テレオロジカルな行為。

結果に関わらず、それ自体から充足感が得られる行為。
by ポール・マッケンナ

あの人は今こうしている 森雅裕さん

2010-03-02 12:19:41 | Weblog

西村京太郎、森村誠一、真保裕一、桐野夏生……。
新人推理作家の登竜門、江戸川乱歩賞を受賞した面々である。
いずれもすでに一家を成しているが、
85年は東野圭吾ともうひとりの新人がダブル受賞した。
「モーツァルトは子守唄を歌わない」が評価された森雅裕さんだ。
しかし、最近はまったく新作を発表していない。今どうしているのか。

 

●1カ月5万円の家賃を100万円滞納し友人に500万から600万円の借金が

 

 46歳までは作家として何とかやってきたけど、乱歩賞をもらってからの数年、
何百万円かの年収があっただけで、
それ以降は200万円にも届かない、年収百数十万円がやっとでした。

 

 新刊は年に1冊か2冊のペースで出してました。
でも、編集者からの依頼がだんだん減ってきて、
最後は完全に干されてるって感じでしたね。
自分は生きるか死ぬかの思いで書いてるのに、原稿に勝手に手をいれ、
タイトルまで変えてしまう。
それに対してこっちが訂正を求めるってかたちで、担当編集者とぶつかることがけっこうあった。
で、アイツは生意気だってなり、それが業界に広まったんじゃないかと推測してます。
まあ、本が売れなかったのが一番の理由かもしれませんが。

 

 99年に本を出してからはコンビニでバイトをやった08年3月から09年4月までの
期間を除いて、確定申告は数万円ですね。
1カ月5万円の家賃を100万円滞納して、
知り合いに500万から600万円の借金が今でも残ってるけど、振り返ってみると、
光熱費だって月2、3万円くらいはかかるし、当然食費もある。
それをいったいどうやって稼いできたのか。
ある新聞社にいる友人から書評の仕事が回ってきて、毎月でないにしても月5万円、
それが5年続いたのはすごく助かりました。
でも、ずっと貧乏にあえいでた記憶ばかりで、
他にどんな仕事をしたのか、よく覚えてないんです。

 最も苦しかったのは一昨年の2月。
ほとんど無一文になり、もう死ぬしかないって気持ちで、
高田馬場駅のホームに立ちました。
よっぽどただならぬ様子だったんでしょう。
駅員の方に声をかけられ、その場を離れることになりましたけど。
あと、その直後にコンビニのバイトに採用され、どうにか最悪の状況は脱しました。

 コンビニでは1年間、毎月12、13万円の収入がありました。
そこから10万円をたまった家賃の払いにあて、残りは2、3万円。
これも光熱費に消える。では、どうやって食べていたのか。ホント不思議ですねえ。

 コンビニでの1年間でさまざまな人間と関わり、
それを「高砂コンビニ奮闘記」(成甲書房)って本にまとめて、先月出版しました。
これ、21世紀になって出した初めての本です。

 今は本の印税を前借りしたから、経済的な苦しさはさほど感じてません。
だけど、2、3カ月先のことはまったくわからない。
このトシで新しい働き口を見つけるのはほぼ絶望的で、
将来のことを考えると不安でたまらなくなります。

 どうにも首が回らなくなったら、17、18年前から作ってる刀の鍔(つば)や
小刀を友人に格安で売って、その場をしのぐことになるんでしょうか。
大学(東京芸大)で日本画を勉強して、もともと刀装具に興味があったんです。

 ただ、それをやると友人に迷惑をかけるかもしれない。
貧乏でつらいのは食べ物がないこととかじゃないんです。
信頼してる友人を失うのが一番つらい。
そのことが身にしみてわかってるので、
友人に頼ることにはものすごくためらいがあるんです。

 

日刊ゲンダイより転載


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