にいはんは周回遅れ

世間の流れとは違う時空に生きる

実はプロ記事こそ使い捨て?(下)

2007-11-23 | オーマイニュース

実はプロ記事こそ使い捨て?(上)からつづく

軸丸記者は自らの記事のコメント欄で、一般記事がないとメディアとしては先がないという、おそらくは編集部の考えを述べました。一般記事(ファクト)とオピニオンが半々という記事の比率が人を呼び込む事につながると、編集部としては考えているようです。

しかし、記事の執筆で飯を食っているわけではない一般の市民記者にとって、現場に足を運んで自らネタを拾ってくるというのは、なかなか簡単な事ではありません。いきおい、どこかで提示されたファクトに反応するオピニオン記事の比率は高くなると思われます。そこでオーマイニュース(以下OMN)が現在行っているのが、プロ記者によるファクトの補完なのでしょう。

かつてOMNでは、オーマイ速報という形で他のメディアが報じたニュースを伝えていた時期がありました。それによって、不足しているファクトを補完しようと考えていたわけです。オーマイ速報は諸般の事情により創刊から約半月でその幕を下ろしましたが、その際に出されたお知らせは以下のように締めくくられています。(引用部分はイタリック体で表示)

新たな速報体制も整えていく方針です。ご期待ください。

それから1年以上が過ぎましたが、新たな速報体制はその概略すら明らかになっていません。

OMNの規模からすれば、それも無理からぬ話です。インターネットによって情報の発信は容易になりましたが、現場に足を運んで取材を行う為にはそこに人を送らなければいけないのは、基本的に昔と変わりません。何か事件やイベントがあった時、OMNが現場に送り込める人数がどれだけいるか。オーマイ速報に代わる速報体制を築くのは、物理的に不可能といってもいいでしょう。

そんな中、軸丸記者は改正入管難民法関連の速報記事を書き、朴記者が素早く反応してオピニオン記事で答えました。これは編集部所属記者同士による内輪のやり取りという側面はあるものの、自力でつかんだファクトからオピニオンに発展した例として、記憶にとどめておきたいと思います。

ニュース報道の世界では、ファクトはただそれを表に出すだけでは満足に輝く事はできません。ある問題をメディアが伝えたとして、そこから様々なオピニオンが噴出したり、あるいは新たなファクトがあぶり出されて、ようやく最初にその問題に光を当てた記事の価値が認識されます。今回の例でいえば、朴記者のオピニオン記事によって軸丸記者の元記事に光が当たったという事です。

そのように考えると、ファクトを書くのは実に損なものだと思えます。

ファクトでもオピニオンでも、読むに値しないと考える読者が多ければ読み捨てられてしまうのはどちらも一緒です。それでもオピニオンの場合には、その元となったファクトの記憶が薄れる事はありませんが、読み捨てられたファクトは新たなファクトの発掘につながる事もないままに忘れ去られていきます。

しかも、比率でいえば忘れ去られる記事の割合が圧倒的に高いでしょう。ニュースは、日々あらゆるメディアで報じられていますが、その中で人々の記憶に残るのはほんの一握りに過ぎません。少なくともOMNでは、ファクト記事は現場に足を運んで取材する姿勢を崩していません。大手メディアのように手間隙をかけた挙句にお蔵入りとなる記事は殆どないにしても、結果的に出しても読んでもらえない記事であればお蔵入りとさしたる違いはありません。

このように、一見労多くして功少なしの典型のようなファクト記事ですが、それでもファクトにこだわるメディアがあり、記者がいるのも確かです。その心中を勝手に推察すれば、当たった時の快感が何にも代えがたい喜びなのだろうと思います。その殆どが埋め草となって使い捨てられていっても、そんな事はものの数ではないのでしょう。

ただ、いくら快感が大きいからといっても、ファクトを専門に追いかけるのは楽ではないように思えます。いつ当たるかは誰にも分からない、そんな砂漠でダイヤモンドを探すような作業は、他に本業のある一般の市民記者にとっては手に余ります。やはりファクトを日常的に追いかけるのはプロ記者の仕事になるのではないでしょうか。多くの記事が使い捨てられていくのはその代償で、OMNはそういった事も含めてプロ記者に給料を払っているとも考えられます。

素人をうならせるような記事を書くのがプロ記者という考え方も正しいでしょうし、現に私もそう思います。しかし、そればかりではなく、殆どの記事が使い捨てにされるのを承知でファクト記事を書き続けるというのも、またプロの仕事なのかもしれません。



