岡山市立市民病院 総合診療グループ(ER+GIM)

岡山市立市民病院の総合診療グループである『総合内科』と『救急総合診療科』の日常の雰囲気を伝えていきます。

OCH救命救急 M&Mカンファレンス(2015/09/04)

2015-09-16 22:52:23 | 院内カンファレンス
こんばんは。Dr.Waveです。

9/4はM&Mカンファレンスでした。

PT INRが延長していた症例をベースに、検査で異常病態が示された場面でのシステムのレビューを行いました。

PT INR延長についてはガイドラインがでており、知っていればそのまま対応可能です。
しかし具体的な数値が分からなかったり、ガイドラインがあること自体を知らない場合もあります。
遭遇した異常病態の対応が分からない場合に対してどのように対応するかをシステム的な見直しを行いました。

まず異常病態を認知する方法についてです。

当たり前ですが、検査は結果がでるまでに一定の時間を要します。
異常な検査結果に対して迅速に対応できるかどうか。結果が出るころに別の処置や対応をしていることは多々あります。入院患者が多数いて初診外来などで複数の患者を診ている際には同時多発的に各々の検査結果がでてきます。トリアージをしながら優先順位をつけて対応しているつもりでも重大なイベントが複数に起こる事態に的確に対応できているかどうかは定かではありません。

こうした状態の危機管理として、検査室からの「パニック値報告」システムがあります。
今回の事例ではPT INRのパニック値についてガイドラインの発行に合わせた調整はされていませんでした。パニック値の設定を誰がどのタイミングで調整をしていくかのルールも決めておくことが重要であると認識されました。また必要な条件設定をするとともに不要な条件は削除していくことも予定としました。


次に異常病態に対する対応が分からない場合のアプローチです。

初期研修医であれば、異常病態の対応を知っていると思われる先輩医師に迅速に相談するというのが一番の選択肢でしょう。しかし、いつでもいつまでも相談できる環境が続くとは限りません。医師として「知らない」常病態へのアプローチを知っておく必要があります。

答えは簡単です。「調べる」だけでいいのです。
しかし多忙な医療現場における「調べる」行動には重要なキーワードがあることを認識しておかねばなりません。「アクシビリティ」と「簡便さ」です。

今はスマートフォンであらゆる場所であらゆる情報にアクセスできますが、その場面の小ささは潜在的なストレスを抱えます。重厚な情報の入手となると、最初の一歩が出遅れることがあります。
外部との接続が可能なパソコンを設置していても、場所や立ち上げ速度、サクサク感など幾つもの検討点があります。
この機会に外来、病棟などあらゆる場所でストレスフリーで情報にアクセスできるシステムを検討してみることとしました。立ち上げ速度にこだわったパソコンもしくはタブレットを設置することが案として出ました。
どこに置いたらよいか、誰が管理するのか、メインテナンスはどうするかなども具体的に考えました。

また賛否両論となりますが、電子カルテ自体に「今日の治療指針」をプレインストールしておくことも検討しました(「UpToDate」や「DynaMed」は外部接続が必要であり当院の電子カルテはclosedのため検索不能)。たちまちの診療イメージを補助させるのが目的で、EBMの実践については外部接続可能なパソコンで行うことを前提とします。

こうした医療情報アクセスのメインテナンスを情報システム管理委員会が定期的に行うよう働き掛けることとしました。

また薬剤管理に関する院内の方針については普段から薬剤部と話合いの場を持ち病院全体でコンセンサスを持っておくことも重要であるとの意見もでました。
いい意味で薬剤部への相談を普段から行うことで双方の信頼関係が生まれ薬剤師が動きやすくなる院内コンセンサスができるとも考えられました。そうすることで内科に関わらず整形外科などでもワーファリン内服中の患者さんが入院した際に定期的に検査をしておくことを病棟薬剤師がアドバイスすることができるようになるとも考えました。
当院の重点項目である「救急診療」における中毒診療のDI(drug information)システムの構築の足掛けにもなると考えられました。


M&Mカンファレンスの醍醐味は、個の努力だけに頼らない、システム構築による医療の質の向上と安全の確保にあります。
今回挙がった提案については、各委員会の委員長や副委員長を担っている桐山医師、岸田医師、菅波医師、出口医師などによりシステム改善につなげていく予定です。

今後とも研修医のみならず各スタッフ(医師に限らず)の方々の参加を多くいただき、病院として着実な成長を遂げていければと考えています。













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