに忘れ去られていきます。

しかも、比率でいえば忘れ去られる記事の割合が圧倒的に高いでしょう。ニュースは、日々あらゆるメディアで報じられていますが、その中で人々の記憶に残るのはほんの一握りに過ぎません。少なくともOMNでは、ファクト記事は現場に足を運んで取材する姿勢を崩していません。大手メディアのように手間隙をかけた挙句にお蔵入りとなる記事は殆どないにしても、結果的に出しても読んでもらえない記事であればお蔵入りとさしたる違いはありません。

このように、一見労多くして功少なしの典型のようなファクト記事ですが、それでもファクトにこだわるメディアがあり、記者がいるのも確かです。その心中を勝手に推察すれば、当たった時の快感が何にも代えがたい喜びなのだろうと思います。その殆どが埋め草となって使い捨てられていっても、そんな事はものの数ではないのでしょう。

ただ、いくら快感が大きいからといっても、ファクトを専門に追いかけるのは楽ではないように思えます。いつ当たるかは誰にも分からない、そんな砂漠でダイヤモンドを探すような作業は、他に本業のある一般の市民記者にとっては手に余ります。やはりファクトを日常的に追いかけるのはプロ記者の仕事になるのではないでしょうか。多くの記事が使い捨てられていくのはその代償で、OMNはそういった事も含めてプロ記者に給料を払っているとも考えられます。

素人をうならせるような記事を書くのがプロ記者という考え方も正しいでしょうし、現に私もそう思います。しかし、そればかりではなく、殆どの記事が使い捨てにされるのを承知でファクト記事を書き続けるというのも、またプロの仕事なのかもしれません。


実はプロ記事こそ使い捨て?(上)

2007-11-22 | オーマイニュース

一昨日、改正入管難民法が施行され、原則16歳以上の外国人を対象に、国内の空港や港で入国時の指紋採取と顔写真提出が義務付けられました。オーマイニュース(以下OMN)もこの話題を取り上げ、編集部所属の軸丸靖子記者による記事が夕方になって掲載されました。

これに素早く反応したのが同じく編集部所属で同法の施行対象となる朴哲鉉記者です。抗議デモを取材した軸丸記者に対し、朴記者は当事者の立場から同法に一定の理解を示す記事を書きました。その結果、OMNは同じ素材を扱った編集部員の記事が、約2時間の間隔を置いて2本並んでいます。

掲載から丸1日以上が経過して、これらの記事はどうなったかといいますと、軸丸記者の記事がトップページから流される一方で、朴記者のそれは一般枠ではあるもののトップページにとどまっています。評価点や評価人数の違いは外から見てもわかりますが、昨日午前に掲載された他の記事が既にトップから流されている事を考えると、編集部としては、朴記者の記事がPVを稼いでいるのでトップにとどめているものと推測されます。

この現象は一体何を表しているのでしょうか?

まず、軸丸記者は、自らの記事に寄せられた指摘に対して、これは一般記事であり編集部のミッションによるものと回答しています。ここでいうミッションとは、方針という意味で使われているものと思われます。その回答からは、市民記者の記事だけでは「その日感覚」が足りないのでプロ記者を使ってその部分を補完しているという、平野日出木編集次長のインタビューが思い出されます。いわゆるファクトにあたる部分の記事という事なのでしょう。

それに対して、朴記者は軸丸記者の記事にコメントをつけた後、その内容を膨らませて記事に仕上げました。こちらには同法に対する自身のスタンスが書かれており、明らかにオピニオンに属する内容になっています。抗議デモという反対派の動きだけを伝えたファクト記事に対して、別にいいんじゃないの?と返したタイトルからは、反論記事のニュアンスも感じ取れなくはありません。

おそらくPVだけを考えれば、ファクトよりオピニオン、賛同より反論という事なのでしょう。OMNもネットで商売をしている以上は決して無視できない話です。ただ、これはあくまで一面から見た考えで、ニュースサイトがオピニオンばかりになっていいのかといった問題とはリンクしません。

今回の場合、朴記者のオピニオン記事はトップページに丸1日以上居座れるだけのPVを稼いだとみられるわけですが、その呼び水になったのは明らかに軸丸記者の記事です。ファクトを読者に提供して、それを記事での議論につなげ、読者も議論に参加する。そう考えれば、一定量のファクトが必要であるとする平野次長の主張にもうなずける部分が出てきます。


(つづく)