もう12月・・・ オレはいまだに就活中。困ったものだ。そろそろ本気で就職先を決めないと!
てなわけでいろんな会社を訪問してみたが、これがまったくのダメダメのダメ。オレのオツムじゃ一流企業はハナっからムリだとわかっていたが、中小企業も全部ダメだったなんて・・・ 完全に想定外っす。今もまた会社訪問してきたが、この会社もムリっぽいなあ・・・
いっそうのこと大学院に進学するかな・・・ いや~ オレのオツムじゃ、そっちもとうていムリだと思う。やっぱ地道に就職先を探すか・・・
会社訪問の帰り、ちょっと寄り道をして駅前の本屋に入ってみた。暇潰しでいつも寄ってる大きな本屋だ。中に入ってビジネス書を手にするかと思いきや、いつものコミック本のコーナーである。ま、これくらいの余裕があってもいいじゃないのか。
ほんとうは立ち読みしたいんだが、今のコミック本はみんなビニール袋に入ってるから、読むことはとうていムリ。表紙を見て中身を想像するくらい。さ~て、どれにするかな・・・
と、隣りにいるいる2人の男子高校生の声が聞こえてきた。どうやら1人の高校生がビニールに包まれたコミック本をもう1人に見せてるようだ。
「これ、どんな話だっけ?」
「さあ、もらっちゃえば」
「あは、そうだな」
と言うと、なんとその男子高校生は自分のカバンの中にその本をポイっと放り込んでしまったのだ。これってもしや万引き? いや、完全に万引きだろ!
オレは何か言おうとしたが、オレの心の中にいるもう1人のオレがそれを阻んだ。相手はふつーの高校生に見えるが、万引きを平然とやってのける高校生だ。そんなことしたら何されるのかわからんぞ!
万引き高校生たちは外に向かって歩き出した。オレはちょっとフリーズしてたが、無意識のうちにやつらを追いかけていた。
エントランスの自動ドアを開けると、さっきの高校生の前に1人の初老だけどガタイのいい男が立ちふさがっていた。どうやら万引きGメンのようだ。その背後には厳しい眼の20代の女性が立っていた。どうやら彼の相棒らしい。よかった、やつらの悪事は阻止されそうだ。
「君たち、カバンの中に会計してない本が入ってるようだが?」
その質問にやつらはシラを切った。
「さあ」
「ちょっと見せてくれないか?」
万引きGメンが高校生のカバンに手を伸ばした。その瞬間、もう1人の高校生が万引きGメンの身体に当身を喰らわした。いや、こりゃあ当身じゃないぞ、いったい何をやったんだ?・・・ と、思ったら、万引きGメンの身体がゆっくりと崩れ落ちた。高校生の手には血だらけのナイフが。なんと高校生は万引きGメンを刺したのだ。
「きゃーっ!」
万引きGメンの相棒の女が、思いっきり悲鳴を上げた。こりゃあもう修羅場だ。とんでもないものを目撃しちまったぞ!
「来い!」
万引きGメンを刺した高校生は、万引きした高校生の手を握って駆け出した。あたりがざわついた。オレはというと、なぜか意味もなくへたれこんでいた。情けないぞ、オレ。何もできないのかよ、オレ・・・
オレはなんとか立ち上がると、別方向に駆けだした。別に逃げる必要はないのだが、なぜか駆けていたのだ。
路地を曲がると、オレは立ち止まった。ひどく荒い息だ。オレは両膝に両手を載せ、荒い息を整えた。なぜか無性に悔しかった。
ふと足下を見ると、何やらドス黒いノートが落ちていた。B5くらいの大きさのノートだ。こ、これはもしや、デ×××ト? もしデ×××トなら、さっきの男子高校生たちの名前を書き込んでやる! そうしないとオレの気持ちが晴れないのだ!
オレは意を決すると、そのノートに手をかけた。
「ノート、返して!」
その瞬間、ふと声が聞こえてきた。そうだ、デ×××トを拾うと、その本来の持ち主の死神を見ることができるんだ。これはきっと死神の声だ!
