名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

♪ スクリューボール・ジョーク 「イエスの父親」

2013年03月25日 | 日記
 イエスは天国で父親を捜したが、二千年近く掛けても見付からなかった。もう年令さえ忘れる程経った頃、イエスは子供を捜している老人がいるという噂を聞き、アメリカ大陸に渡った。船はゆれた。通関は移民の列でごった返している。哀愁のこもった汽笛が港の喧騒に重なる。イエスは人生の無常をしみじみと感じていた。

 桟橋を降りて行くと白髪の老人が近付いて来る。イエスが捜し求めていた父に違いなかった。それは、乞い求める老人の疲れ切った眼差しから窺われる。
「御老人。誰かを、お捜しですか」
「私は、自分の息子を捜し続けているのです」
 イエスの目から大粒の涙が溢れていた。
「その子の、あなたの息子さんの特徴は何ですか。何か目印はありますか」
「そう。手に穴が空いているんだ。十字架に磔(はりつけ)にされていたからね」
 イエスは、歓極まり白髪の老人に抱きついた。
「お父さん!」
 老人も、涙と共に息子を抱き締めた。
「ピノキオ!」

♪ スクリューボール・ジョーク 「人喰い巨人」

2013年03月25日 | 日記
 人喰い巨人の父子が、俗界をのんびり見下ろしていた。
「あの人間はコレステロールが多そうだ。まるで肥った豚だね」
「ガリガリ人間は、食べる所がない。痩せたソクラテスの様だ」
「この何千年か、喰い足りない人類ばかり」

 二人は諦めて家に帰り、信州の手打ち蕎麦と江戸前の濃いたれを調理した。下仁田ネギを薄めに切り刻み、伊豆で獲れた生わさびを卸す。ずるずるっと音を立てながら食すと、何とも云えない味覚と香りの感銘に満たされた。
「喰えない奴らばかりそろった人間界より、蕎麦や田楽の方が余程ましだ」
「でもお父さん。ワインやビールで肥やせばフランス風フォアグラや松坂肉が出来るし、蒲焼でじっくり油を落とせば肥った素材も乙なものだ」
「やめてくれ、何だか胸が悪くなってきた。お前は未だ若いから、そんな野蛮なものが喰えるのだ」

 そしてその後、人食い巨人は菜食主義者になり遂に滅びてしまった。

♪ その嘘ホント 「誰にでもある天の救い」

2013年03月23日 | 日記
 頬に口紅の跡を付け酒瓶をポケットに入れた浮浪者が、公園のベンチで新聞を読みながら問い掛けた。
「牧師さん。どうして人間は落ちぶれるのでしょうか」
「酒の呑み過ぎと、ふしだらな女性関係だろうね」
「やはりそうですか」
「そう気落ちする事はない。心を改めれば誰にでも救いがある」
「新聞にも、そう書いてあります。大統領選挙に出馬した事業家が、酒とスキャンダルで身を滅ぼしましたが、今朝方天国に逝ったそうです」


♪ 怪奇夜話 「駱駝」

2013年03月18日 | 日記

 駱駝(らくだ)に乗った男が、灼熱の砂漠を走る車に出逢った。日除けの赤いマントで、顔が被われている。
「熱くて焦げ付きそうだ。暫くの間、車に便乗させて頂けませんか。黄金二枚を差し上げます」
「それは有り難いが、駱駝は如何するんだい」
「心配御無用。後から付いて来きます」
「かなり飛ばすよ」
「付いて来れなければ、更に金貨五枚払いましょう」と云うと、男は後部座席で寛いだ。

 砂塵を上げて走り出すと、駱駝は距離を置いて付いて来る。速度を上げても後を追った。猛スピードにしても徐々に距離が縮んでいった。
「駱駝(らくだ)が、舌を出して苦しそうだ。速度を落としてやろう」
「そんな心配は、御無用です」と云うと、後ろの男は赤いマントを脱ぎながら云った。
「もう三万年もの間、休みなく走り続けているのですから」
 運転していた男は、さりげなく後ろを振り向いた。そした、錆び付いたギアが絡まった様な叫び声を上げた。恐怖ではない。驚きと、絶望と、ある種の諦念が混ざり合った断末魔の声だった。

 じぐざぐで進む車は、やがて砂漠のど真ん中で止まってしまった。後部座席のドアが音もなく開き、砂の上に大きな足跡が生じる。赤いマントが風にゆられて歩いていた。が、男の姿はなかった。

