名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

♪ マクガフィン風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月31日 | 日記
「久し振りだね。十年振りかな」
「懐かしい。最後に逢ったのは、確かイスタンブールの市場」
「トルコに行った事はない。マナウスのバーで、何度も呑み明かした」
「ブラジルは知らん。蘇州の寒山寺を覚えているかい」
「中国には縁が無い。シベリアで、キャビアを食べながらウォッカを呑んだ」
「ロシアなんて、写真で見た事すらない。ところで、此処は何処かね」

「アンドロメダ星雲の重力圏内。同じ宇宙船に乗せられた」
「何故、十年間の記憶が無いのだろう」
「記憶を抹殺されたか、或いは」
「あかの他人かも。それなら、初めましてと云うべきだ」
「初対面の挨拶は、お互いの素性が判明してからだ」

「そう云われてみれば、口が無いのに何故話せるの」
「君こそ。耳が無いのに聴いてる」
「目が無くても、僕の顔が見える様だね」
「だんだん、体が重くなって来た」
「後十秒で、巨大な重力のブラック・ホールに突入する」
「いや七秒。別れの言葉を云う場面だ」
「後五秒という時になって、形而上(けいじじょう)学的な疑問が生じて来るなんて」
「後三秒。今生(こんじょう)の名残に、是非教えてくれ」

「トルコとマナウス、蘇州とロシアで逢った二人は、一体何処の誰だったんだろう」





♪ 無罪の加害者風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月26日 | 日記
「アルフレッド牧師。何度も手を洗い続けているが、誰か人でも殺したのか。法衣が血だらけじゃ」
「司教様。実はそうなのです」
「告白するが良かろう」
「私は、カーテンに隠れ大司教を剣で突き刺しました」
「わしも、お前の反対側から剣で突いた。しかし変だな。大司教は無傷だ。今も、教会で説教している」
「こうして天上から覗いているという事は、二人共無罪ではありませんか」
「法的にはそう処理されるだろう。加害者同士が、被害者になった訳だからね」



♪ 交通事故風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月26日 | 日記
「道に飛び出した犬をよけたら、郵便受けに正面衝突して車がいかれてしまった」
「古いポンコツ車で良かったね」
「最新型のメルセデス・ベンツに買い替えたばかりだ」
「新車なら、尚更良かった」
「保険を掛ける前だったんだ」
「保険を掛ける前なら、更にラッキーだ」
「処で、あんたは一体何者だい。白いワンピースなんか着て、背中に羽を生やしている。こんな不幸が幸運だという理由を聞かせてくれないか」
「本当に知りたいか」

「少し不安もあるけど、一応聞いてみたい」
「聞いた後で、後悔しないだろうね」
「嫌な云い方だね。背筋が寒くなってきた」
「天国では車を運転出来ないし、保険も受け取れない」
「なる程。そう云われてみれば、少なくとも未練だけは残りそうもない」




♪ 密林風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月25日 | 日記
「神父を殺害した野蛮人を、ジャングルの奥に追い詰めて皆殺しにする。一人発見する毎に千ドル払うが、誰か地図にもない密林に詳しい者はいないか」
「それなら、俺に敵うものはいねえ。ジャングルは、庭同然。原住民の言葉も話せる」
「それは、頼もしいな」

 森林を抜け、滝を潜り抜け、奥深い急流沿いに岩壁を三日間登り続けると、大きな集落が見えた。
「おかしいな。には女と子供しか見えん」
「だんな、周囲を御覧なさい。千人程の武装集団に囲まれちまった」
「全員、斧と毒矢を持っている。一体何が起こるか分かるか」
「単純な計算ではないでしょうか」
「と云う事は、詰まり。全く分からん。一体どうなるんだ」

「だんなは、助からんでしょうね」
「そんな薄情な。お前も、同じ運命だぞ。何とかしてくれ」
「わしは、報酬の百万ドルを山分けして命乞いします」



♪ いたちごっこ風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月21日 | 日記
「檻の中のカンガルーが、1メートルの高さを跳べる様になった」
「心配いらん。柵の高さを2メートルにしよう」
「その後、2メートル以上ジャンプする様になった」
「心配いらん。檻の外枠を3メートルにした」

「いたちごっこだね」
「そういえば、隣はいたちの檻だった」

               *

「檻の柵が随分と高くなったね」
「いたち君。人間は何故『いたちごっこ』と云うのだろう」
「手の甲をつねり合う『ねずみごっこ』が語源だ。子供の遊戯からより大きな動物に変化したのさ。柵の高さとジャンプ力を競うなら、『カンガルーごっこ』と云うべきだね」

「人間の智慧など、底が知れてる」
「あの高さでは、流石の君も逃げられまい」
「看守が、いつまでも気付かなければね」
「と云う事は、詰まり」
「裏の門が開けっ放しなのさ」



