名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

♪ 名邑十寸雄の手帖 @ 【分類マーク】 ∞

2020年05月08日 | 日記
 下記の分類マークを御参照下さい。


♪  : ジョーク、小噺
◆ : 怪談・奇談・存在論的恐怖小噺
Э  : 映画論(作品、映像作家別)
☆ : ショート・ショート、脚本用のメモ、小噺、試作俳句、他。
* : ライトノベル
M : ミステリー


@  : エッセイ
∞   : 藝術論
†  : 放下思想論
¶   : 既書籍関連概説


 メモを保存用に書きとめたのが「名邑十寸雄の手帖」です。外出時などに、ほんの短時間ブログ上で書くのは便利なのですが、完成された文学とは精度が異なる点御容赦下さい。アイデアやプロットを新作に使う順に消してゆきます。例えば、「スクリューボール・ジョーク」「非論理エッセイ」「キネマ倶楽部」の旧作品は校閲した後に電子書籍化した為、手帖からは消えております。完成した長編小説に使った短編群も同様です。通常長編を書き始める前に、主要登場人物の短編を書き人物の骨格を整える作法があります。画家が、骸骨のデッサンから始めるのと似た作法です。

 本文末尾の【記事一覧】や【もっと見る】でさかのぼると、約五百ある全ての記事が簡単にご覧頂けます。疲れた時や寛ぐ時は「♪ スクリューボール・ジョーク」「◆ 怪談・奇談」を気軽にお愉しみ頂き、悩みで思い詰めた時は「† 思想」、文学を目指す方には「∞ 藝術論」が参考となるかも知れません。現実的な想念が特徴ですので、観念論理の陥穽には落ち入りません。

 非論理という表現を言葉の遊びと誤解なさる方々が多い様ですが、それでは一体論理とは何でしょうか。物理方程式、観念道徳、因習、氾濫するコマーシャリズム、伝統の背意、常識に潜む形式主義、表現藝術の嘘、キャッチ・コピー風の文学、事実に反する過多の情報。長い狂気の時代を経て、そろそろ正しい視線で物事の本質を観る時代が来ます。ほんの一寸脳髄の観点を変えるだけで、人間の真実や生命体系の真相に触れる。非論理思考は、その鍵と云えるかも知れません。一言で云えば「分母=ゼロ」とも云える「一即多」の禅思想に由来しております。

 禅の放下思想は単純です。想念を放下すれば良いのです。放下すると世の真相に気付く。何もかも捨てると、無尽蔵の真理が観える。「本来無一物。無一物中無尽蔵」という言葉の非論理的摂理を直観する方の心には、正しい世界観が拡がります。いずれ捨てるのですから、限界など考えずに切磋琢磨するのが人生です。無益な競争や、虚しい名声の為に苦労するより余程愉しいものです。この思想形態を、物理的に捉えると間違えます。想念を放下しても、本当に消えてしまう訳ではありません。コンピューター用語で云えば「プーリング」に相当する感覚です。全ての世界観が融合する。それを、古代の真禅思想では一即多と云います。

                   *

 一年を四季と捉えた愉しい因習が多々あります。百年の歴史を、悲劇に対する憤りと共に語り続ける方々がいる。紀元二千年の歴史に、意味を与え様とする集団概念も多い。どれも、生き延びる必要から生じた叡智に違いありません。

 過去・現在・未来を観る視点だけ、少し変えてみませんか。人類の誕生は約一千万年前と云われる。その後、遥かな時空を超えて伝わった叡智の核が存在します。科学や考古学の物理的考証は、ほんの一面に過ぎません。迷信や似非哲学と混同され続けている精神世界の根本義は一体何か。発見が難しいにも関わらず、答えは意外と単純な処にあります。本ものの思想は、複雑にはなり得ません。より大きな観点の正しい見地に立てば門が観える。生命体系の創世は、今始まったばかりなのです。




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◆ 恐怖の落とし穴 「利休の闇茶」

2020年05月08日 | 日記
「炙り寿司とは豪儀な事。夢にまで見た肴じゃ」

「御禁制を破る隠れ料理でございます」
「黒い茶碗で、煎茶を一服味わいたい」
「利休様ご愛用の黒い楽焼茶碗がございます」
「秀吉公は悪縁を招くと黒を忌み嫌われたが、黒は美の窮みじゃ」
「今宵の炙りものは、鰻の蒲焼で如何」
「たれに漬ける蒲焼は無情に過ぎる。だが、白焼であれば山葵にも酢飯にも合うというもの。胡麻和えも乙なもの」
「何故に胡麻」
「胡麻は、煩悩を焼き尽くす護摩に通ずる。心の執着を炙るのじゃ」

 黒い茶碗で煎茶が出されると、老人は不思議そうに茶碗の中を覗きこんだ。
「茶の色あいが見えんな」
「闇茶でございます」
「これが、噂に高い冥界茶か。わびの窮みじゃのう」
「霊は無の世界。命の絆が断たれれば、それまでの事」
「これ以上望めぬ枯れの境地。此処は、天上か龍宮か」
「千利休様。貴方様がおわすのは、命の際。これは儚い幻なのです」
「どうりで、茶碗の中に寂びの海が拡がる」
「それも、魂の果てに生じたうたかたの夢」
「わびさびを窮めた茶の海が、黒い器の中でゆるりと波立ち渦を巻いておる。闇の彼方に吸い込まれる様じゃ」

 遥かな時空を漂うと、裏返しにされ炙られる様な嫌な心持ちが一時生じた。が、やがて全ての存在概念が、静かに消えてゆく。

「この期に及んで、うおの気持ちが良く分かる」




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