銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

静かなる盆

2006年08月14日 23時47分00秒 | 散文(覚書)
熱のこもったアスファルトが

そこかしこで笑う

僕の額を焼き付けて

密やかに

軽やかに執拗に笑う

は、ふぅ

は、ふぅ



あの坂を上れば……

影のさえずりへ…



やがて音もなく

車が走り去る

誰が、一体乗っているのだろう

バックミラーだけがまぶしく光って

このトンネルを映した



銀杏の並木道は前へ前へと進むばかりで

葉の群れはアーチとなって

遥か頭上を

緑のステンドグラスへと催した

そこを、ただ真っ直ぐ、秋へと潜り抜けて…



蜘蛛が1匹、宙にいた

夏風邪の僕には、糸が見えない

蠢く事を忘れたようだ



並木道の両端に立ち並ぶ雑居ビル

そこに映る

黒い葉のざわめき

あぁ、どれだけの

幾万の魂がそこを行き交うだろう

黒と、緑と

その弛まぬ2色の綾取りを



蝉の抜け殻が空から降ってきて

虚空の1点で留まった

あぁ、ようやく僕にも蜘蛛の糸が見えたのだ



汗が、遠い潮鳴りの様に引いてゆく

抜け殻の影は

アスファルトに微かに揺らいでいる

ひっそりと

ひっそりと



緑髪の人よ

あなたを、また、思い出した