♪ 口の悪い子供風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月16日 | 日記
「おばちゃん。お腹が大分膨らんでるけど、この中に赤ちゃんがいるの」
「アルフレッド坊や。その通りです」
「何ヶ月ですか」
「5ケ月の男の子です」
「幸せな良い子には見えないね」
「とても良い赤ちゃんですし、立派なお父さんもいますよ」
「それは如何かな。先の事は分からないって、さっきテレビで云ってた」
「如何いう事かしら。何だか不安な云い方ね」
「平均離婚率が五割を超えたし、口の悪い子供のによる被害が増加しているって」




♪ 大英帝国風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月13日 | 日記
「アルフレッド王子。そのほほの傷は、一体如何なさったのですか」
「先生。自分が如何に怠け者か、思い知らされました」
「事情を御説明下さい」
「昨日宮殿で捜し物をしていたら、僕の靴に小さな石ころが入っているのに気付きました。その小石を、靴を履いたままウードの瓶で叩き壊そうとしたのです。そうしたら、母君に思い切りどつかれました」
「ウードって、王家に伝わる香水のウード・ロイヤルの事かしら」
「女王専用の最高級品です。靴に入った石ころはつぶれましたが、香水の瓶も砕け散りました」
「如何に高価な香水とはいえ、未来の国王より大事とは思えません。わたくしが、女王様にお詫び申し上げます」
「母君に非はありません。非は、私にあります」
「ぶたれても王妃を庇うなんて、貴方は本当にご立派な王子様です事」
「靴の中にあったのは、石ころではありません。わが国に代々伝わる首飾りの一部。ひとつでも欠けると価値の無い、粒の揃った天然黒真珠でした」
「女王様も貴方様も、その一粒の真珠を散々捜していらっしゃった。と云う事は、詰まり」
「靴を脱げば良かったのです」


♪ 偽札風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月10日 | 日記
「公園のベンチで千ドル見付けた」

「それは、幸運だったね。現金だと、落とし主を捜し様もない」
「そこに居た浮浪者も、同時に見付けたんだ。それで半々にする事にした」
「公明正大な方法だ」
「千ドルを彼に渡すと、五百ドルお釣りを呉れた」
「理に適った別け方だ」
「でも、その 五百ドル札は偽札だった。浮浪者がそんな金を持っている筈もない」
「警察に訴えたのかい」
「いいんだよ。その千ドル札も偽札だった。だから五百ドルも、彼に返してしまった」

 公園のベンチに座るみすぼらしい浮浪者が、通りかかる紳士に話し掛けていた。
「だんな。ベンチで千ドル見付けました。宜しければ山分けしませんか」
「正直なお方だ。どうするのかね」
「千ドル上げますから、五百ドルお釣りを下さい」
 紳士は千ドルを受け取ると満面に笑みを湛えながら云った。
「いいよ。五百ドルあげよう」

「小額札の方が便利です。その五百にもう五百ドル足しますので、百ドル札十枚と交換して下さい」



♪ 小学生風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月05日 | 日記
「さあ、国語の時間だ。皆、これから云う事を書きなさい」

「はい、先生」
 教師が、声高々に文章を読み上げる。
「もし、私が大統領になったら」
 後ろの席で、少年があくびをしながら背伸びをしていた。
「アルフレッド、何故書かないのだ」
「大統領だったら、秘書に書かせます」
「大統領になった場合の話だな。面白い答えだ。その後は如何する」

「もし僕が大統領になったら、仮想論理の弊害を生む小学校の教師を解雇します」
   



♪ 形而上学風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月04日 | 日記
 少女は、自分の瞳が小さ過ぎると悩んでいた。

「眼鏡を掛ければいいのさ」
「でもパパ。どんな眼鏡が似合うかしら」
「我々が住む天体から、銀河系宇宙の野蛮な星に届く眼鏡はどうかな」
「でも、それだと小さ過ぎる」
「それなら、宇宙全体を包む大きさでどうだい」
「顕微鏡の中を覗く様で気味が悪い」
「確かに、物理的な大小の感覚は好い加減なものだ。哲学的には意味がない」
「だから、あたしの目はこんなに小さいのね。あたし達、形而上学的な存在ですもの」という少女の瞳に宇宙全体が引き込まれ、一瞬の内に消えてしまった。

「早く起きなさい。学校に遅れるわよ」
 眠気と共に起き上がり歯を磨きながら、少女は鏡を覗いた。顔から両目が消えている。

「やっぱり、私の目は小さ過ぎる。でも、何故見えるのかしら」




♪ ヤンキーズ風 スクリューボール・ジョーク

2013年01月03日 | 日記
「ニューヨーク・ヤンキーズのファンは手を上げなさい」

 アルフレッド一人だけ、手を上げなかった。
「僕のパパもママも、ジャイアンツのファンなんだ」
「パパとママがひねくれ者だったら、君もひねくれ者になるのかい」

「そういう論理なら、先生お勧めのヤンキーズ・ファンになるさ」