事のなりゆき

日々のなりゆきを語ります

真っ白の校庭とマウンドの土

2009-08-08 10:00:50 | Weblog
 スタンプカードをぶら下げながら、毎日朝7時からラジオ体操。なんでこんなこ

とやるんだという、疑問を持ちながらも決められたことだし、行かない理由もない

ので行っていた。ラジオ体操会場の小学校まで歩いて10分くらい。みんな眠そう

な顔をしている。ラジオ体操第一の音楽が鳴り出すと小生は不思議に背筋がピンと

する。回りを見ると手足は動いているけど、目を閉じている奴がいる。体操しなが

ら寝ている。そんな奴に限って終わると目を覚まし元気になる。タイミングがずれ

ている。出席スタンプをもらって帰る。すぐに家から飛び出したいのだが、10時

まで勉強タイムという学校規則があった。規則では勉強か家の手伝いになってい

る。机に向かって勉強するより、家の周りをほうきで掃いたりしていた。とにかく

外の空気を吸いたくてたまらなかった。10時前はまだ涼しかった。家の周りには

まだ土肌がたくさんあり、雑草も生えていた。葉に乗った朝露が太陽に照らされて

キラキラ輝き、近くに行くと草の香りが漂ってくる。夏のにおいだ。輝きと香りが

小生の早く外で遊びたい気持ちを一層駆り立てる。10時までの時間がどれほど長

く感じたか、つらかった。

 10時の時報とともに、バットとグローブを持って家を飛び出し、小学校の校庭

へ走る。暗くなるまで自由な時間の始まり。胸躍るというのはこんな気持ちか。小

学校の校庭は小さな砂利が敷かれてある。ラジオ体操をやっていた時とはちがい、

太陽が照りつけグランドが真っ白に見える。規則から開放された面々が集まってく

る。最初はキャッチボールから始まり、人数がそろいはじめるとチームに分かれて

試合を始める。今になって思えば広い校庭ではなかったが、その時はかなり広く感

じた。外野が抜かれると校庭の隅までボールを取りに行くのが大変だった。毎日毎

日が野球だった。

夏休み家の中で高校野球をテレビで見た記憶はほとんどない。でも一試合だけあ

る。ひょんなことから実現した。小学校の校庭には必ず管理人がいた。大学生のア

ルバイト管理人だ。その人も人数が足りない時にはチームメンバーになってもらっ

た。管理人は本を読んでいるか、高校野球のラジオを聴いていた。小生たちも野球

をしながらなんとなく流れてくるラジオが聞こえていた。ある日小生は親指を突き

指した。ボールをつめから当ててしまった。どこかいつも擦りむいたりして、血は

どこからかいつも流れていたが、突き指はあまり経験がない。痛くてしょうがな

い。バットがちゃんと握れない。水飲み場で冷やしても痛さがとまらない。見ると

なんだか紫色に親指が変色しなじめてきた。病院にいくしかないのかと悩む。病院

に行けば野球を止められる。行きたくないでも痛い。アルバイト管理人が心配して

きた。一応管理人だから何かあれば報告しなければいけないという。だから見せろ

と言う。校庭から出入りできる教室が仮の管理人室になっている。管理人室に入っ

たとたんに忘れていた教室のにおいが鼻につく。9月になればまたここに戻らなけ

ればいけない。突き指の痛さとともに気持ちが落ち込む。ラジオからは実況が聞こ

えていた。決勝戦で0対0、すでに延長戦に入っていた。青森のチームががんばっ

ていると管理人は小生の指にシップをしながら興奮気味で話した。夕方しかたなく

病院に行った。突き指はたいしたことはなくほっとした。診察を終えて待合室のテ

レビ前に人垣がある。え!まだやっている。

翌日再試合になった決勝戦はテレビで見た。突き指のためか、試合を見たかったか

らは覚えていない。見なければいけないという感覚はあった。ユニフォームは両チ

ームともまっくろだった。前日18回投げ合っていたが、松山商業の井上明はすぐ

に変わった。三沢商業の太田幸治は最後まで投げた。4対2。松山商業が優勝し

た。普通の試合だった。試合後に見た光景に小生の目が留まった。太田幸治がマウ

ンドに土を拾いに行った。カメラがその姿を追う。アナウンサーが太田幸治だけが

許される行為と伝えた。焼けて真っ白に見える校庭に行きたくなった。野球がした

いと思った。
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