私はテレビで 「紀行もの」 を見るのが大好き、その土地などに続いた風習や文化が地域の中で守られて今に繋がっていることに驚きを感じることが多い
しかし、中には悲劇的な風習が続いたことを垣間見ることもある
4日 「NHK BS プレミアム」 で21時から放映された 「雪紀行・岩手県遠野」 の物語には多くの感銘を受けた
その中でも特に忘れられないのが 「遠野に伝わる姥捨ての地・デンデラ野」 のことだった
「デンデラ野」 とは明治まで続いた悲しい風習で 『六十歳になった老人を捨てた野で、老人たちは日中は里に下りて農作業を手伝い、わずかな食料を得て野の小屋に帰り、寄り添うように暮らしながら生命の果てるのを静かに待ったと伝えられている』 とのことで、かっての山村の悲しい習いをうかがわせる
そのような行き帰りのことを 「ハカダチ」、「ハカガエリ」 と言うことも知った
食い扶持(を減らすために追いやられた老人たちは、亡くなるとこの場所へ埋められた。 「デンデラ野」 は墓場であり、ここへ来た老人は生きていても 「墓に入った故人」 として扱われたそうだ
飢饉になれば大量の死者が出た時代だから、やむを得ない事情があったのだろうか? でも、それはあまりにも悲しい文化の伝承でもあった
かつて民間伝承の棄老伝説を題材とした深沢七郎の作品 『楢山節考(』 を熟読したことがあったが、日本では他にも 「デンデラ野」 のような習いがあったのかもしれない
「デンデラ野」 に行かなければならない老人の心境、そしてその親を背負ってデンデラ野へ連れて行く役目の息子さんの苦悩を想うと、到底私などには想像も付かない複雑な親子の葛藤は如何ばかりであったであろうか?
そしてその息子さんも、次ぎは自分もその 「デンデラ野」 に行くことを知ったはずである
このような伝説の地 「遠野」 を一度は訪れて、かつての 「デンデラ野」 の悲しみを少しでも実感できればと思っているが、その願いが叶うことはまずないと諦めている
それにしてもあまりにも悲しさばかりが残る 「遠野・デンデラ野」 の物語だった
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