にいはんは周回遅れ

世間の流れとは違う時空に生きる

実はプロ記事こそ使い捨て?(上)

2007-11-22 | オーマイニュース

一昨日、改正入管難民法が施行され、原則16歳以上の外国人を対象に、国内の空港や港で入国時の指紋採取と顔写真提出が義務付けられました。オーマイニュース(以下OMN)もこの話題を取り上げ、編集部所属の軸丸靖子記者による記事が夕方になって掲載されました。

これに素早く反応したのが同じく編集部所属で同法の施行対象となる朴哲鉉記者です。抗議デモを取材した軸丸記者に対し、朴記者は当事者の立場から同法に一定の理解を示す記事を書きました。その結果、OMNは同じ素材を扱った編集部員の記事が、約2時間の間隔を置いて2本並んでいます。

掲載から丸1日以上が経過して、これらの記事はどうなったかといいますと、軸丸記者の記事がトップページから流される一方で、朴記者のそれは一般枠ではあるもののトップページにとどまっています。評価点や評価人数の違いは外から見てもわかりますが、昨日午前に掲載された他の記事が既にトップから流されている事を考えると、編集部としては、朴記者の記事がPVを稼いでいるのでトップにとどめているものと推測されます。

この現象は一体何を表しているのでしょうか?

まず、軸丸記者は、自らの記事に寄せられた指摘に対して、これは一般記事であり編集部のミッションによるものと回答しています。ここでいうミッションとは、方針という意味で使われているものと思われます。その回答からは、市民記者の記事だけでは「その日感覚」が足りないのでプロ記者を使ってその部分を補完しているという、平野日出木編集次長のインタビューが思い出されます。いわゆるファクトにあたる部分の記事という事なのでしょう。

それに対して、朴記者は軸丸記者の記事にコメントをつけた後、その内容を膨らませて記事に仕上げました。こちらには同法に対する自身のスタンスが書かれており、明らかにオピニオンに属する内容になっています。抗議デモという反対派の動きだけを伝えたファクト記事に対して、別にいいんじゃないの?と返したタイトルからは、反論記事のニュアンスも感じ取れなくはありません。

おそらくPVだけを考えれば、ファクトよりオピニオン、賛同より反論という事なのでしょう。OMNもネットで商売をしている以上は決して無視できない話です。ただ、これはあくまで一面から見た考えで、ニュースサイトがオピニオンばかりになっていいのかといった問題とはリンクしません。

今回の場合、朴記者のオピニオン記事はトップページに丸1日以上居座れるだけのPVを稼いだとみられるわけですが、その呼び水になったのは明らかに軸丸記者の記事です。ファクトを読者に提供して、それを記事での議論につなげ、読者も議論に参加する。そう考えれば、一定量のファクトが必要であるとする平野次長の主張にもうなずける部分が出てきます。


(つづく)