10/22余録 検察のパラドックス
「クレタ人のウソ」というパラドックス(逆説)は有名である。「クレタ人はみなウソつきである」と詩人エピメニデスは述べた。だが彼はクレタ人だった。さてこの言葉は、本当なのか、ウソなのか。どっちにしても矛盾が生まれ、頭を抱える。
だが三浦俊彦さんの「論理パラドクス」(二見書房)によると、「すべてのクレタ人はウソしか言わない」がウソならば、「クレタ人の中には真実を言う人もいる」だ。詩人はウソをついたということで、つじつまは合う。
さてこの「クレタ人のウソ」の「クレタ人」を「検事」と置き換えたくなる成り行きとなった。証拠改ざんの隠ぺい事件で起訴された大阪地検の前特捜部長と元副部長の2人は、検察が起訴内容だとするストーリーはみんなウソだと全面対決の構えを見せているという。
もともと郵便不正で無罪となった厚生労働省元局長を起訴した検察の虚構のストーリーに責任ある2人だ。だがそれに従った主任検事の証拠改ざんをめぐっては攻守所を変えた。うち一人が取り調べ可視化の必要に言及したのも「検事のウソ」を熟知しているからか。
もちろん現実はパラドックスでも何でもない。身を賭して真実を追求する検事もいれば、ウソをつく検事もいる。公益の代表の誇りが社会の正義を守ることもあれば、保身や出世欲が組織をゆがめることもある。「ウソ」の所在は、今後法廷で明らかにされるだろう。
この起訴に合わせて検事総長は国民に不祥事をわびた。検察もまた真実もいえば、ウソもつく人間の営みである。国民に信頼される検察は、その平凡な事実の上に立て直さなければならない。
「クレタ人のウソ」というパラドックス(逆説)は有名である。「クレタ人はみなウソつきである」と詩人エピメニデスは述べた。だが彼はクレタ人だった。さてこの言葉は、本当なのか、ウソなのか。どっちにしても矛盾が生まれ、頭を抱える。
だが三浦俊彦さんの「論理パラドクス」(二見書房)によると、「すべてのクレタ人はウソしか言わない」がウソならば、「クレタ人の中には真実を言う人もいる」だ。詩人はウソをついたということで、つじつまは合う。
さてこの「クレタ人のウソ」の「クレタ人」を「検事」と置き換えたくなる成り行きとなった。証拠改ざんの隠ぺい事件で起訴された大阪地検の前特捜部長と元副部長の2人は、検察が起訴内容だとするストーリーはみんなウソだと全面対決の構えを見せているという。
もともと郵便不正で無罪となった厚生労働省元局長を起訴した検察の虚構のストーリーに責任ある2人だ。だがそれに従った主任検事の証拠改ざんをめぐっては攻守所を変えた。うち一人が取り調べ可視化の必要に言及したのも「検事のウソ」を熟知しているからか。
もちろん現実はパラドックスでも何でもない。身を賭して真実を追求する検事もいれば、ウソをつく検事もいる。公益の代表の誇りが社会の正義を守ることもあれば、保身や出世欲が組織をゆがめることもある。「ウソ」の所在は、今後法廷で明らかにされるだろう。
この起訴に合わせて検事総長は国民に不祥事をわびた。検察もまた真実もいえば、ウソもつく人間の営みである。国民に信頼される検察は、その平凡な事実の上に立て直さなければならない。