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ピタゴラ「不思議」スイッチ

ヘタレ霊能者朋(tomo)の幼い頃からの心霊体験話をここで載せています。

摩訶不思議100話 第50話 「ホワイトアウト」

2008-12-29 23:47:02 | 摩訶不思議100物語 & 補足
こんばんは。

ここでは、普段のおちゃらけた成分が98%入ったtomoモードで進めております。しかし、内容はマジです。

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それは、まだ私が穂高山麓に連れてきてもらえた年の冬だったと思います。兄と私で、あずさに乗り、祖母の家に行きました。当時はまだ、改築もしておらず、土足のまま祖母たちの部屋に行くことが出来ましたし、竈も本格派竈で、そりゃ、殆ど土足でした。農家ですからね。有難かったんだと思います。

私が、異変に気がついたのは、ある夜でした。
冬はコタツをつけて、四方から足を突っ込んで寝ます。そのコタツの中には練炭が入っていました。今考えると、危ないですが、当時はそんなもんで、足だけ突っ込んでぬくくなって、布団で寝るんです。家全体を暖めるという概念はありませんから、未だにあそこの家は改築しても、立派に「エアコン」無しです。

夏の暑い盛りをエアコンなしで過ごせるということは相当風通しがいいのですが、昔の家では、大きな雨戸を閉めて歩きました。そして、家の前には凄い送り主にいわくのある石が置いてあるんですが、従兄弟にとっても私にとっても、兄にとっても、そこは「乗り物」でしかありませんでした。

それが小学校1年か2年だったと思います。ある冬の夜、初めて二人で招待されて兄といったのですが、そのあずさに乗った後、どういうわけか、乗り換えた先の大糸線では夕暮れでした。着いたころはとっぷりと日がくれ、私は大糸線のある駅辺りから、同じスピードで駆けてくる人をぼんやり見ていました。

「早いなぁあの人。まぁ、この電車遅いから。」

特急あずさに乗れば大糸線は確かに各駅停車で遅いでしょうけれど、その時は何も疑問に思いませんでした。そしてついて、祖母たちに挨拶をして、寝る準備が整って、寝付けないときにふと声が隣の部屋でしたのです。

「tomoちゃん。おいでよ。tomoちゃん。」

私は、少々そのコタツに足を突っ込む寝姿に疑問を持っていて寝付かれなくて、ふと気がつくと、みんな寝ていました。兄も、念のためと称した叔父も寝ていました。

なもんで、こっそり、その部屋に行きました。すると、その部屋は玄関の大広間でした。そこには誰もいなくて、声は外から聴こえました。私は、そのまま、誘われるように外へ出ました。鍵は捻ってねじ込んでいくものだったので、鍵を開け、ちょっと隙間を作って外に出ました。寒かった。寒かったのでどうしようかと思ったその目の前には、沢山の人がいました。

みんなうつむいていました。顔色が白くて、どうしたんだろうと思いました。登山のような格好をしていました。私は、何を考えたのか、「この人たちは、これから山に登りに行くんだ」と思ったのです。

「行くんだね。行ってらっしゃい。」と言いかけた時、一人の人がこちらを向きました。猛烈に白い顔で、まぶたが凍っています。父の持っているロシア音楽のレコードに厳寒地帯に行くとまぶたが凍るという写真が載っていました。外って凄く寒いんだなと思いました。