オレは顔を上げた。そこに死神がいるはずだ。が、そこにいたのは9歳くらいのかわいい女の子だった。でも、何か変だ。全身真っ黒い水着のような服装、いや、ボンデージと言った方がいいかな? ともかく9歳児とは思えないきわどいファッションなのだ。
「そのノート、返してよ!」
「君は?」
「見てわからないの? 死神よ!」
「ええ・・・」
これが死神? 今はこんな小さな女の子が死神やってんのか? うそだろ。
「ねぇ、ノート返してよ!」
女の子、いや、死神が語気を荒げてきた。でも、こんなチャンス、二度とないはず!
「嫌だね」
「どうして?」
「オレは今どうしても殺したいヤツがいるんだ。そいつの名前を書かせろ!」
「何言ってんの?」
「これ、デ×××トだろ?」
「バカ」
かわいい死神はプッと噴き出した。
「それは近々死ぬ人の名簿よ。それを見て私たち死神は仕事するの。あなたが持ってても全然意味がないじゃん!」
近々死ぬ人の名簿・・・ んじゃあ、これに名前を書き込めば、やっぱそいつは死ぬってことじゃんか! やっぱこいつはデ×××トだ!
オレはジャケットの内ポケットからボールペンを取り出した。さっきの万引き野郎の名前を書こうと思ったのだ。が、ここで大事なミスに気付いた。やつらの名前がわからないのだ。これじゃあ、ぜんぜん意味がないじゃん。
「何やってんのよ! ねぇ、ノート返してよ!」
かわいい死神はいらついてきたようだ。
「嫌だ!」
オレはそれしか言えなかった。が、ここでいいことを思いついた。
「じゃ、お前がやつらを殺してくれよ?」
「殺す? 誰を?」
「さっき万引きして、店員を刺し殺した男子高校生だよ」
いや、店員が死んだかどうかまでは確認してないけど。
「知らないわよ、そんなの!」
死神はそう言い放った。つれないやつだなぁ。ま、あの事件のことなんか、知ってるはずがないよな・・・ やつは言葉を続けた。
「だいたい私は死神よ。悪魔じゃないの。死んだ人や死ぬ間際の人から命を奪うことはできるけど、ピンピンしてる人から命を奪うことは絶対できないわよ。
ねぇ、いい加減、そのノート、返してよ!」
ヤツはさらにイライラしてきた。でも、オレもこのまま引き下がる気は毛頭なかった。
「じゃあ、何か代わりのものを出してくれよ!」
かわいい死神は困ってしまったようだ。ちょっと考えると、こう言った。
「じゃ、1ついいことを教えてあげる。教えてあげるから、絶対ノート返してよ!
私たち死神は死にそうな人の前に行くと、まずその人がどういう状況にあるのか確認するの。
もし死ぬ間際だったら枕元に立つ。死んだら魂が抜け出すから、すぐさま回収できるように枕元に立つの。こうなったらもうおしまい。誰であろうと、死神を邪魔することは絶対できないわ。
でも、死ぬまでにまだ余裕があると見たら、足元に立つ。足元からマイナスのエネルギーを放って、ムリに命を縮めてやるの。それに他の死神に、こいつは私の獲物だってアピールにもなるしね。
そんな死神を見かけたら、こう呪文を唱えるの。
クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン!」
おいおい、なんだよそれ? どこかで聞いたことがある呪文だぞ。だいたいなんで1文字だけひらがなが入ってるんだよ。こいつ、オレをバカにしてるんのか?
「この呪文を唱えたら死神は強制的に引き剥がされるから、その人の命は護られるはずよ」
ほ、ほんとかよ? どう考えても眉唾もんだろ、それ。けどオレは、反射的にその呪文をつぶやいていた。
「クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン!」
次の瞬間、かわいい死神は消えてしまった。おいおい、なんだよ、これ? まじホンモノの呪文だったのかよ?
