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名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

◆ 怪奇夜話 「ふーん現象」

2013年02月14日 | 日記
「ついに人類は、太陽系の外に飛び出し大宇宙への旅が始まった」
「ふーん」
「銀河系宇宙の外まで行ってしまった」
「ふーん」
「大宇宙の果てまで辿り着き、宇宙の藻屑となった」
「ふーん」
「藻屑を包む宇宙が原子となり、再び地球の一要素として再生しつつある」
「ふーん」と云う声が、宇宙の彼方から聴こえた。
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◆ 怪奇夜話 「巌流島の決闘」

2013年02月14日 | 日記
「武蔵。いよいよ決闘だ。覚悟は良いか」
「おしっこちびりそうだ」
「今さら何を云うか。臆病者め」
「臆病者に勝って、自慢になんのかい」
「問答無用。参るぞ」
「暫く。後五秒だけ待って呉れ」
「何ゆえに」
「四秒、四票あと少し」
「何だか気が抜ける拍子だな」
「三秒、三票入れました」
「一体、全体なんなのさ」
「二秒、二票で負けちゃった」
「何だか、むずかゆい様な、可笑しな気分になって来た」
 その瞬間、武蔵の木刀が小次郎の頭をかち割った。

「生涯一度の不覚であった」
「小次郎敗れたり。思わず笑った方が負け。勝負の鉄則だよ」
「恐るべし武蔵の技。冥土のみやげに、秘剣の名を受けたまわりたい」
「五秒討ち。相手を笑かせて、隙を観る秘伝でござる」
「目の前が暗くなってきた。医者を呼びたいが、後どれ位時間があるだろう」
「一秒」
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◆ 怪奇夜話 「最期の抹茶」

2013年02月14日 | 日記
「あの男は、抹茶が嫌いだ」
「気持ちは分かる。苦いからね。それなら、大小の抹茶を用意して小さい方に毒を入れよう」
「彼は、嫌いな抹茶を飲まなかった」
「他に方法は無いのか」
「あの男は、塩せんべいが嫌いだ」
「僕も大嫌いだ。それなら、せんべいと芋羊羹の皿を用意して、羊羹に毒を盛る」
「結局、お茶の師匠が二人死んでしまった。抹茶と芋羊羹に目が無かったんだ」

「嫌いなものという観点は邪道だ。何か好物はないのか」
「あの男は、饅頭が好きだ」
「僕も大好物さ。それなら饅頭に毒だ。単純明快な論理じゃないか。最高級の栗饅頭にしよう」
「今度は誰も死ななかった」
「余り美味そうなので、思わず食ってしまった」

「この世のなごりに、云い遺す事があるかい」
「口の中が甘過ぎてかなわん。死ぬ前に一度だけ、濃い抹茶で塩せんべいを食いたかった」
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◆ 怪奇夜話 「道徳教育」

2013年02月14日 | 日記
①人を殺してはならない。
②殺した場合には、証拠を残してはならない。
③証拠を残した場合には、合理的な反論を用意しなければならない。
④法的な証拠が無い場合には、逃走経路を準備しなければならない。
⑤逃走が不可能な場合には、裁判官に対する賄賂を用意しなければならない。
⑥万が一、潔癖な裁判官の場合には暗殺する。が、証拠を残してはならない。(②に戻る)
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◆ 怪奇夜話 「幸か不幸か」

2013年02月14日 | 日記
「決闘を開始する。金貨を交互に投げ、先に表の出た者が撃つルールだ」
「どっちが先に金貨を投げるか、じゃんけんで決めよう」
「百万ドル払うから、僕を先にしてくれ」
「良いだろう」

金貨の表が出たので、男は相手を撃った。心臓を僅かに外したが、致命傷だった。

「馬鹿な奴だ。百万ドルと命を引き換えにした」
「裏が出たかもしれん。50%の確率に賭けたのさ」
「この硬貨は、両方とも表だ」
「それは、ずるくて、卑怯で、悪質ないかさまだ」
「裏が出たとしても、お前が表を出す確率はその又半分の25%、それから表を出す確率は、その又半分の12.5%。それでも裏なら6.25%だ」
「10回裏が出続ける0.1%の僅かな確率を想いながら死ぬ初めての人類となった」と云い遺し男は息絶えた。が、その直後。男の霊が宙をさ迷い始めた。

「未だ、この世に未練があるのかい」
「百万ドルの事をすっかり忘れていた」
「お前が勝っても、どうせ手には入らん。僕が死んでしまえば金の在りかが分からんし、幽霊には金が使えない。どっちに転んでも、同じ結果だ」
「と云う事は、詰まり」
「論理の陥穽に、はまったね。だが、あの世で成仏する幸運な要素が遺された」
「確かに、未練だけはなさそうだ」
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◆ 怪奇夜話 「生前香典」