「tomoちゃん、山に行かない?」

と誰かの声がしました。

私は咄嗟に「明日なら行けるよ。けれど、今日はもう寝るの。お休みね。」と答えました。何も考えていなかったし、素直にその言葉を言いました。

「そうなんだ。行かないんだ。tomoちゃん。一緒に山に行こうよ。」

かなりその時に短気だった私は言いました。

「私、行けないの。だって叔父さんがいいって言わないし、寝ているんだもん。一人でいなくなったら怒られるもん。」

「tomoちゃん。じゃぁ、私たち行くよ。けれど約束して欲しいの。遭った事、誰かが知ったら、必ず言って伝えて。有明神社にいるよって。」

「え?行かないで神社で寝るの?」

「tomoちゃん。私たち困っているの。山に行ったきり帰れないの。」

私はその時寒くて眠かったので答えました。

「分かった。明日おばあちゃんに言っておくね。じゃぁ寒いからお休み。山がんばってねー。」

そう言って私は、目の前の沢山の人を見て手を振って、引き戸を閉めて鍵をかけてそのまま布団に入って寝ました。

その晩、こんな夢を見ました。

自分が冬山を歩いています。けれど、いきなり吹雪になってしまった。どうしよう、どうしようと思いました。その瞬間、真っ白な吹雪が舞い上がった後、私は山ではなくて、広い原にいました。倒れていました。自分の周りを即座に見ました。どこから来たんだっけ?
しかし、その原は、広く、私の足跡は何一つ無く、ただただ、太陽も無く白い平原でした。どこへ行ったらいいの?どこから来たの?どうやって家に帰ればいいの?
さっきまで登っていた山はどこに行っちゃったの?私どこまで飛ばされたの?
どうしたらいいの。おなかすいたな。食べるもの無いかな。あっ、背中の荷物も無い。私、食べるものもないんだ。どうしたら、帰れるのかな。山に登っていた山はどこなのかな。空も地面も真っ白で何も見えない。お母さん。おなかすいたよ。お母さん、寒いよ。おとうさーん。おにいちゃーん。涙でた。あっ痛い。涙凍るんだ。そうだ、さっきの人凍ってた。涙出しちゃいけないんだ。ここ、どこなんだろう。わかんないよ。わかんないよ。どうしたら出れるの?なんだか苦しいな。寒いからかな。頭が痛いよ。おかあさん。寝ちゃってもいいのかな。段々眠くなってきたんだよ。お母さん。ここどこか分からないし、足が痛いの。でも、眠くなっちゃった。おかあさーん。でも眠いし頭が痛いからお休みなさい。

その時、私の寝方に異常を感じた叔父が即起きてきて私を強引に引きずりました。私は、練炭の入ったコタツの中にもぐりこんでしまったようでした。苦しくて、寒くて、何も見えない。泣きじゃくる私に叔父が言いました。朝になるよ。tomo。朝だよ。tomo。少しだけ頑張って息を吸ってごらん。

そしてその日のうちに祖母の前に連れて行かれ、私は祖母に見たことを打ち明けました。「有明神社に連れてって、おばあちゃん。みんな凍えているの。寒いの。」

祖母は、顔が青くなって、そうしてしばらくトラクタに乗せられて連れて行かれたのが、有明神社でした。その時私は腰を抜かしました。沢山のあの晩の人がそこにいたのです。祖母は黙って黙祷して、私に黙祷するように言いました。

「あの人たち、声出さないんだよ」と言うと、祖母は黙って言いました。

「みんなは寒すぎて声が凍ったんだよ。大丈夫だよ。春になれば、必ず見つけるから。そうして、家に帰してあげるから。だからtomoは、ちゃんとお祈りをしなさい。ちゃんと言いなさい。自分はまだ子供で何も出来ないんだと。連れて行かないでくれと。」

「ちゃんと断ったよ。」

「ばか者。練炭の中にもぐりこんで何を言うか、お前は。」祖母は、一生懸命その後、黙祷し、呟いていました。「この子は連れて行かないでください。お願いします。春になったら約束します。だから、今この子を連れて行かないでください。」祖母は一生懸命泣きながら祈っていました。

すると大勢の人が、そしてその神社の裏手の上り口に行き始めました。ひとり消え、一人消え、そうして、みんな消えました。最後に「tomoちゃん。一緒に行けなくて残念だったけれど、おばあちゃんに伝えてくれてありがとうね」という声を残して。

私はその晩から、コタツ組をはずされ、単品で湯たんぽを足に入れてもらって寝ることになりました。祖母と祖父とがいかめしい顔で話をしていました。そうして、いきなり餅つきが始まって、私はお餅を臼と杵でついてもらって食べて、当初の予定通り2泊3日で、目黒の家に帰りました。

母は涙ぐんでいました。父は、帰ってきた私を、抱っこしてくれました。でも、誰もそれ以上言いませんでした。

それから、私は決して冬山のときには祖母の家に呼ばれなくなりました。春先になって呼ばれるようになりました。

私は、その後祖母が何をしたのか知りませんが、祖母が母に電話で、「あの子の感受性の鋭さには冷や冷やする。あの子はきちんと育てなければいけないよ。」と言っているのは知りました。お金が無い家だったんですが、普通の家でもあまり電話が無かった時代に、家には電話がありました。

けれど、あの時叔父が気がつかなかったら、私は練炭の中で苦しくなって亡くなっていたのかもしれません。呼ばれて断ったつもりではいたけれど、連れて行く気はあったのでしょうか。

あの時の祖母の真剣な顔は忘れません。そして、あの時見たホワイトアウトは、私の中で恐怖心として残り、結果的に、主人の弟に苗場に連れて行かれるまで、私はスキーを拒み続けました。父も母もスキー場に連れて行こうとは決して言いませんでしたし、スケートは代々木かどこかのスケート場だけでした。

冬山で無謀な登山をする人が多いです。あの瞬間を、明晰夢に一度見れば、そんな気が起きないだろうなと思います。ホワイトアウト。真っ白な空と陸の境も無い、ただ白い世界。足跡も、行く先も分からぬ世界。あの銀の世界に取り残された時、寒さで麻痺し、眠くならなければ、人は確実に狂気にさらされるでしょう。

tomo

ちなみに、私はついでに行き倒れて、遠くに灯りのともった家があるのにたどり着けずに凍死するといったビジョンを夢に見たことがあります。それも祖母の家でです。山は不思議です。

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