練金術勝手連

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※ 練金術(ねりきんじゅつ)とは『週刊金曜日』練馬読者会的やり方という意味です。

     ◆◆◆ 新時代の「日本的経営」 ◆◆◆

2008年10月02日 | 参考資料
 (社)日本経団連は1995年、財界の意向として、労働者を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3つのグループに分け、労働力の「弾力化」「流動化」を進めることで、総人件費を切り下げて、利潤の最大化をもとめる提言『新時代の「日本的経営」-挑戦すべき方向とその具体策-』をおこなった。規制改革の名目を掲げ、戦後、使用者を規制することで守られてきた働く者の権利や獲得物を、引き剥がして、自ら利益の源泉とするものだ。
 その強烈な一撃とも言うべきホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制撤廃制度)の攻撃が厚生労働省の審議会にかけられると、さすがにその本質は「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」であるとして、陽の目を見させなかったことは記憶に新しい…。
 しかし2008年の今、“名ばかり管理職”や“なんちゃって正社員”の現実(正社員ワーキングプア)をよくみれば…。それは、ホワイトカラーエグゼンプションの実体化にほかならなかった。

 一方、もともと禁止(職業安定法)されていた“ピンハネ稼業(間接雇用)”が、1986年労働者派遣法により陽の目を見た。99年改正で対象業種を大幅拡大、原則自由となり、製造業派遣が解禁されたのは04年。06年改正を経て今や“貧困ビジネス”を展開する製造業派遣業者と、それを利用して使い勝手のよい労働を手に入れた日本を代表するグローバル製造業は、働く者を踏み台にしてWin-Winの関係となっている。

 都合よく“柔軟”に、“弾力的”に使い捨てが前提の激安労働力である非正規ワーキングプアと、正社員ワーキングプアは、じつは同じ“第3グループ”の双子の兄弟だったのだ。

 この「本」は、なぜか入手しにくくなっているようだが、雇用・労働(時間)・賃金制度の破壊はとどまることなく続いているいま、“ネオリベラル”なこの国のありようを考えるとき、出発点のひとつとなる確かな(資料)だ。

 ●『新時代の「日本的経営」-挑戦すべき方向とその具体策-』
   新・日本的経営システム等研究プロジェクト編著/1,325円/日本経営者団体連盟/1995

(練金術師)