朝鮮について知りたい

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愛媛新聞社説に関連して

2016年02月22日 | 現代朝鮮、朝鮮半島
先日(2016年2月16日付)、愛媛新聞の社説に次のような文章が載った。(以下本文をそのまま掲載)


朝鮮の拉致調査中止 一方的な合意破棄は許されない(「愛媛新聞」社説、2016年02月16日付)

 朝鮮が、日本人拉致問題の調査を担う特別調査委員会を解体し、調査を全面的に中止すると表明した。核実験と事実上のミサイル発射に対し、日本が独自制裁強化を決めたことへの対抗措置だ。2014年5月に日朝間で拉致問題の再調査を決めたストックホルム合意を、一方的に破棄する不誠実極まりない決定に強く抗議する。
 朝鮮の行為は「弾道ミサイル技術を使った全ての発射」を禁じた国連安全保障理事会の制裁決議や、ミサイル発射の凍結延長を明記した日朝平壌宣言に違反している。自らの違反行為を省みることなく、反発するのは筋違いも甚だしい。再調査合意の確実な履行を求める。
 14年7月に設置された特別調査委の報告期限は「1年程度」だった。真剣に調べているとは思えない態度に終始し、返答を先送りしてきた。報告を待ち望む拉致被害者の家族の気持ちを察すると心が痛む。家族の高齢化は進み、一刻の猶予もない。日本政府は交渉進展のため、制裁を一部緩めたが、結果的に朝鮮の利益となっただけで、交渉の手詰まり感は否めない。戦略を見直し対話を続け、粘り強く説得に当たらねばなるまい。
 日本が今回、人と船舶の往来規制拡大や送金の禁止など新たな制裁を追加したのは当然の対応といえよう。
 問題は制裁が厳格に実施されるかだ。日本は10年前から独自制裁を行っているが、国連安保理の報告書は、朝鮮の海軍艦船に日本製の民間用レーダーアンテナの搭載が確認されたと指摘しているという。全面輸出入禁止の網の目をかいくぐり、日本の民生品が軍事転用されたことは看過できない。日本政府の対応の甘さが浮き彫りになったと言わざるを得ない。
 制裁の重要な目的は、核やミサイルの開発につながる資金や技術の流れを絶つことにある。しかし、これまでの制裁では、核実験もミサイル発射も食い止めることはできず、逆に技術の向上を許してしまっている。過去と同じ方法をいくら繰り返しても、効果が上がるとは思えない。実効性の高い策を考える必要がある。
 韓国は南北間で唯一の経済協力事業の開城工業団地の操業を停止し、米国は制裁強化法案にオバマ大統領が近く署名する見通しとなった。日米韓の独自制裁は、核やミサイル開発を断じて許さないとの姿勢を示す意味はある。だが朝鮮の後ろ盾となっている中国の制裁がなければ、本当の圧力にはならない。
 中国は、朝鮮の混乱が自国に及ぶことを恐れ、制裁には消極的だ。朝鮮は中国が慎重な態度を崩さないと見越し、挑発を繰り返している。国際社会が朝鮮包囲網を築けず、暴走を止められずにいる。中国は国連安保理の常任理事国としての重い責任を果たすべきだ。安保理の追加制裁決議を進めるため、日米韓は足並みをそろえ、中国への働き掛けを強めたい。



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以下、本社説にたいしての反論および意見を掲載しようと思う。


1.「ストックホルム合意を一方的に破棄する不誠実極まりない決定」という事項について

まず、ストックホルム合意の原文を当たってみよう

※ストックホルム合意

双方は,日朝平壌宣言に則って,不幸な過去を清算し,懸案事項を解決し,国交正常化を実現するために,真摯に協議を行った。
日本側は,朝鮮側に対し,1945年前後に朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地,残留日本人,いわゆる日本人配偶者,拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を要請した。
朝鮮側は,過去朝鮮側が拉致問題に関して傾けてきた努力を日本側が認めたことを評価し,従来の立場はあるものの,全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施し,最終的に,日本人に関する全ての問題を解決する意思を表明した。
日本側は,これに応じ,最終的に,現在日本が独自に取っている朝鮮に対する措置(国連安保理決議に関連して取っている措置は含まれない。)を解除する意思を表明した。
双方が取る行動措置は次のとおりである。双方は,速やかに,以下のうち具体的な措置を実行に移すこととし,そのために緊密に協議していくこととなった。

―日本側

第一に,朝鮮側と共に,日朝平壌宣言に則って,不幸な過去を清算し,懸案事項を解決し,国交正常化を実現する意思を改めて明らかにし,日朝間の信頼を醸成し関係改善を目指すため,誠実に臨むこととした。
第二に,朝鮮側が包括的調査のために特別調査委員会を立ち上げ,調査を開始する時点で,人的往来の規制措置,送金報告及び携帯輸出届出の金額に関して朝鮮に対して講じている特別な規制措置,及び人道目的の朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置を解除することとした。
第三に,日本人の遺骨問題については,朝鮮側が遺族の墓参の実現に協力してきたことを高く評価し,朝鮮内に残置されている日本人の遺骨及び墓地の処理,また墓参について,朝鮮側と引き続き協議し,必要な措置を講じることとした。
第四に,朝鮮側が提起した過去の行方不明者の問題について,引き続き調査を実施し,朝鮮側と協議しながら,適切な措置を取ることとした。
第五に,在日朝鮮人の地位に関する問題については,日朝平壌宣言に則って,誠実に協議することとした。
第六に,包括的かつ全面的な調査の過程において提起される問題を確認するため,朝鮮側の提起に対して,日本側関係者との面談や関連資料の共有等について,適切な措置を取ることとした。
第七に,人道的見地から,適切な時期に,朝鮮に対する人道支援を実施することを検討することとした。