 暫く休んでいた駱駝は、やがて風になびくマントを翻しながら蜃気楼(しんきろう)の中へ消えて行った。



♪ その嘘ホント 「スペイン風特別料理」

2013年03月14日 | 日記
 スペインで闘牛を観戦した後、一流レストランで晩餐を愉しんだ。
「今日のスペシャル料理は何だい」
「当店自慢の牛肉料理でございます」
 二つの大きな肉だんごは、舌がとろける程美味(おい)しかった。翌日も同じ料理屋に行く。
「今日のスペシャルをくれ」
 大きな二つの肉だんごだった。余りにも美味(うま)い。三日目も同様にスペシャル料理を頼むと、小さな二つの肉だんごが出された。
「今日は小ぶりだね。味は大丈夫かい」
「ニ時間ワイン漬けでしたので、味は保証致します」
「なんで小さいのかな」
「闘牛士が毎日勝つとは限りません」

♪ その嘘ホント 「ローマ法王の記者会見」

2013年03月13日 | 日記
 ローマ法王がニューヨークを訪れると、マスコミに取り囲まれた。
「何か面白いネタはないでしょうか」
「私が望むのは」と云い掛けた法王に、新聞記者が割り込んで云った。
「今夜の御予定は」
 法王は、敬虔な面持ちで答えた。
「ニューヨークのナイト・クラブ(騎士の礼拝所)を表敬訪問して、開拓時代の慰霊に祈りを奉げたい」
 翌朝、マスコミは派手に書き立てた。
「ローマ法王。空港に到着直後『ニューヨークの歓楽街に行きたい』と告白した」

♪ その嘘ホント 「ユダヤ商法の奥義」

2013年03月13日 | 日記
 某中南米の政府高官が、大工と壁紙屋二人にオペラ・ハウスの改装費を聞いた。
「工事が5万ドル。壁紙が5万ドルです」
 役人が何もしないユダヤ商人に聞くと、20万ドルだという。
「何故そんなに高いんだ」
「大工と壁紙屋に各5万ドル。私が1万ドル。後の9万ドルは、貴方に対する賄賂です」
 結局、ユダヤ商人が注文を取った。

♪ その嘘ホント 「ベネチア風ピザの切り方」

2013年03月12日 | 日記
 ベニスの料理店で客がピザを頼むと、店員が笑顔で問い掛けた。
「お客様。ピザは4枚に切りましょうか、それとも6枚が宜しいでしょうか」
「君は、このテーブルに何人座っているか見えるかね」
「お独りです」
「だったら、一枚でいいだろうに」
「いえ、そういう事ではなく、私は何枚に切るかという点を」
「どう切ろうが、私の勝手だ。フォークとナイフを持ってこい」
 
 ピザが来ると、紳士はアンチョビやベーコンの並んだ上側と、下側のベースを別々に切り離した。不思議な方法に見惚れて、店員達だけでなく通りすがりの客までテーブルを囲んでいた。
「見世物じゃないよ。じろじろ見るな」
「ピザを上下に切り分けるとは、珍しい食べ方ですね」
「誰しも好みがある。等分にする方が、余程不合理だろうに」
 紳士は、胸元を開けると如何にも愉しそうに云った。
「お前達もお腹が空いたろう。さあ、海育ちのトムにはお魚、山育ちのジェリーにはベーコンを上げよう。パパはチーズ・パンを頂こうかな」
 その言葉の終らぬ内に、紳士は胸から飛び出した二匹のペットに食べられてしまった。そして、得たいの知れない生物は、けたたましい叫び声を上げながら窓から空に飛び去った。

 腰を抜かした店長が、店員に云った。
「看板に、一言書くのを忘れていた」
「何ですか」
「ベネチア風ピザ・ハウスは、ペットの同伴お断りだ」
「それにしても、好き嫌いの激しいペットでしたね」
「少なくとも、アンチョビとベーコンは口に合わなかった様だね」

♪ その嘘ホント 「老眼の実態」

2013年03月12日 | 日記
「もう年だね、最近目が悪くなった」
「隣のテーブルでピザを頼んだ老人が見えたかね」
「ピサを上半分と下半分にカットしておった。変わった男じゃな」
「何だ、目は見えるじゃないか」
「その後、男とピザがどうなったのか良く分からん」
「見えなかったのか」
「忘れてしもうた」

♪ その嘘ホント 「良いニュースと悪いニュース」 1

2013年03月10日 | 日記
 パリの個展会場で画家が胃薬を飲んでいると、画商が来て云った。
「良いニュースと悪いニュースがある」
「胃がさっきから痛むんだ。良い話から聞こう」
「さっき酔狂な男が来て、君の絵を全部定価の倍額で買うというんだ」
「随分と気前のいいお客さんだね」
「もう直ぐ、価格が何十倍にもはね上がるそうだ」
「胃の痛みが引いて来た。悪いニュースって何だい」
「その客は、君の主治医なんだよ」