社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

日本経済新聞 春秋

2014-03-09 12:07:14 | 日記
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 春、浜辺をそぞろ歩くと、まだ背の低い松に新しい芽が伸び始めている。そのみずみずしさを詠んだ句「浜道や砂から松の若みどり」(蝶夢)のような景色が、何年か先、きっとよみがえる。松林をもう一度つくろうという人たちの頑張りに、そんな確信がわいてくる。
 津波でほとんど失われてしまった海岸林の再生は、息の長い仕事だ。宮城県名取市では、地元の「再生の会」に非政府組織(NGO)が協力して、クロマツの種をまいて苗をつくることから始めた。2年たった苗は25センチ以上に育ち、春の植え替えを待っている。その繰り返しで、これから6年間に50万本を植林するという。
 植林、植樹には誰もが手軽に参加できる緑化イベントのイメージがある。そんなものではないとも教えられた。海岸の松林は潮風や砂、霧から生活を守ってきた。その分自らは厳しさのなかに身をさらしている。栄養分のない土壌と寒風に乾風、二つの「カンプウ」に痛めつけられ、「砂漠の植林より難しい」のだそうだ。
 だから専門家が植える。それでも3割ほどは間もなく枯れてしまうという。3年前に流された松林は伊達政宗が命じて造成させた。400年前の話である。老松が若松に代わり、やがては散歩する人を楽しませるだろう。そして一人前の松林になるまで50年、60年。その姿を、いま頑張っている人の多くは見ることがない。

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