涼しいにも程がある(上)よりつづく
キャスティングの問題点についてもう少し詳しく見ていきます。今回時間を割いたテーマはネット選挙・年金・政治と金の問題・憲法9条の4つでした。テーマごとに各出演者が意見を述べられれば良かったのですが、実際には特定のテーマに抜けて詳しい人が1人いて、その人が話し出すと誰も止める事ができません。しかも話したがりの人ばかりです。
前のエントリでも名前を上げた中村友香・岩淵弘樹両氏は別にして、他の出演者は安倍政権や現与党に批判的なスタンスという部分は同じなので、反対意見は出ませんし、専門分野ではないので余計な口をはさみません。テーマごとに異なる意見をもつ複数の出演者を出さなければ、こういう展開になるのは目に見えているわけで、それは個人の意見の垂れ流しでしかありません。
そうそう、話が一段落するタイミングで司会の元木昌彦オーマイニュース(以下OMN)編集長が中村・岩淵両氏に感想を求める事はありました。しかし、それは相手に自分達の意見を認めさせるためのものでした。中村・岩淵両氏はそれぞれの立場から素直に感想を述べるのですが、その内容が出演者達の意に沿わないものだと、元木氏を含めた他の出演者が彼(女)らを説き伏せにかかります。その模様はどうにも見ていて気持ちの良くないものでした。
ただ個人の意見を垂れ流したかったのなら、ライブ中継の場でやる必要はありませんでした。通常の動画記事枠で「○○氏が語る××」とでも名付けてインタビュー記事を掲載するだけでいいでしょう。この方式なら余計な発言は編集でカットできますし、見たい人はいつでも見ることができて一石二鳥です。
また、都知事選ライブで好評だった白沢みき氏を降板させたのも裏目に出ました。同じく司会を務めた下村健一氏は海外にいて出演できなかったそうですが、OMNは白沢氏に出演交渉をしたのでしょうか?
都知事選ライブでの白沢氏は、下村氏とともに中継を仕切りながらライブチャットの書き込みにもすすんで反応して、視聴者を飽きさせないように意識した進行をしていました。プロの仕事です。
ところが、今回はどういう事情があったのか、進行のプロを排除して元木氏の単独司会でした。アシスタントの中村氏も、中継を見る限りでは進行についてはずぶの素人です。その結果、今回OMNが中継した参院選開票ライブは、出演者にダメ出しを出来る人が誰もいなくなって、特設スタジオの緊張感は皆無、視聴者は醒めた目で見ているだけという絵に描いたような視聴者不参加型番組になりました。
また、元木氏はチャットの書き込みをずっと無視して番組を進めました。OMNのTVスタッフは時折視聴者の問い合わせを含む書き込みに反応していましたが、元木氏が書き込みに触れたのは最後の最後だけ。それも締めに入って最後の一言を求められた出演者たちがまた長話を始めたのでうんざりしている反応に対して「もう終われとか言ってる人もいるけど、これ(終了時間未定)がネットのいいところだから」などと自分に都合のいい解釈をしているだけという寂しいものでした。
そして、この日最大といってもいい見せ場は、元木氏のこの発言からしばらくしてやってきました。出演者の誰かがだらだら話している途中で、番組がいきなり終了したのです。これはチャットに「もう終われ、はよ終われ」と書き込んでいた視聴者の念が届いたわけではなく、エンドロールの設定ミスでそうなったらしいのですが、強制終了を思わせるこのエンディングは、私を含めたチャットの書き込みを見る限りではかなり評判が良かったように思えます。この反応が、如何にだらだらグダグダな中継だったかを象徴しています。
もしOMNが次を考えているのなら、改善すべきは何をおいてもキャスティングです。編集部の誰が決めたか知りませんが、今回キャスティングを決定した人は、少なくとも今後数年間は人選にタッチしない方がいいでしょう。ライブチャットの書き込みは、都知事選ライブの約1700件に対して今回は約360件。これ以上の視聴者離れはOMNにとっても不幸です。
ついでにTVスタッフにも一言。
チャットにはTVスタッフ名で反省の弁が書き込まれ、来月の放送予定表にも今回の番組について書き込まれるとの事。おそらく拙ブログで書かなくてもTVスタッフはわかっているとは思いますが、今回は放送開始時刻の遅れに始まって、音声調整、市民記者から動画で寄せられた質問の紹介にスムーズさを欠く等のトラブルがありました。番組の強制終了もそうです。
これは推測になりますが、今回の放送は全くのぶっつけ本番ではなかったのでしょうか?
物理的に完全なリハーサルは無理でも、事前にチェックしていれば防げたのではないかと思われるトラブルが数多く見られました。動画スタッフが少数精鋭で睡眠時間を削って日夜働いているのは知っています。しかし、現在のマンパワーでは日常業務をこなすだけで精一杯で、今回のようなイベントがあると仕事がまわらなくなる状態ではないかと思われます。人件費との兼ね合いを無視するわけにはいきませんが、人手不足が質の低下を招くなら、何らかの対応が必要になってくるのではないかと考えます。
OMNで週1回のライブ中継を開始してからまだ2ヶ月弱ですが、毎回のように様々なアクシデントが発生しています。生中継にアクシデントはつきものですが、どうしても避けられない性格のものは別にして、事前に準備しておけば防げそうな技術面のトラブルが続発しているのは気になるところです。
ずいぶんと長くなりました。最後にちょっとしたアクシデントなら周囲からスルーしてもらえる秘訣を紹介します。
面 白 い 番 組 を 作 る
これに尽きます。番組が面白ければ、そちらの方が記憶に残ります。つまらないからちょっとしたアクシデントも気になるのです。バラエティーをやれというのではありません。視聴者も参加している気になれる番組、見応えのある番組という意味です。
TVスタッフの皆さん、頑張ってください。
(こぼれ話)
今回のエントリで紹介した元木氏を含む出演者の言動の多くは、放送中にライブチャットで視聴者からつっこまれていたものです。