ひとり暮らしのおじさん日記

札幌市在住。70歳超えおじさんの気ままな日記。

『恋歌』(朝井まかて著)を読んで

2022-08-28 17:56:01 | 日記
  • 2022年8月28日(日/大安):まもなく8月がおわるー

イヤー、最後は言葉がなくなりました。

朝井まかてさんの『恋歌(れんか)』、読み終えたのですが、

主人公は明治の女流作家樋口一葉さんも通った

歌塾「萩の舎」創設者の中島歌子(本名登世)さんです。

江戸の池田屋旅館の一人娘登世さんが、

水戸藩の尊王攘夷の志士と出会い、恋して水戸に嫁ぐ。

時代は幕末、水戸藩というと井伊直弼大老暗殺の

「桜田門外の変」を起こした尊王攘夷論派です。

男性が主人公の幕末作品はそれなりに読んでるけど、

ほとんどの主人公は男性です。

だから朝井まかてさんという女性作家さんが、

女性をテーマにして書いた作品なので興味深く読みました。

江戸時代には士農工商という身分制度があり、旅館という、

いわば一番下の階級の商人の娘が上の武士に嫁ぐのです。

当然、親が娘にほどこす教育も武士と商人では違います。

つまり、衣・食・住に関係する生活環境がまったく違うし、

武士と商人、それも水戸という地方と江戸という町では

様々な教えの違いがあり、そうしたことも描かれていて、

興味深く、教えられることも多々あります。

280ページという作品を読んでいて、

登世さんが感じたことの一つに、

義のためなら命を惜しまないという

武士の考え方に対する「?」のようなものが

あったように感じました。それは、物語の後半部に、

彼女が義妹に語る、何があっても「生きなければ」

という台詞で表しているように思うのです。

幕末小説を読んでいると、

志士たちが競うかの如くに死んでいきます。

それも10代、20代の若者たちが取り付かれたように。

どうしてもっと「生」を大切にしないのか、

恥をかいたっていいじゃないか、

などという苛立ちを感じることもあります。

多くの犠牲があって、藩のために若者たちが血を流して、

じゃあ、何が変わったのかと言うと、

徳川が薩長に変わっただけじゃないか、

と書かれていることに僕も同感するし、

水戸藩天狗党事件で、家族であるだけで、

女性や幼子の首を何も調べずに斬ってしまう悲惨さ。

ページを閉じた時、

ウーーーん、言葉につまってしまいました。