「からむし-鯛の唐蒸し」
主な伝承地域 金沢市周辺
主な使用食材 タイ、おから、人参、ごぼうなど
歴史・由来・関連行事
尾頭つきのタイを背開きにし、人参、ごぼう、きくらげなどを入れて煮た五目おからを詰めて蒸した定番の加賀料理。武家文化の名残りを色濃く残す郷土料理の一つである。二匹のタイを腹合わせにした盛りつけが主流となっている。
祝いごと、とくに婚礼時の際に食べられている。中華料理に由来をもつ長崎の卓袱(しっぽく)料理が、蘭学修養の加賀藩士を通じて伝来されたともいわれている。
タイは唐蒸し以外にも、昆布じめ、あら炊き、タイ皮の和え物などさまざまな料理に活用される。
食習の機会や時季
婚礼の際に、嫁方は嫁入り道具とともにお酒、大ダイを持参する。それを婿方で唐蒸しにする。宴たけなわのころを見計らって、「鯛の唐蒸し」を披露。客人たちに振る舞われ、宴は一層の盛り上がりを見せる。上身のみを客人に取り分け、骨の下身は下働きをしてくれた人や近所の人に振る舞い、労をねぎらった。
二匹のタイを腹合わせに盛り付けるのが習わしで、これを「にらみ鯛」や「鶴亀鯛」という。腹開きではなく、背開きにしたのは切腹を連想させ縁起が悪いからである。このあたりに、武家文化の名残りを見ることができる。タイのおなかにはちきれんばかりに、おからを詰めるのは子宝に恵まれるように、と願ってのことである。
一般家庭の祝いごとや祭礼にも食べられており、現在は季節を問わず祝宴に登場する。伝統を重んじる商家などでは、12月の祭礼「恵比寿講」にて商売繁盛を祈願する。このとき、えびす様に供えたおさがりのタイを使って、唐蒸しをつくった。
飲食方法
タイのおなかに詰まったおからは、人参、ごぼう、れんこん、しいたけ、ぎんなん、きくらげとともに炒められている。出汁、醤油、砂糖などで味付けされており、ほんのりと甘い。おからをタイに詰めて40分から50分ほど、大ダイでは1.5時間以上蒸すと、おからにもタイの旨味がうつり美味しく食べられる。
色あざやかな九谷焼の大皿に盛り付けられることが多く、祝宴に花をそえる。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
手間がかかることから、昔とちがって一般家庭でつくられることはほとんどない。いまでは格式ある料亭やレストランなどで催されるお祝いに提供されることが多いが、その際は予約が必要である。演出として、仲居が「鯛の唐蒸し」をもって客席をまわって披露する飲食店もあるという。
情報提供元 : 「青木悦子の新じわもん王國 金澤料理」(著:青木悦子氏)
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/tainokaramushi_ishikawa.html より
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