皇居の落書き

乱臣賊子の戯言

サンケイ新聞オピニオンプラザ「皇室と宮内庁と国民」について

2004-10-09 00:31:32 | 皇室の話
 10月5日のサンケイ新聞に、「皇室と宮内庁と国民」をテーマとした論文が掲載されている。
 このようなテーマについて、いろいろ考える人が増えたのかと思うと、それはそれで喜ばしいことと思う。
 ただ、募集要項中の「日本の天皇制は歴史からの贈り物であり、天皇は世界の宝物と言われます。」ということについては、あたかも当然の前提として、論が組み立てられているようだ。
 筆者としては、歴史からの贈り物であるとか、世界の宝物ということについては、まさに主観的な価値観の話だと思うので、それぞれの論者が、なぜ、そのように確信したのかということを語って欲しかった。日本の歴史における天皇制について、どのように素晴らしいと感じたのか。
 日本における状況を変えるためには、一人一人の、そのような素晴らしいと感じたことの体験を表明し、共有することこそが、大切なのではないかと思う。
 もちろん、筆者としても、「日本の天皇制は歴史からの贈り物であり、天皇は世界の宝物と言われます。」ということについては否定するものではないが、本来、客観的な事実というよりは、主観的な体験として捉えるべきではないかと思う。
 そして、心を動かされたという具体的な体験こそが、社会を変える力になると思うのである。
 なお、「世界の宝物」という表現についてであるが、確かに、皇室は、世界においても貴重な存在であろう。
 しかし、皇室のすばらしさは、やはり日本人との関係においてこそ、まずは成り立つものであり、日本人以外との関係においてそのすばらしさを主張することについては、謙虚であるべきだと思う。
 例えば、子供にとっては、自分の父、母が、世界最高の父、母であると言うことができよう。
 しかし、他の子供にとっては、やはり、その子供の父、母こそが、世界最高であろう。
 特定の関係、絆における価値観と普遍的な価値とを、混同することは、ナンセンスだと思うのである。
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欠けているもの

2004-10-06 00:45:32 | 皇室の話
 皇室について考える場合、今一番、大事なのは、皇室というお立場への想像力であろう。
 日本建国と密接に関わり、125代の長きに渡って、日本人と共に歩んだ、そのような歴史を背負ったお立場とは、いったいどのようなものであろうか。
 くだらない憲法学者などは、「象徴にすぎない」と、自らの無責任、無教養をさらけ出すような発言を平気で行うが、象徴であることとは、いったい、どれほど大変なことなのであろうか。
 もちろん、陛下のご境遇については、完全に理解できるはずもなく、どこまでも想像にすぎないのであるが、それでも想像をしてみると、なんともたまらない気持ちになるのである。
 とてつもない責任感、現在の日本人だけでなく、過去の無数の日本人たち、そして未来の無数の日本人たちへの責任感を常に感じざるを得ない、崇高であるが、とてつもなく孤独なお立場であるに違いない。
 そして、不十分ながらも、そのような想像をしてみると、陛下のご公務一つ一つが、実に胸に迫ってくるのである。
 陛下のご公務について、陛下が背負われているお立場に対する想像力というものを、まったく働かせずに理解するということはできないであろう。
 もっとも、想像力というのも、各人程度に差があるわけであり、深く働かせることができれば、それだけ深く理解することができる。
 また、ここに、皇室というご存在の深みがあるとも思うのである。
 さて、そうなってくると、現在の日本人において、肝心なのは、皇室に対する想像力ということになるのではないかと思う。
 この点について、皇室を大事に思う人々の中においても、どれくらいの認識があるのだろうか。
 日本会議など、筆者が期待している団体においても、皇太子殿下のご発言以降、皇室のあるべき姿についての議論が見られるが、皇室のあるべき姿については、皇室の方がもっとも問題意識を有している課題なのであって、広く国民に訴えるのであれば、皇室に対してどのような捉え方をするか、想像力を働かせることの重要性を説く方が有意義ではないかと思われる。
 皇室は無私なる存在であり、エゴによりその在り方を決めるものではなく、国民の求めるところを感じ取って、国民の求める方向で、自らの在り方を定めるものである。
 したがって、今重要であるのは、皇室というご存在に対する自覚を喚起することであり、それなくして、自らの考えに基づく皇室の在り方を一方的に主張するというのでは、皇室の方々が、あまりにお気の毒である。
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