にいはんは周回遅れ

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数字で見る原稿料改定

2008-06-04 | オーマイニュース

オーマイニュース(以下OMN)が、この7月から原稿料を改定するそうです。

そこで、OMNが市民記者に支払う原稿料がどれくらい変わるのか、早速試算を行ってみました。

 

トップ・サブトップ・ピックアップの本数は、木舟周作記者による“なぜ市民記者は辞めてしまうのか”にある、表2(10日分)の数字をざっと36倍し、ワンコインコーナーの本数は、今年3月から5月までの3か月間に掲載された本数をざっと4倍して試算を行っています。お知らせによれば、改定後の週間賞は週5本~10本となっていますが、拙ブログでは毎週10本選出され、選考は年間50回行われるものとみなしました。

まず年間の支払い総額ですが、今回の改定によって134万円の削減が見込める事がわかります。率に直すと約24%の削減率となり、金額・削減率ともなかなかの数字が出てきました。週間賞の支払いが従来の50万円から250万円と大幅に増えるものの、全掲載記事の原稿料を300円に統一して支出を圧縮すると、それだけで十分にお釣りがくる計算です。そこに月間賞の支出を3分の1に切り詰めた効果が加わります。

試算によればここまでで既に年100万円の経費削減が可能となりました。

ここでちょっと寄り道して、編集部のアナウンスから週間賞についての記述を引用します。(引用部分はイタリック体で表示、フォント変更・太字は筆者)

・週間賞にふさわしい、「質の高い記事」(取材や体験を通じて独自のファクトを発掘している記事)の本数が増えているため、賞本数を大幅に増やして、それらの記事を正当に評価し、投稿意欲の向上につなげたいと考えています。

投稿のレベルが上がってきていると考えるなら、賞本数の増加は記事の正当な評価につながるでしょう。しかし、今回の改定で、これまでなら1万円の週間賞を受賞していたレベルの記事に関していえば、特別原稿料は5000円の減額になります。編集部は、それも含めて正当な評価と言っているのでしょうか?

このお知らせでは、本数を増やす事は説明しても、週間賞の減額には一切触れていません。それでも、週間賞は本数を増やしたのでアナウンスが可能でしたが、本数はそのままで特別原稿料を3分の1にカットした月間賞については、変更の理由も目的も一切書かれていません。胸を張って言える事ではないかもしれませんが、特別原稿料の減額についてもきちんとしたアナウンスが欲しかったところです。

・トップ、サブトップの上位掲載にふさわしい良質な記事が豊富にそろう(掲載し切れないほど多い)日と、足りない日があり、同じ掲載位置でも、記事の質にムラが存在しました。今後は、週単位のかたまりのなかで、質の高い記事に対し、賞(特別原稿料)の形で原稿料をお支払いします。

記事を投稿しているのは素人の市民記者なのですから、日によって記事の質にばらつきが生じるのはごく当たり前のことです。その結果、時には編集部が考えるレベルに達しない記事がトップやサブトップに掲載される事もあるでしょう。ですが、それを理由に原稿料をカットするのはいささか乱暴な気がします。

平野日出木編集長は、以前エムプロ組の藤倉善郎記者が行ったインタビューでこのような発言をしていました。

──編集部員やプロ記者による記事の意義・位置づけをどう捉えていますか?

 木舟さん記事のコメント欄にも書いたのですが、補完関係にあると思います。市民記者の記事がオピニオン主体であれば、プロの方にはファクト中心のストレートニュース。市民記者の記事が“テール”ならば、プロの方には“ヘッド”。市民記者が「日持ちする独自モノ」であれば、プロには「腐りやすいが、その日感覚のある発生モノ・発表モノ・共通モノ」をお願いすることになるでしょうね。

補完関係をいうのであれば、市民記者の記事にトップにふさわしいものがない場合、編集部員や契約ライター等のOMN認定プロにトップを埋めるような記事を書かせればいいでしょう。そういう時の為に編集部員を雇用し、ライターと契約しているという考え方はOMNの中にはないのでしょうか?

平野氏が常日頃サイト上でその必要性を力説しているOMN認定プロは、こういう時には

クソの役にも立たないという事がよくわかりました。

寄り道が長くなりました。

話を戻して、馬鹿にならないのがワンコインコーナー原稿料廃止です。この3ヶ月間の掲載本数は、ショートニュースとシチゴ帳を合わせておよそ850本もありました。OMNは毎日10本弱、金額にして1000円弱をワンコイン記事に支払っていた事になります。

・「ざ・ショートニュース」「シチゴ帳」は従来、一定水準に達した作品に対して100円の原稿料をお支払いしてきました。今後は参加者の増加を期待し、掲載率を高めていきます。

お知らせにはこう書かれていますから、7月以降は一定水準に達しない作品でもバンバン掲載されるようになるのでしょう。実際にどうなるかはわかりませんが、編集部の思惑通りに参加者が増えたとしても、それが今でも決して高いとはいえないワンコインコーナーの質をこれ以上低下させてしまったら、コーナーそのものの存続が危ぶまれるような気がするのですが、OMNとしてはそんな事よりも原稿料の支出を削減したかったものとみえます。

今回のお知らせには、OMNにとって都合の悪い事は殆ど書かれていません。そんな中、ワンコインコーナーについてだけは、はっきり掲載レベルを下げると表明しています。1本100円とはいえ、原稿料を廃止する以上はその点に触れずにはいられなかったのかもしれませんが、ワンコイン以外の通常記事にしても、原稿料が廃止にはならないものの単価の切り下げが行われます。

原稿料を廃止すれば質は下がるが、値下げするだけなら質は下がらない。

そんな事が本当にありえるのか、私は極めて否定的に考えています。

ただし、前回のエントリで触れた投稿文字数の削減と違い、今回の原稿料改定は実施まで1ヶ月弱の猶予があります。OMNがその気になれば、今からでも外部の声を聞き、改定内容を変更することも可能だという事です。

残念ながら、今のところOMNはその気になっていないようで、お知らせを記事として掲載し、コメント欄を設置する事はしませんでした。そして、今回のお知らせを受けて投稿された高橋篤哉記者の提言は、文字数制限原稿料改定に言及した2本とも、あっという間にたね送りを食らっています。万が一、たねプロに採用されたとしても、書き直した記事が正式掲載される事もないでしょう。

そこで、最後にニュースのたねから当該記事のまとめ部分を掘り起こし、ちょっと見やすく手を入れて、小さな光を当てたいと思います。

 説明して理解しあおうよ

 今回の二件の投稿ルールの改変は何をもたらすのか。十分に市民記者側の立場になったうえでのシュミレーションや考察、検討は済ませているのか? コストや手間の削減は、予防意識やメンテナンスへの配慮が欠けている場合、危険の増加、質の低下を招くものである。

 耳を塞がず目を閉ざさず、市民記者の意見をもう一度聞いてみよう。経費削減をして頑張らなければいけないなら、市民記者の原稿料と編集手間をカットする事がベストだと説明しよう。

 湯浅記者が社長にインタビューをしている動画でも話題に上がっていた「説明不足」「相互理解」「パートナーとしてのあり方」について、今一度考えよう。意見を述べる市民記者は、決して編集部の敵ではない。

たね送りになったとはいえ、高橋氏が伝えたかった事が、OMNに伝わっていないはずがありません。問題は、OMNが聞く耳を持っているかどうかです。