治らない副鼻腔炎】実は指定難病、嗅覚低下も20歳以上で発症、新薬の登場で劇的な回復期待
抗菌薬を服用してもよくならない、鼻茸(はなたけ)を取っても、取っても、また、出てくる……そんな“やっかいな副鼻腔炎”が注目されている。その名は「好酸球(こうさんきゅう)性副鼻腔炎」。
慢性副鼻腔炎の一種だが、これまで言われてきた私たちが知っているものとは別の病気だ。世界的に研究が進められているというこの病気の正体や、近年、使えるようになった新しい薬などについて、大阪医科薬科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室准教授の寺田哲也さんに聞いた。
病名は「好酸球性副鼻腔炎」
副鼻腔炎は鼻の奥からつながる空洞である副鼻腔の中で病原菌が繁殖し、炎症が起こっている状態をいう。しかし、今回取り上げる「好酸球性副鼻腔炎」は、副鼻腔で起こっていることこそ同じだが、病原菌に効くはずの抗菌薬が効かない。
副鼻腔炎のうち、鼻茸ができる慢性副鼻腔炎の患者は約20万人といわれているが、このうち、好酸球性副鼻腔炎の患者は約2万人(中等症、重症に限定した場合)とされている。
原因不明であり、治療が難しいことから、国の指定難病になっている。
「この病気と気づかないまま、つらい思いをしている人がいるとすれば不幸なこと。この機会に病気のことをよく知り、適切な治療につなげていただければと思います」という寺田さん。
好酸球性副鼻腔炎の特徴の1つは、鼻茸の形やでき方にある。鼻茸とは鼻の粘膜の炎症から起こるポリープのことだ。
一般的な慢性副鼻腔炎の場合、鼻茸は1個だけ(単房性)のことが多いが、好酸球性副鼻腔炎ではバナナの房のように、複数の鼻茸(多房性)ができている患者が多いという。「このため、鼻づまりの症状をより強く訴える。さらに、この鼻茸は手術で取り除いても、再び出てくることが多いのです」(寺田さん)。
副鼻腔から病原菌の死骸として出てくる膿の混じった鼻汁や痰も、一般的な慢性副鼻腔炎よりも、さらに粘度が高い。