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18 コメント

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そうか (ねこだらけ)
2007-11-24 01:33:57
そんな見方もできるのか。
ご苦労様な話だねえ。
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プロから「見捨てられる」が正解かも (Mint)
2007-11-24 08:16:18
ビジネスモデルの体を成してないってことかも。
編集長の押しが無いのもメディアとしての個性が無い。
結局、個性が前面に出ないメディアはインタネでは生き残れないって例示をオーマイはするのかも。
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ファクトを探すのは大変だけど (ぽろにうむ)
2007-11-24 11:48:51
手近なファクトに変な色をつけて出すから踏み台にされちゃうと思うんだよね。
双方向性をうたうのであれば、一つのファクトの二面性を提示して、たまには主張でなく判断を投げかける形の記事にしてもいいんじゃないかと。
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>>ぽろさん (monkey)
2007-11-24 15:24:46
>たまには主張でなく判断を投げかける形の記事

以下、gooニュース畑より
http://news.goo.ne.jp/hatake/about.html?pageid=7#sorrybut

>こんな感じの書き方だと採用されやすい

>2.問いかけ型
> (1) ○△◇という事実・出来事がある(あった)ことを、自分の言葉で噛み砕いて表現
> (2) その情報源となったソースを提示
> (3) これはつまり、コレコレコウイウことだ(あるいは、伝聞でそれを知ったなら、コレコレコウイウことだそうだ)
> (4) これについて他の人や組織はこういうことを言っている 
> (5) その情報源となったソース提示
> (6)「みなさんはどう思われるでしょうか?」

私も、こういう記事があってもよいと思います。
ぽろにうむさんの仰っているように、
>一つのファクトの二面性を提示して
と言う部分が重要だと思うのですが、このあたりが苦手な方が多いというか…
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ちょっと日本語が変だったかな (ぽろにうむ)
2007-11-24 20:52:15
×判断を投げかける→疑問を投げかけるor判断を求める

はともかくとして、
OMNの場合、すでに結論というか言いたいことが決まっていて
そのためのファクトを拾ってくる記者が多いのかもしれない。
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こう考えると (管理人)
2007-11-24 22:47:36
中の人にご苦労様って声をかけたくなりませんか?
最初から狙ったわけではありませんが、微妙に勤労感謝の日にちなんだ感じになりました。

オマニーにもそれを狙って寝かせてたっぽい記事が出たけれど、これはなんか違う気がします。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071027/16615
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ビジネスモデルとしては (管理人)
2007-11-24 22:56:09
大量に人・モノ・カネを投入して砂漠でダイヤモンドを探す方式でも、
大手メディアなら成立するんだろうなと考えてます。
宝くじだって、大量に買えばそれだけ当選確率はUPしますし。
そこまでの体力が無いオマニーがどこまで大手の模倣を続けられるかは疑問ですが。

>メディアとしての個性
以前はそれなりにあったんですけどね。プラスに働かない方面のそれがw
元木さんのアクが強そうな部分をうま~く使えないものでしょうか。
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万能の言い訳 (管理人)
2007-11-24 23:00:09
その一
オマニーは中立なプラットホームですが、個々の記事はそうではありません。

その二
二面性を提示すると取材に倍の手間がかかります。そこまでの余裕はありません。つーかそれくらい察しろ!!
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やられたなぁ (管理人)
2007-11-24 23:17:06
ニュース畑の説明を見ていると、オマニーがこういうのを出せばよかったのにと思います。
オマニーにもヘルプの中にマニュアルがありますけど、畑の方が親切で分かりやすい気がしますし。
こちらはちゃんと説明しようって気持ちは伝わっても、どうにも堅苦しいというかなんというか。

http://www.ohmynews.co.jp/help/manual

>このあたりが苦手な方が多いというか…
面倒だからやらないのか、そういうスタンスなのかはよくわかりません。
二面性を持たせた記事は、一方向からのそれより倍以上の厚みが出ると思うんですけどねえ。
いやいろんな意味で余裕が無いのは重々承知してるつもりなんですが・・・
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それ、気になる (管理人)
2007-11-24 23:24:07
>すでに結論というか言いたいことが決まっていて・・・
そういう記事がは確かに目立ちますが、これには違和感ありまくり。
結論からひねって記事を書くのはいかにも週刊誌的なやり方のような気がするので。
オピニオンのためのファクトは、オマニーが求めてるファクトじゃないと思うんだけどなあ。
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