今週発行（１０月23日）の「南方週末」等に拠れば、河南省新鄭市で飲食店を営んでいるある経営者が、同じ河南省鄭州市から箱半分の塩（具体的にどの位の量かは不明）を持ってきたそうです。この経営者は元々鄭州市で飲食店を開いていたそうですが、訳あって薪鄭市に引越し、店を再開し、それで新鄭市の店で、鄭州市から持参したその塩を使ったとの事。
ところが、今年の１０月１５日に、「地域を越えて塩を使用した」と判断され鄭州市の「塩業管理局」の検査員により罰金２００元を徴収されたそうです。「河南省塩業管理条例」の規定では、商売を営む者は、必ず所在地の食塩販売業者から塩を買う事が義務付けられており、この人は鄭州市で買った塩を、地域を越えて今住んでいる新鄭市の自分の店で使ったので、この規則に違反したとして罰金を科せられたようです。
私も、このニュースはTVで見たのですが、このニュースは中国中央TVでも放送されて大きな反響を呼んだようです。そもそも新鄭市は鄭州市が管轄する県級の市の一つであるので、云わば同じ地域に属するので、「地域を越えて」と云う判断は当てはまらないのではないかと云う様な疑問も起きた様です。また、罰金を科すと云う事がはたして適当かどうかも問題視された様です。日本等でも良く在ることですが、このニュースが中国中央TV等で報じられると、鄭州市塩業管理局は直ちに謝罪して、罰金として徴収したお金も本人に返却したそうです。
一方、この事件をきっかけにして改めて、国家による塩の専売制度について、いろいろ批判も起きているようです。南方週末に拠れば、現行の食塩専売制度は２０年前に作られたそうです。その目的の一つは、１９９４年国務院が「食塩専売制度」に関する文書を公布して、９４年公布された文書の中で「２０００年迄にヨード欠乏症を無くす為の計画」「食塩にヨードを加え、ヨード欠乏症の危険を排除する管理条例」等が定められたとの事。その後１９９６年に「食塩専売管理規則」と云う法令が公布され、食塩にヨードを入れる事が義務付けられ、現在に至っているそうです。
実は、私も中国では、食塩を買うたび「ヨード」が入っているので不思議に思っていました。最近大理古城内のスーパー等ではオーストリア産の自然塩に近い塩も売っているので、近頃はそのオーストラリア産の塩を良く買うのですが、必ずヨードが入っているので不思議に思っていたのですが、中国で販売される塩はヨードが添加される事が法律で義務付けられているとは全く知りませんでした。
私が貴州省に初めて足を踏み入れたのは2000年の事です。その頃貴州省の少数民族の住む奥地に行くと、市の立つ日等には、甲状腺肥大の人々を時々見かけたものです。２０１０年に、日本から貴州省貴陽に越してきてからも少数民族の住む村々を度々訪れていたのですが以前と比べると殆ど甲状腺肥大の人を見かけなくなりました。私は全く知らなかったのですが、甲状腺肥大の人が減ったのは、この様な事情があったようです。物の本などに拠れば、日本では海草などを良く食べる事もあり甲状腺肥大の症状は殆ど見かけないとの事です。
また、塩で思い出すのは、２０１１年福島の原発の事故の際に、雲南省でも塩の買い占め騒動が起きた事です。私は、その時丁度雲南省を旅行していたのですが、原発事故の事は実は全く知りませんでした。中国でも日本での原発事故のニュースが報じられる様になると中国各地ででは塩の買占め騒動が起きたのでした。その頃偶々雲南省の店で買物をしていたところ、多くの人が塩を３，４袋とまとめて買っていたので不思議に思ったものです。中国の塩にはヨードが添加してあるので、皆先を争い塩を買った様です。
良く知られている様に中国では塩の生産、販売は伝統的にその時々の王朝により独占されて来た様ですが、現在では塩に拠る国税収入は国家税収の僅か0.004％を占めるのみとの事。確かに塩は中国では大変安く、私が良く買うオーストラリア産の塩も2５０グラム入りで4.6元程です。中国産の化学的に製造された塩は２元程ですから、現在では塩に拠る税収は、たかが知れているのかも知れません。
河南省新鄭市とは、国際空港がある場所で、私も何度かここから上海などへ飛行機で行った事があります。新鄭市とあるので、別の行政区かと思っていたのですが、新鄭市が鄭州市が所轄する県レベルの行政区とは知りませんでした。
「南方週末」と云う毎週発行される新聞は、昨年までは大理鎮で買う事が出来たのですが、現在ではこの新聞を含め大理鎮では新聞は買うことは出来ません。今日偶々大理市内に行ったので、南方週末を買ったのですが値段も一部5元に値上がりしていました。（注：以前は4元）
