IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

漫画のチカラ

2005-02-27 15:03:37 | ニュース
今日は久しぶりに疲れがどっと出た1日だった。午前中に3回電話がかかってきたんだけど、11時頃まで頭が完全に眠ってしまっていたため、それぞれの電話で何を話したのかほとんど覚えていない有様。3人のうち1人は最近ブラジルの親戚の家から戻ってきたとかで、(僕の記憶が正しければ)ブラジルでの出来事を楽しそうに話していたようだけど、何を話したのか全く覚えていないのだ。明日会った時に、何の話をしていたのかあらためて聞いてみようかと思っている。

昼過ぎから少しずつ引越しのための荷作り作業をしたり、アパートのロビーで近所の人達とコーヒーを飲みながら世間話をしていたのだが(この頃になって、ようやく目が覚めた感じだ)、夕方になって書店に行き、新しい本を2冊購入した。今月購入した本はこれで4冊になるけど、なかなか面白そうな本がいくつも発売されており、久しぶりに書店めぐりを満喫しているのだ。数週間前に購入した2冊の本は、アメリカ人作家が書いた日本の野球に関するルポとカリフォルニアの社会学者によるアメリカ人の「恐怖心」に関するものだったが、今回はまた別のテーマのものを選んでみた。

1つはBBCの女性記者が書いた「知っておくべき50の事柄」という本で、これは意外と重要な事実でありながら普段ニュースで見過ごされがちなテーマについて書かれた物だ。この本はまだ読み始めていないから、詳しいことは書けないが、目次を見て購入を決めてしまった珍しい例でもある。例えば、アメリカでは週平均で88人の高校生が学校に銃を持ってきたとして退学処分になっているらしい。高校生と銃の問題って、そう言われてみると最近はあまり議論にすらならない話題だったと思う。

コロンバイン高校で2人の学生による銃撃事件が発生した際には、マイケル・ムーアの映画でも少し描かれていたけど、学生がナイフを学校に持ってきた事ですら大きなニュースとなっていた。コロンバインの事件がもう何十年も昔の事にすら思えてくるが、実際には未成年が関与した銃犯罪は今でも毎日のように発生していて、ここワシントンでも高校生が射殺されたなんていうニュースは日常茶飯事だ。僕はニュースがある意味で生鮮食品と同じだと考えていて、それぞれのテーマやストーリーには「鮮度」ってやつが存在すると思っている。現実には銃問題は何も解決されていけど、ニュースのバリューが一時期と比べると落ちている事は否めない。昨日購入した本を読むことで、僕が最近忘れかけているものを思い出せるかなぁと少しだけ期待している。

もう1つは、なんと漫画本なんです。これは「ブッシュ・ジュンタ(ブッシュの軍事政権)」というタイトルで、25人のカートゥニスト達がブッシュ政権をテーマに描いたエピソードを集めた短編集となっている。テーマはバラエティに富んでおり、ブッシュ祖父のナチスとの繋がりや、ブッシュやブッシュ・シニアがメンバーだとされるエール大学秘密クラブにまつわる話、チェイニー副大統領やライス国務長官にまつわるエピソードも収められている。この本、ノンフィクションとして販売されており、それぞれのエピソードに用いられる活字量が本当に多い。僕が持っていた漫画というイメージはこれには当てはまらず、むしろ挿絵の多いノンフィクション作品とでも言うべきではないだろうか?

あるエピソードには、生活苦のために国境を超えてアフガニスタンに渡り、パン屋を細々と経営していたパキスタン人男性が主人公となっていた。実在するこの男性は、アフガニスタンで北部同盟に拘束されてから米軍に引き渡され、キューバのグアンタナモ収容所に昨年まで収監されていた。米軍は男性とアルカイダやタリバンに何の接点も見出せず、最終的に釈放を決定したわけだが、パン屋の彼が捕まった理由は何だったのか?彼の焼いたパンをタリバン兵士が食べていたら、それはブッシュ大統領が言う「テロリストへの援助」になるのだろうか?米軍のアフガニスタン侵攻後、多くの人が「悪い時期に悪い場所にいた」事でグアンタナモに送られているが、真実が明らかになるのはまだまだ先のようだ。

活字で何かを伝えたり表現する事をメシの種にしている僕にとって、漫画という媒体は非常に羨ましくも思える。もちろん、書き手によって色々と変わってくるのだろうが、活字で美味く表現しきれない細かなニュアンスを1コマの絵が全て物語ってくれている事がある。羨ましい、本当に羨ましい。「ブッシュ・ジュンタ」ではチェイニー副大統領に触れたエピソードもあるのだが、話の最初の部分に印象的な1コマがあった。スーツを着てアメリカの国旗を両手にした猿の人形の手足には糸がついており、その糸は舞台の後ろからこっそりと引っ張られていた。ただただ、これだけの絵なんだが、ブッシュとチェイニー(カール・ローブでもいいかな)の関係を一瞬で表した好例ではないかと思う。

誤解を恐れずに言えば、10ドルの貸し借りを巡って殺人事件が発生してしまう世の中で、次のニュースはなかなか気分爽快なもの(関係者の方、不謹慎でスミマセン…)。ヨーロッパで最も忙しい空港の1つとして知られるオランダのスキポール空港で、26日に宝石強盗事件が発生している。スキポール空港警察が英ガーディアン紙に語ったところでは、現地時間の午前10時過ぎにKLM(オランダ航空)所有の輸送車が強盗の待ち伏せにあい盗まれたとの一報が入ったらしい。輸送車は空港近くの町に乗り捨てられており、車内にあった宝石類のほとんどが盗まれていた。盗まれた宝石の総額に関しては様々な情報が飛び交っているが、総額1億米ドルに達するという情報もあり、現地警察は捜査活動に必死だ。

事件は空港内で発生しており、事件当時は周辺に多くの目撃者もいた模様だ。貴重品を運ぶ輸送車には武装した警備員らが乗車していたが、警備員らに怪我はなかった。盗まれた宝石類はロンドンにある宝飾店所有のダイヤモンドだったようで、この店の経営者はガーディアン紙に「計画は何ヶ月も前から練られてきたのではないだろうか」と語っている。幸運な事に、盗まれた宝石類には保険がかけられているそうで、ダイヤモンドには品番が刻まれている事もあり、強盗グループが正規の業者に売りさばくのは困難なものと見られる。

1960年に女優ソフィア・ローレン所有の宝石類(総額200万ポンド)を盗んだ事のあるピーター・スコット氏もガーディアン紙の取材を受けており(中途半端な犯罪専門家に聞くよりも、こういった大御所に聞いたほうが確かに説得力はある)、犯人グループは盗んだ品物をなかなか売りさばく事ができないだろうと予測している。番号が刻まれた上に、盗品の額自体が大きいため、なかなか買い手が見つからないというのだ。スコット氏は、ソフィア・ローレン所有の3つのネックレスを盗んで売却したが、総額200万ポンドの宝石類は30万ポンドででしか売れなかったのだという。宝石を持って自首して、それから刑務所かどこかで自伝でも書いたほうが、よっぽどカネになるのでは?犯人グループも今頃後悔しているのかなぁ。

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