日暮しトンボは日々MUSOUする

タチの悪い出戻り女 (姉のこと・その3)

当時付き合っていたミサキちゃんは、高校生の時にバイト先で知り合った女の子で、一つ年上だが童顔なので、私と同い年か年下に見える。 彼女は何年か前に事故で足の股関節を手術している。 普段の生活には何の支障もないが、全力で走ることはできない。 まぁ、マラソン選手でもない限り、社会人になったら全力で走ることはあまり無いから全く問題ないのである。 彼女の職場は、私の家の近くにある福祉会館で、その4階にある結婚式場の受付嬢と、たまに巫女さんをやっている。 仕事帰りにウチに立ち寄った彼女と、久しぶりに玄関の前で話をしていると、そこへ出かけていた姉が帰って来た。 彼女を見られてしまったからには仕方がないので紹介した。 姉は挨拶をするミサキちゃんを横目で軽視しながら「あんたの彼女? ふぅ〜〜ん…」と言って家の中に入っていった。 何だあの態度は。 私はやな予感がした。 それからというもの、彼女が遊びに来ていると、何かと私の部屋に来て「ミサキちゃん、ちょっと手伝って」と言って台所に連れて行き、晩ご飯の下拵えを手伝わせるのだ。魚の骨抜きとか、さやえんどうの筋抜きとか、面倒くさがりの姉は、本来自分でやるべきことをミサキちゃんにやらせている。 ある日のこと、私がいない時に訪れたミサキちゃんに、近所のリサイクルショップで買って来た収納ボックスを2階へ運ぶのを手伝わせていたので、私はそれとなく彼女の足がちょとだけ不自由なことを告げて、もうあんなことは2度とさせるなと姉に言った。 すると姉は返す刀に「アンタは足の悪い子と付き合ってるの? そんなめんどくさそうな子と付き合うのやめなよ」と言った。 めんどうくさい子ってなんだ! 姉の差別的な言葉に私は怒った。 コイツは昔からこうだ。思ったことはすぐ口にする。 相手が自分より格下だと思うと、たとえ相手を傷つけるようなことも構わず言う。 人への気遣いなど一切しない無神経女だ。 私と姉はその場で喧嘩になったが父が止めに入ってくれた。 父はミサキちゃんのことを割と気に入っているので、彼女をかばってくれたのだが、それが姉にとっては面白くない。 姉がいつまでも実家にいると、マコト(私のこと)が結婚したら嫁さんが困ると、嫌味とも冗談とも取れる言い回しで、よく食卓の話題にされた。 出戻り状態の姉にとっては気分が悪い。 もちろんその頃の私は、気楽な専門学校生だ。 ミサキちゃんとはただのお付き合いで結婚なんて考えてもいない。 だが姉は、当時の私と同じ頃に結婚して子供を産んだので、両親の長男に対する楽観的希望話を結構本気に捉えて、密かに焦っていた。 もし弟が結婚してこの家に嫁さんが来たら、自分の居場所がなくなると…  旦那の家で厄介者扱いされて追い出された(自分ではそう思っているらしい)可愛そうな出戻り女の同情効果は、とっくに期限が切れている。 こっちに来てからもう1年以上経つのに、未だに定職にもつかず、子供も両親に任せきりで、何かと理由をつけて家事手伝いもろくにしないで毎日フラフラしている。 ヨシユキももうすぐ小学生だ。 うやむやになってる籍もハッキリさせなければこっちの小学校にも入れることもできない。 子供のためにも自立してもらわなければ困るのになにも考えていない。 周囲(近所)の目もあるし、そろそろ実家でも厄介者使いされ始めてきた。 その針で突くような視線は姉自身にも感じていたので、その妬みに似た感情の矛先がミサキちゃんに向き始めた。 







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