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名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

◆ 怪奇夜話 「幸か不幸か」

2013年02月14日 | 日記
「決闘を開始する。金貨を交互に投げ、先に表の出た者が撃つルールだ」
「どっちが先に金貨を投げるか、じゃんけんで決めよう」
「百万ドル払うから、僕を先にしてくれ」
「良いだろう」

金貨の表が出たので、男は相手を撃った。心臓を僅かに外したが、致命傷だった。

「馬鹿な奴だ。百万ドルと命を引き換えにした」
「裏が出たかもしれん。50%の確率に賭けたのさ」
「この硬貨は、両方とも表だ」
「それは、ずるくて、卑怯で、悪質ないかさまだ」
「裏が出たとしても、お前が表を出す確率はその又半分の25%、それから表を出す確率は、その又半分の12.5%。それでも裏なら6.25%だ」
「10回裏が出続ける0.1%の僅かな確率を想いながら死ぬ初めての人類となった」と云い遺し男は息絶えた。が、その直後。男の霊が宙をさ迷い始めた。

「未だ、この世に未練があるのかい」
「百万ドルの事をすっかり忘れていた」
「お前が勝っても、どうせ手には入らん。僕が死んでしまえば金の在りかが分からんし、幽霊には金が使えない。どっちに転んでも、同じ結果だ」
「と云う事は、詰まり」
「論理の陥穽に、はまったね。だが、あの世で成仏する幸運な要素が遺された」
「確かに、未練だけはなさそうだ」
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