でも、デ×××トはオレの手に握られたままだ。あいつ、間抜けなやつだなぁ。大事なデ×××トを回収する前に秘密の呪文を教えちまうなんて。やっぱ子どもだったんだな。
このデ×××ト、大事に使わせてもらうぜ。オレは持ってたカバンにそのノートを仕舞い込み、意気揚々と歩き出した。
てなわけでいろんな会社を訪問してみたが、これがまったくのダメダメのダメ。オレのオツムじゃ一流企業はハナっからムリだとわかっていたが、中小企業も全部ダメだったなんて・・・ 完全に想定外っす。今もまた会社訪問してきたが、この会社もムリっぽいなあ・・・
いっそうのこと大学院に進学するかな・・・ いや~ オレのオツムじゃ、そっちもとうていムリだと思う。やっぱ地道に就職先を探すか・・・
会社訪問の帰り、ちょっと寄り道をして駅前の本屋に入ってみた。暇潰しでいつも寄ってる大きな本屋だ。中に入ってビジネス書を手にするかと思いきや、いつものコミック本のコーナーである。ま、これくらいの余裕があってもいいじゃないのか。
ほんとうは立ち読みしたいんだが、今のコミック本はみんなビニール袋に入ってるから、読むことはとうていムリ。表紙を見て中身を想像するくらい。さ~て、どれにするかな・・・
と、隣りにいるいる2人の男子高校生の声が聞こえてきた。どうやら1人の高校生がビニールに包まれたコミック本をもう1人に見せてるようだ。
「これ、どんな話だっけ?」
「さあ、もらっちゃえば」
「あは、そうだな」
と言うと、なんとその男子高校生は自分のカバンの中にその本をポイっと放り込んでしまったのだ。これってもしや万引き? いや、完全に万引きだろ!
オレは何か言おうとしたが、オレの心の中にいるもう1人のオレがそれを阻んだ。相手はふつーの高校生に見えるが、万引きを平然とやってのける高校生だ。そんなことしたら何されるのかわからんぞ!
万引き高校生たちは外に向かって歩き出した。オレはちょっとフリーズしてたが、無意識のうちにやつらを追いかけていた。
エントランスの自動ドアを開けると、さっきの高校生の前に1人の初老だけどガタイのいい男が立ちふさがっていた。どうやら万引きGメンのようだ。その背後には厳しい眼の20代の女性が立っていた。どうやら彼の相棒らしい。よかった、やつらの悪事は阻止されそうだ。
「君たち、カバンの中に会計してない本が入ってるようだが?」
その質問にやつらはシラを切った。
「さあ」
「ちょっと見せてくれないか?」
万引きGメンが高校生のカバンに手を伸ばした。その瞬間、もう1人の高校生が万引きGメンの身体に当身を喰らわした。いや、こりゃあ当身じゃないぞ、いったい何をやったんだ?・・・ と、思ったら、万引きGメンの身体がゆっくりと崩れ落ちた。高校生の手には血だらけのナイフが。なんと高校生は万引きGメンを刺したのだ。
「きゃーっ!」
万引きGメンの相棒の女が、思いっきり悲鳴を上げた。こりゃあもう修羅場だ。とんでもないものを目撃しちまったぞ!
「来い!」
万引きGメンを刺した高校生は、万引きした高校生の手を握って駆け出した。あたりがざわついた。オレはというと、なぜか意味もなくへたれこんでいた。情けないぞ、オレ。何もできないのかよ、オレ・・・
オレはなんとか立ち上がると、別方向に駆けだした。別に逃げる必要はないのだが、なぜか駆けていたのだ。
路地を曲がると、オレは立ち止まった。ひどく荒い息だ。オレは両膝に両手を載せ、荒い息を整えた。なぜか無性に悔しかった。
ふと足下を見ると、何やらドス黒いノートが落ちていた。B5くらいの大きさのノートだ。こ、これはもしや、デ×××ト? もしデ×××トなら、さっきの男子高校生たちの名前を書き込んでやる! そうしないとオレの気持ちが晴れないのだ!
オレは意を決すると、そのノートに手をかけた。
「ノート、返して!」
その瞬間、ふと声が聞こえてきた。そうだ、デ×××トを拾うと、その本来の持ち主の死神を見ることができるんだ。これはきっと死神の声だ!
