新しい風を 起こそう!   ~日本をよい国に~

一人ひとりの願いを大きな風に変えて・・・
今 動き出そう!



 

稲むらの火

2009-07-27 07:30:03 | 日記
水分を含んだ空は、抱えきれなくなった雨を、今日も地上に落としている。
毎日よく降る。

各地では、大雨による災害も起こっている。
災害が起こるたびに、思い出す話がある。

「稲むらの火」

ご存じだろうか。

現在の和歌山県広川町、江戸時代にあった本当の話である。

修身の教科書にも取り上げられていたという「稲むらの火」を紹介しよう。


    

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江戸時代も終わりに近い安政元年。紀伊半島を大津波が襲った。
「これはただごとではない」
とつぶやきながら、五兵衛は、家から出てきた。地震だった。
長くゆっくりとした揺れ方。腹に響くような地鳴り。
年老いた五兵衛もかつて経験したことのない不気味なものだった。

五兵衛は、高台にある自分の庭から、下の村を見下ろした。
村人たちは、豊年を祝う祭りの支度をし、地震をさほど気に掛けない様子だった。

五兵衛は、ふと海の方に目をやった。
そして、思わず息をのんだ。
大波が、風に逆らって沖へ沖へと動いていき、そのあとを追うように、海水で見えなかった砂原や岩底が、ぐんぐん広がっていくのが見えた。
「大変だ。津波が来る」
「このままでは、村人がひとのみにされてしまう」

五兵衛は、大きな松明を持って、家を飛び出した。
そこには取り入れたばかりの稲の束を積み重ねた“稲叢(いなむら)”が並べられていた。
農民にとって、命の次に大切なものだった。
「これで村人の命を救うしかない」
五兵衛は、いきなり、稲むらの一つに火を移した。
次々に、五兵衛は、すべての稲むらに火をつけたのだ。

日はすでに没していた。
次々と燃える稲むらは、天を焦がしていた。
「火事だ。庄屋さんの家が火事だ」
村人は、急いで高台へ向かって駆け出した。
駆け上がってきた若者が、火を消そうとすると、五兵衛は、大声で止めた。
「火を消してはならぬ。村中の皆に、少しでも早くここへきてもらうんだ」
村人は、命がけで育てた稲が燃えている様と、これまでにない厳しい目をした五兵衛の表情を不思議そうに見つめていた。

その時、五兵衛は、力いっぱいに叫んだ。
「見ろ。やってきたぞ」
五兵衛が指さす方に目をやると、暗い海の彼方に白い一筋の線が見えた。
その線がどんどん太くなり、一気に押し寄せてきた。
「津波だ」

村人は、波にえぐり取られ、跡形もなくなった村を、呆然と見下ろしていた。
稲むらの火は、風にあおられて、また燃え上がっていた。
初めて我にかえった村人は、自分たちがこの稲むらの火のおかげで救われたことに気づき、五兵衛の前にひざまづいて、手をあわせるのだった。
コメント (2)
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