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華の会

日本文化を考える

永井陽子と桜・アンサンブル・ゼフィロ

2005年05月06日 | 文学
歌人 永井陽子と桜 アンサンブル・ゼフィロ

海のむこうにさくらは咲くや 春の夜のフィガロよフィガロさびしいフィガロ

むかしむかしの木のこゑ風のこゑ ひそとしづけし木管四重奏曲        
                             永井陽子

4月8日(金)の日は朝早く、車で都心に出かけた。
お堀端は満開の桜で道路には花びらが舞っていた。

病院に入院中の知り合いの老人を迎えに行くためである。
病室から老人を車に乗せるため、初めて「車椅子」を押した。
病院の前の道には段差があり、神経を使う。
老人を乗せてから、車椅子を車のトランクに載せる時、
車椅子が以外と重く、しかも大きく、トランクにのせるのに苦労した。
こういう事は実際にやってみないとわからない事だ。
もう一度「福祉住環境コデネーター1級」の試験を受けるために
基礎から勉強し直そうかとも思った。

その老人の50歳の息子が老人の同意を得ずに勝手に印鑑証明を取って、
老人所有のアパートを売却しようとしているという、それを阻止する為に、
印鑑証明書が発行される前の朝一番に老人の住んでいる町の区役所に行き、
印鑑証明書の発行を停止するための手続きをする事になった。

区役所に残っている息子が提出した印鑑証明書発行の委任状の筆跡が
老人が書いたものでない事を証明して、息子が印鑑証明書を取りに来ても、
発行をして貰わないようにお願いしようというのである。

区役所の計らいで印鑑証明書の発行を阻止する事は出来そうだが、
今後の対策を取るために鮨屋で昼食を食べながら老人から話を聞いた。
老人はこれから息子を警察に訴えたいという。
無駄な事だと判っていたが老人の気持ちを考え、
午後は老人の住む町の警察署にも行った。

親子の対立で財産が絡んでいると複雑で
他人にはわからない事情もあり、
あまり、深入りすると最後はこっちが恨まれてしまう場合もある。
警察は相手にしてくれなかったが嫌な話だ。

老人を病院に送ってから、時間はあったが
真っ直ぐ、家に帰る気がしない、
皇居や都内の公園の桜を眺めて時間を潰した。

道路は金曜日の夕方で混んでいた。
丁度、飯田橋付近で外堀通りを新宿に向けて運転していた。
外堀の土手の桜並木は満開で
土手の桜並木の奥に時々中央線の橙色の電車が通過した。

カーラジオで夜の7時のニュースが終わると、音楽番組で、
この1月の演奏会で聞いた「アンサンブル・ゼフィロ」の
来日演奏会の録音放送になった。

曲目はモーツァルト作曲の「フイガロの結婚」からと
      セレナード変ロ長調K.361(グラン・パルティータ)

グラン・パルティータは映画「アマデウス」の中で
サリエリがこの曲を聴き、モーツァルトの天才を感じる場面に使われた。

アンサンブル・ゼフィロはイタリアの演奏団体で古楽器で演奏する。
音の柔かさ、自由闊達な演奏、聞いていて楽しくて仕方がなかった。
演奏している人たちはその何倍も楽しそうに見える演奏会だった。

アンサンブル・ゼフィロについてのHP
http://www.allegromusic.co.jp/ENSEMBLEZEFIRO.htm

http://www.arkas.or.jp/event/zefiro-fry.html

カーラジオから「フイガロの結婚」の序曲が聞こえてくると
もうだめ、車の中はたった一人の演奏会場になった。
音量を最大に上げ、どっぷりと音楽の底に沈んでゆくと、
軽快に花びらが風に舞うようなメロディの流れの中で
薄白くなったお堀の桜並木の花が
時々,対抗車のライトに照らされて白く浮かび上がった。
今日一日の出来事のすべてを忘れられるような美しさだった。

8時過ぎに家に着いたのでグラン・パルティータを
最後まで聞く事は出来なかったが
夕飯を食べる前の犬との散歩は近所の団地の桜並木を歩いた。
春の暗い闇のなかに桜が白く浮かんでいた。
永井陽子の短歌のことを思い出した。

永井陽子は1951年昭和26年愛知県生まれ、
惜しい事に2年ほど前に亡くなられた。

10年ほど前、「モーツァルトの電話帳」という題名に引かれて
永井陽子の短歌集を買った。

永井陽子の「モーツァルトの電話帳」から

海のむこうにさくらは咲くや 春の夜のフィガロよフィガロさびしいフィガロ

ゆふさりのひかりのやうな電話帳 たづさへ来たりモーツァルトは

るるるる・・・・・・と呼べども いづれかの国へ出かけてモーツァルトは不在

東洋のれんげあかりの夕暮れに モーツァルトは疲れてゐたり

むかしむかしの木のこゑ風のこゑ ひそとしづけし木管四重奏曲

以上は「モーツァルトの電話帳」から

洋服の裏側はどんな宇宙かと脱ぎ捨てられた背広に触れる

警報機鳴るやもしれぬうつし世の さくらのやみのにほふばかりを

あはれしづかな東洋の春 ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ

もうすぐ青空があの青空が落ちてくる そんなまばゆき終焉よ来たれ

永井陽子

桜守

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