ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

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再生能力のひみつ

2021-12-20 15:43:25 | 日記
 プラナリアの驚くべき再生能力は,どこから来るのだろうか?
 それは,プラナリアが「分裂能力のある細胞」を持っているからです.プラナリアの研究者は,こういう細胞をネオブラスト(neoblast)と呼んでいる.ネオブラストは分裂して細胞が増える.増えたぶんはプラナリアの体を作るいろいろな細胞に「分化」する.
 こういう性質をもつ細胞は,一般に「万能(多能)細胞」とか「幹細胞」と呼ばれていて,時々話題になります.山中先生の iPS細胞は,induced pleuripotent stem cell(誘導された多能幹細胞)という意味ですよね.

 ネオブラストはプラナリアのからだ全体に散在している.プラナリアを切断すると,切断面にネオブラストが集結して来て,盛んに分裂してプラナリアの身体づくりをする.これがプラナリアの再生能力の秘密です.
 X線を照射されると,ネオブラストは分裂能力を失う.だから体全体にX線を浴びたプラナリアには,再生能力はありません.じゃあ,体の一部だったら,どうなんだろう?
 というわけで,Dubois (1949) という人は,プラナリアの体の一部だけにX線を当てる実験をした.つまり,この図の斜線のところだけX線を照射した.白い部分は何かで覆って,X線が当たらないようにしたんでしょうね.結果はご覧の通り.
 部分照射されたプラナリアを前後2つに切断した.前半分はネオブラストは全滅なので,再生能力はなく,死んでしまう.後半分は,切断面にはネオブラストはいないけれど,X線を浴びなかった場所にいたネオブラストたちが切断面に集まって,再生の作業を実行した.だから後半分は再生して,正常なプラナリアが復元した.
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