「おめでとうさん」
「お早うさん」
「ごきげんさん」
「お父さん」
「お母さん」
「おいもさん」
「お粥さん」
大阪では何でも、食べ物までにも「さん」をつけるんやなあ。
よくそう言われますが、普段、親しんで使っている言葉です。
東京はすべて、「おまちどうさま」「ごちそうさま」と折目正しく発音し、
「お早う」「おめでとう」にまで「さま」を付けず、つけるならば
「ございます」なのでしょう。
民間 の挨拶 御所ことば
「お早う」「今日は」「今晩は」 → 「ごきげんよう」
これは、天皇に対しては「ごきげんさんよう」だと言います。
「お(ご)・・・さん」式の言葉は、“御所ことば”のまね。
「お(ご)・・・さま」が上品だと思うのはいなか者の律儀というものだ、
と、近世上方語辞典の編集者である元、大阪学芸大学教授前田勇
のエッセイを新聞で見つけた小林多計士氏が「ごきげんよう」という
本に本当にそうなのか・・ということを書かれていました。
(以下抜粋)
作家・田辺聖子は『大阪ちゃらんぽらん』で、「さま」は東京の方言であると次のようにこともなげに言ってのける。
---もともと大阪弁には「サマ」はない。「サマ」はむしろ東京弁である。京都弁にも「サマ」はない。丁寧にいうときも「サン」である。
大阪弁は京都弁から来ており、京都弁は御所ことばから来ているが、そもそも、宮廷の御所ことばに「サマ」がないのだ。(中略)
京都弁・大阪弁の敬称「サン」は御所ことばが下々に拡まり定着したものであるらしい。「お父さま」「お母さま」などという言い方は、東京の方言であるのだ。大阪の子供に、こんなしつけをしたら切なさそうな顔をするにちがいない。 ---
『竹取物語』『蜻蛉日記』で使われる「様」は、様子という意味で
使われています。ところが、『宇治拾遺物語』『源氏物語』には、
「さま」は方向や方角を表す言葉としても使われるようになります。
この方角・方向を表す「様」がその後、貴人の名を直接に言うの
をはばかって、方角で「北の方」「東の御方」と呼ぶ時の「方」と同じ
使い方で、「御所様」「仙洞様」「女院の御方様」などと、貴人の
御殿に「様」を付けて呼ぶようになり、さらに、この「様」が御殿の
主に対する敬称となっていったようです。
敬称としての様は、当初は貴人に対してのみだったのが親近感を
込めて呼ぶ時は「さま」を「さん」と訛って言うようになったらしいです。
『ごきげんよう 挨拶ことばの起源と変遷』
小林多計士:著
- 御所ことば(1)-
今は大阪でも「様」は割と耳にしますし、宛名書きでも使っているので、私は全く知りませんでした。御所ことば自体そんなに興味があったわけでもなく、「おじゃる」などというのが公家ことばぐらいしか知りませんでした。「さん」が御所言葉とは今回びっくりしました。あまり文献も一般では見ませんしね。
どおりで関西弁は全国で受け入れられるわけですね。
本当の意味を知ってる人は少ないとは思いますが。
言葉や語源を調べてると面白いです。