IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ボイルストン通り116番地

2005-08-29 14:06:20 | イラク関連
超大型ハリケーンがニューオーリンズの町を直撃するようで、全米のメディアが観測史上最大規模のハリケーンの到来をパニック気味に伝える中、僕は昔よく遊びに行ったボストン市内のクラブの事を思い出した(不謹慎なのは百も承知だけれど…)。ビッグ・イージーというルイジアナ風ナイトクラブがボストン・コモンの近くにあって、僕が通っていた大学院の建物からもそれほど離れていないため、夜遅くにニュース原稿を書き終えてそのままクラブへ直行した事も度々。あの雰囲気(というか、マルディ・グラです。強いえて言えば…)が好きでニューオーリンズに行こうと決心したものの、未だに行く機会に恵まれず、今回のハリケーンで有名なフレンチ・クォーターがどうなるのかが少し心配だ。ビッグ・イージーの他にも、うちの学校周辺にはプラウダ116カプリスといった思い出の場所も多い。そう考えながらウェブを見ているとプラウダが潰れて、ジプシー・バーという新しい店がオープンしていた…。来週ボストンに行くけれど、どれだけの思い出の場所が残っているのだろうか。

肥満が深刻な問題となりつつあるアメリカでは、肥満症と診断される人の数が毎年増加し続けており、各州の医療関係者らもその対策に頭を悩ませている。しかし、昨年度の肥満症増加率に目を向けると、オレゴン州だけが全米で唯一肥満率の増加しなかった州となっており、ダイエット専門家らもオレゴンのケースに注目し始めている。ワシントンDCにある医療調査期間の報告書によると、オレゴン州の肥満率は昨年度も21パーセントから上昇する事が無く、1年間で1.5パーセントも上昇したアラバマ州(27.7パーセント)と比べると、その違いは一目瞭然だ。複数の専門家はオレゴン州各地で見られる都市デザインに注目しており、自然が多い中で自転車通勤(通学)を行う市民が多い事実が肥満症を未然に防いでいるのだと指摘する。

ポートランド市民の約10パーセントが自転車通勤を行っており、同様に自転車通勤が一般化した町としてコロラド州ボールダーがある。コロラドは全米で最も「スリムな州」として知られており、州内の肥満率は16.4パーセントに留まっている。「肥満解消のためマラソンに挑戦するのもいいですが、もっと身近な所からスタートするのもいいでしょう。エレベーターの代わりに階段を使ったり、自転車通勤をするのも効果的です」、前出の調査機関で報告書製作に携わったマイケル・アール氏はAP通信の取材にそう語っている。アメリカの多くの町では、徒歩や自転車ではなく車を使わなければ通勤できない場合がほとんどだが、これが毎日の運動機会を減少させる原因ともなっている。

「健康な国への処方箋」の著者で肥満症の専門家でもあるトム・ファーレイ氏は、ジムに通って体型維持につとめるアメリカ人の多くを例に挙げ、肥満症防止に本当に効果的なのは徒歩や自転車といった日常生活の中での運動なのだと語っている。ポートランド市で公務員として働くリンダ・ギネンサルさんは、自転車通勤を欠かさず行っており、自宅から職場までの約6キロを毎朝走っている。ギネンサルさんのような自転車通勤者が多い理由として、ポートランド市が自転車にやさしい都市開発を行った事も挙げられるが、市側による自転車通勤奨励キャンペーンも少なからぬ役割を果たしているようだ。ポートランド市で働く公務員には、通勤の80パーセント以上を自転車で行えば毎月25ドルのボーナスを得れるインセンティブが用意されており、市側が率先して自転車通勤の普及を試みている。米農務省の調査では、オレゴン州にある農場の数がこの30年で50パーセントも増加しており、自転車通勤に加えて健康な食生活も肥満防止の大きなファクターとなっているようだ。

ブッシュ大統領所有の牧場がある事で知られるテキサス州クロフォードに土曜日、数千人のデモ隊が集まった。全米各地から集まったデモ隊のほとんどはイラク戦争支持派で、同じくクロフォードでは息子をイラク戦争で亡くしたシンディ・シーハンさん主導の反戦デモも行われている。クロフォードで反戦デモを続けるシーハンさんは一躍時の人となったが、先週カリフォルニアでは反シーハン・キャンペーンが戦争支持者達によって組織され、このキャンペーンに参加した約1500人がクロフォードに集結した。戦争支持派は「ここから早く立ち去れ、シンディ」とチャントを繰り返し、反シンディ・キャンペンを企画した元カリフォルニア州議会員のハワード・カローギアン氏は、「彼女の行動はアメリカの敵に勇気と希望を与えるだけだ」とAP通信の取材に語っている。

シーハンさんら反戦デモのメンバーはブッシュ大統領所有の牧場からそれほど離れていない場所で抗議活動を行っており、昨年イラクで戦死したシーハンさんの24歳の息子にちなんで、周辺はいつの間にか「キャンプ・ケーシー」と呼ばれ始めている。デモ参加者と「(戦死者を出すのは)もう十分!」と叫ぶシーハンさんはCBSの取材に答え、「このキャンプ・ケーシーで行われている運動が、イラク戦争終結につながってくれると確信しています」と語った。シーハンさんの団体が反戦デモを展開する中、戦争支持団体「プロテスト・ウォーリアー」のメンバー2人がキャンプ・ケーシーに現れた。2人は「民主党から大統領が出ない限り、戦争反対とでも叫んでおけ!」と書かれた横断幕を手にしており、これを偶然通りかかった別の戦争支持団体のメンバーが見つけ、反戦団体と間違われた2人の横断幕が破られるハプニングも発生している。

シーハンさん達の反戦デモは8月31日にいったん終了し、メンバーの一部は全米を各地を回りながら反戦デモを行う予定だ。クロフォードで5週間の夏休みを過ごすブッシュ大統領は、シーハンさんの気持ちを理解する事はできるとしながらも、シーハンさん個人とと面会する予定は無いと語っている。シーハンさんは昨年イラクで息子を失った2ヵ月後に、他の遺族達と一緒にブッシュ大統領と面会しているが、当時はまだ反戦キャンペーンなどは行っていなかった。ブッシュ大統領の夏休みは9月2日に終了する。今月初めにCNN/USAトゥディ/ギャロップの3社が共同で行った世論調査では、回答者の33パーセントが米軍はイラクから今すぐ全面撤退すべきと答えており、撤退を支持する声は過去最高のものとなっている。

いよいよ「カトリーナ」がニューオーリンズの町を直撃する。すでにルイジアナ州や隣接するミシシッピー州では非常事態宣言も出され、周辺のハイウェイでは脱出を図る市民の車で日曜朝から大混雑が続いている。そんな中、ブッシュ大統領は今も夏休みをエンジョイしているようで、9月2日までのバケーションをキッチリと使い切る魂胆なのだろうか?この「カトリーナ」、風速が1時間に160マイル(約256キロ)で、ハリケーンとしては最大級の「カテゴリー5」となっている。「カテゴリー5」のハリケーンがアメリカに上陸した例は過去に3度しかなく、またニューオーリンズ市の70パーセントが海抜ゼロメートル以下にあるため、大きな被害が予想されている。また、3日後にワシントン周辺を通過する可能性も少なからずあるそうで、こちらでも天気予報を欠かさずチェックする日が当分続きそうだ。

*(写真)28日にニューオーリンズを脱出する市民の車列-ロイター通信より

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