伯父の戦記の新章です。
伯父が最も長い期間駐屯することになった「カビエン」という地に向かう場面のお話です。伯父自身によるカビエンの様子の紹介も記されていますが、今から60年ほど前の南太平洋は「未開の地」であったことが伺えます。
この章は2回に分けて掲載します。
画像は本文とは関係ありません。富山県黒部市にある「関西電力黒部第二発電所」です。白い建物が本屋ですが、昭和11年に建設されたようには見えないほど綺麗な外観でした。
黒部川の水を使った水力発電所ですが、川の水は本当に清流と呼べる綺麗さでした。
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ニューアイルランド島のカビエンに指揮小隊他2小隊、4小隊、5小隊総勢226名が(昭和17年)12月22日ラバールを離れる事になった。それも夜間となり出発時には天候も悪化、巡洋艦「鳥海」に乗艦する頃には豪雨と雷鳴轟く暗夜となった。その中を私達は大波にもまれ濡れ鼠の様になり海上を進む。時折激しい雷鳴と稲妻、そして大きな物体、前方に鳥海の雄姿を見る。
しかし再び闇の海となる。10分程して鳥海に到着。外舷には縄梯子が下ろされていた。私達はそれを利用して迅速冷静に乗り移った。
鳥海は直ちに闇のラバールを出港した。暫くすると艦間拡声器からカビエン迄は数時間である。その間はよく寝ておくようにと伝達している。しかし誰一人として眠る事は出来なかったようだ。目指す上陸地点カビエンとは一体どんな島なのか?何も聞かされていない。味方が既に上陸しているのか?無事上陸出来るのか?一抹の不安が襲う。心臓の動揺は打ち寄せる波のように打ちては返すの繰り返しである。
ここで一寸或る資料に基づくカビエンを紹介しておこう。
(カビエンがある)ニューアイルランド島とは、ソロモン群島の最北端に位置し、領土としてはオーストラリア領に属し、島民はメラネシア系であり、パプア族、カナカ族が多く民度は極めて低い。未だに具器は石器を用いている部族もある。
米、塩、砂糖、油等は全く無く、もっぱら山の幸、海の幸を求め生活をしている。正に原始の生活である。
従って貨幣も無く全て物々交換、男女共に顔体に刺青を施し、髪は縮れ、腰にはラブラブと云う布を巻き、体臭は強烈な悪臭を放っている。
性質はおとなしいようであるが、古くは1883年頃の島民は人間を食する部族であった。当時この島に来た宣教師数名は島民の餌食となり、帰ることがなかったそうである。
又、部族間の戦いで死んだ死体は火あぶりにした後、皮をはぎ食した時代があったそうである。
さて本題に入る。数時間経過したろうか?艦内がざわめき始めた時である。突然上陸用意のブザーがけたたましく鳴った。私達は迅速に行動を起こし上陸準備にかかる。私感の入る余地は無い。一心同体の動きである。緊張した顔にもどこか笑顔さえ見えてきた頃、東の空が薄らと明るくなる。 (以下続く)
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