オレは顔を上げた。そこに死神がいるはずだ。が、そこにいたのは9歳くらいのかわいい女の子だった。でも、何か変だ。全身真っ黒い水着のような服装、いや、ボンデージと言った方がいいかな? ともかく9歳児とは思えないきわどいファッションなのだ。
「そのノート、返してよ!」
「君は?」
「見てわからないの? 死神よ!」
「ええ・・・」
これが死神? 今はこんな小さな女の子が死神やってんのか? うそだろ。
「ねぇ、ノート返してよ!」
女の子、いや、死神が語気を荒げてきた。でも、こんなチャンス、二度とないはず!
「嫌だね」
「どうして?」
「オレは今どうしても殺したいヤツがいるんだ。そいつの名前を書かせろ!」
「何言ってんの?」
「これ、デ×××トだろ?」
「バカ」
かわいい死神はプッと噴き出した。
「それは近々死ぬ人の名簿よ。それを見て私たち死神は仕事するの。あなたが持ってても全然意味がないじゃん!」
近々死ぬ人の名簿・・・ んじゃあ、これに名前を書き込めば、やっぱそいつは死ぬってことじゃんか! やっぱこいつはデ×××トだ!
オレはジャケットの内ポケットからボールペンを取り出した。さっきの万引き野郎の名前を書こうと思ったのだ。が、ここで大事なミスに気付いた。やつらの名前がわからないのだ。これじゃあ、ぜんぜん意味がないじゃん。
「何やってんのよ! ねぇ、ノート返してよ!」
かわいい死神はいらついてきたようだ。
「嫌だ!」
オレはそれしか言えなかった。が、ここでいいことを思いついた。
「じゃ、お前がやつらを殺してくれよ?」
「殺す? 誰を?」
「さっき万引きして、店員を刺し殺した男子高校生だよ」
いや、店員が死んだかどうかまでは確認してないけど。
「知らないわよ、そんなの!」
死神はそう言い放った。つれないやつだなぁ。ま、あの事件のことなんか、知ってるはずがないよな・・・ やつは言葉を続けた。
「だいたい私は死神よ。悪魔じゃないの。死んだ人や死ぬ間際の人から命を奪うことはできるけど、ピンピンしてる人から命を奪うことは絶対できないわよ。
ねぇ、いい加減、そのノート、返してよ!」
ヤツはさらにイライラしてきた。でも、オレもこのまま引き下がる気は毛頭なかった。
「じゃあ、何か代わりのものを出してくれよ!」
かわいい死神は困ってしまったようだ。ちょっと考えると、こう言った。
「じゃ、1ついいことを教えてあげる。教えてあげるから、絶対ノート返してよ!
私たち死神は死にそうな人の前に行くと、まずその人がどういう状況にあるのか確認するの。
もし死ぬ間際だったら枕元に立つ。死んだら魂が抜け出すから、すぐさま回収できるように枕元に立つの。こうなったらもうおしまい。誰であろうと、死神を邪魔することは絶対できないわ。
でも、死ぬまでにまだ余裕があると見たら、足元に立つ。足元からマイナスのエネルギーを放って、ムリに命を縮めてやるの。それに他の死神に、こいつは私の獲物だってアピールにもなるしね。
そんな死神を見かけたら、こう呪文を唱えるの。
クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン!」
おいおい、なんだよそれ? どこかで聞いたことがある呪文だぞ。だいたいなんで1文字だけひらがなが入ってるんだよ。こいつ、オレをバカにしてるんのか?
「この呪文を唱えたら死神は強制的に引き剥がされるから、その人の命は護られるはずよ」
ほ、ほんとかよ? どう考えても眉唾もんだろ、それ。けどオレは、反射的にその呪文をつぶやいていた。
「クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン!」
次の瞬間、かわいい死神は消えてしまった。おいおい、なんだよ、これ? まじホンモノの呪文だったのかよ?
でも、デ×××トはオレの手に握られたままだ。あいつ、間抜けなやつだなぁ。大事なデ×××トを回収する前に秘密の呪文を教えちまうなんて。やっぱ子どもだったんだな。
このデ×××ト、大事に使わせてもらうぜ。オレは持ってたカバンにそのノートを仕舞い込み、意気揚々と歩き出した。