カカポの庭

本を読んだり、お茶を飲んだり。

「黒と茶の幻想」

2006年03月18日 | 
久しぶりに長い物語を読みました。
「黒と茶の幻想」著:恩田 陸

目の前に、こんなにも雄大な森がひろがっているというのに、あたしは見えない森のことを考えていたのだ。
どこか狭い場所で眠っている巨大な森のことを。
学生時代の同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子。
卒業から十数年を経て、4人はY島へ旅をする。
太古の森林の中で、心中に去来するのは閉ざされた『過去』の闇。
旅の終わりまでに謎の織りなす綾は解けるのか…?華麗にして「美しい謎」、恩田陸の全てがつまった最高長編。

過去の闇、と書くといかにも大仰ですが、この物語の中では記憶という巨大な森に潜んでいる小さな記憶、想いのかけらのようなものを指します。
何かの瞬間にひょっこり現れる、取るに足らない記憶。
普段の生活の中では見逃してしまうくらいのささいな記憶のかけらも彼らが歩いている太古の森の中では見逃すことができません…。
その小さなかけらが大きな森の一部だからです。
何かひっかかる、ということは何か、その原因は何か、4人がその謎を解明してゆきます。

ちょうど、その本を読んでいる途中に旧い友人から手紙が届きました。
手紙の中で彼女が私についてのエピソードを書いていましたが…私には覚えがありません。
そんなこと、あったかな。そうかもしれないな。そう思って読み進むことは可能。
でも、この本を読むと、その不鮮明な記憶が気になって仕方ありません。
あの時の私はどんなだったんだろう…。



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