2013年02月14日 | 日記
「生前香典を下さい」
「なんだい、そりゃ」
「生きている内に香典を貰い、現世で有効に使うのです」
「ほら、五円やるよ」
「せめて百円頂けませんか」
「本当に死んでから、出直しておいで。千円出してやるよ」
「自殺と思ったのですが、難しいものです」
「死ぬなんて、簡単そうだがな。ガス自殺すりゃいいだろう」
「ガス代を半年払っていないのです」
「そんなら、首縄を貸してやろう」
「苦しそうだし、縄を梁に括り付ける台がありません。息を止めたり、自分の首を絞めたり、風呂場でも...」
「おいおい、気色の悪い話だね」
「実は、色々と試してみました。昨夜遅くやっと死ねた様にも思いますが、如何でしょうか」
「馬鹿云うなよ。五体満足じゃねえか」
「その点が不思議なのです。役場に死亡届けを出そうとして、断られました。誰も信じてくれない」と云う男の表情には、力ない薄ら笑いが浮かんでいる。
「と云う事は、詰まり」
「はっきり云って下さい。人様の口から聴きたいのです」
「本人の感覚が一番確かだろうに」
「自分の口から云うのは、何だか怖い」

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◆ 怪奇夜話 「姿の見えない怪物」

2013年02月14日 | 日記
「御友達を御紹介します。はるばる、ロッキー山脈からいらっしゃった狼男様です」
「初めまして。私はドラキュラ伯爵。こちらは、火星人、地底人、海底人のお三方です」
「私を忘れないで下さい」
「おっと失礼。こちらは」
「皆まで云わなくても、存じ上げております。お会い出来て光栄です」
「流石は、臭覚の優れた狼男殿下。私の存在が見破られたのは、初めての事です」
「演繹推理すれば他に考えられません。貴方は特殊ですからね」

「一体、あなた方はどなたと話しているのですか」
「姿は見えないが確実に存在するお方です」
「という事は、詰まり」
「    」と狼男が答えると、一同呆れて屁をこいた。
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◆ 怪奇夜話 「誤診」

2013年02月14日 | 日記
「先生。体が粉々になった様な、嫌な気分がします」
「心配要りません。それは、典型的な『精神分裂症』の症状です」
「何だ。僕は又、さっきの交通事故で死んだのかと思った」と云うと、男の霊は病室の天上へすうっと消えた。
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◆ 怪奇夜話 「名馬と嫁の涙」

2013年02月14日 | 日記
「数十人の奥さん連中が、あの家の納屋を囲んでいる」
「アルフレッドの奥さんが飼っていた野生馬が原因だ。馬が檻から逃げ様として、姑(しゅうとめ)を蹴(け)殺してしまった。アルフレッドの奥さんは、姑の訃報(ふほう)を聞いてから泣き続けていた。馬は一度大草原に逃げてしまったが、奥さんが無理やり連れ戻したそうだ」

「お悔やみの群集があれ程集るのだから、お母さんは聖母マリアの様に高貴なお方だったに違いない」
「女の涙は、哀しみとは限らん。馬の奪い合いとなり、奥さんが値段を競り上げている」

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◆ 怪奇夜話 「亡霊同志の円滑な関係」

2013年02月14日 | 日記
「ねえ、坊や。愚かな人間から愚かな質問を受けると、回答に困るものだ。君にも経験があるかい」
「お父様。愚かな質問をするのは、人間に限りません」
「馬鹿げた質問を、人間以外の誰かから受けた事があるのかい」
「我々円滑な幽霊同士の関係を鑑みると、その質問には答えられない」

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◆ 怪奇夜話 「霊魂の群れ」

2013年02月14日 | 日記
 時空を超えた太古の世界に、争いと厄災が続いた。人々は殺し合い、病が広がり、天災が襲う。火山から燃える溶岩が流れ出し、人も家も大渦巻きに呑み込まれ、港町は海の底に没した。

「神様。私は、全世界の被災者を救済します」
「あたしも。戦争は惨(むご)たらしい」
「僕も、自然災害から人々を守りたい」
 天上から集った亡霊の群れが、力を合わせて哀れな人々を救う。

 霊魂の群れが光の幕となり地上を包むと、静かな永遠の調べが空から響き渡る。
「あなた方善意の魂に、永久(とわ)の栄誉が与えられます様に」
「神様。それには及びません。天国は、下界より人口過多なのです」

 神は、その後永遠に黙してしまったという。

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