―朝鮮側
第一に,1945年前後に朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地,残留日本人,いわゆる日本人配偶者,拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施することとした。
第二に,調査は一部の調査のみを優先するのではなく,全ての分野について,同時並行的に行うこととした。
第三に,全ての対象に対する調査を具体的かつ真摯に進めるために,特別の権限(全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限。)が付与された特別調査委員会を立ち上げることとした。
第四に,日本人の遺骨及び墓地,残留日本人並びにいわゆる日本人配偶者を始め,日本人に関する調査及び確認の状況を日本側に随時通報し,その過程で発見された遺骨の処理と生存者の帰国を含む去就の問題について日本側と適切に協議することとした。
第五に,拉致問題については,拉致被害者及び行方不明者に対する調査の状況を日本側に随時通報し,調査の過程において日本人の生存者が発見される場合には,その状況を日本側に伝え,帰国させる方向で去就の問題に関して協議し,必要な措置を講じることとした。
第六に,調査の進捗に合わせ,日本側の提起に対し,それを確認できるよう,日本側関係者による朝鮮滞在,関係者との面談,関係場所の訪問を実現させ,関連資料を日本側と共有し,適切な措置を取ることとした。
第七に,調査は迅速に進め,その他,調査過程で提起される問題は様々な形式と方法によって引き続き協議し,適切な措置を講じることとした。



さて、以上が「ストックホルム合意」の内容である。

これを見ると、先にストックホルム合意を「一方的に破棄」したのが、どちらなのかは明白であろう。
社説には次のような文面がある。「14年7月に設置された特別調査委の報告期限は「1年程度」だった。真剣に調べているとは思えない態度に終始し、返答を先送りしてきた。報告を待ち望む拉致被害者の家族の気持ちを察すると心が痛む」、と。さて、ストックホルム合意にこの「報告期限」なるものが記されているのだろうか。おそらく、外務省の人間がストックホルムから帰ってきたのち、拉致被害者の生還を求める「強い意志」を持って合意に辿りついたといわんばかりに「一年程度」で答えが返ってくる、とでもいったのではないだろうか。両国間で深く協議し懸案の問題を解決するための合意として「効力」を持つものは、文書以外のなにものでもない。文書に「一年程度」と書かれているだろうか。書かれていない。

もうひとつ付け加えておこう。朝鮮側の行動に記された第二項に注目していただきたい。日本と朝鮮との合意は、そもそも拉致被害者調査も含まれてはいるが、それ以外の人たち(遺骨の問題、在留日本人、いわゆる配偶者)の問題も同時並行的に調査を実施するものとなっている
しかも、である。なんと日本政府(外務省)は、第三項では、朝鮮側が実施してきた「墓参り」の問題では大きく「評価」までしているのである。
そのような双方(いや、朝鮮側)の努力の積み重ねによって、やっとストックホルム合意に辿りつき、この合意がなされたのである。

朝鮮側がこれまで何もしていないのだろうか。ストックホルム合意後、朝鮮は特別調査委員会を設置し、上記の4つの問題を並行的に真摯に行ってきた。そして、日本側に対してもやはり、調査結果を随時、報告してきた。その間、遺骨問題・配偶者問題など新しく発見した資料や名簿、情報は多大である。にもかかわらず、日本政府の一貫した態度は、「拉致問題で進展がみられない」という「一蹴」であった。すべての問題の包括的な解決を求む措置を追求しておきながら、核心的な問題が解決されないと一蹴する。その間、安倍政権は「朝鮮との交渉をしっかりやっている」という評価まで下され、支持率を獲得する。


拉致問題にたいして言及しておく必要があると思う。朝鮮は拉致被害者にたいして真摯な態度をとっていると思われる。一番のネックは「横田めぐみさんの死亡」である。さて、朝鮮側は横田めぐみさんの死亡に関しての一切の情報を日本側に提出し、なんと遺骨まで渡している。当時、日本の専門機関3つがめぐみさんの遺骨を鑑定した。2つの研究機関は間違いない、と。そして一つの研究機関が「疑わしい」と述べた。それに伴い、警視庁はめぐみさんの遺骨を「拉致」するかのごとく、持っていくにいたる。朝鮮側のこの問題に関してのコメントは、「偽物であったならば、至急遺骨を返還せよ。また調査する」であった。さて、その遺骨はどこにいったのだろうか。日本がまだ持っているのである。なんとも奇妙な話であるが、だからこそ朝鮮は一貫して「拉致問題は解決済み」という立場をとっており、今回のストックホルム合意では日本政府の顔を立て寛大にも拉致問題を含んだのであり、その調査も真摯に行っているのである。


現に日本は、在日朝鮮人問題にたいして、高校無償化・補助金の問題をはじめ議論すらしていない状況にある。そして、裁判闘争の中でも一貫して「在日朝鮮人に対する朝鮮および朝鮮総連の不当な支配」というものを声高に叫び続けている。これは「真摯な態度」であろうか。朝鮮総連議長の家宅捜索は一体なんなのだ。朝鮮はそれでも、ストックホルム合意に則って、批判はしたものの、継続して調査を行い、そして随時報告準備が出来た旨を正式に日本政府に通告している。

さて、本題に戻ろう。合意を一方的に破棄したのは、日本か、朝鮮か。

もう一度だけ、ストックホルム合意に立ち返ろう。「双方は,日朝平壌宣言に則って,不幸な過去を清算し,懸案事項を解決し,国交正常化を実現するために,真摯に協議を行った」、とある。お互いの国が尊重し、認め合って、国家同士の国交を結ぶ過程が国交正常化過程である。日本政府は、今回の朝鮮の人工衛星発射に関連して、「衛星を称したミサイル」、「事実上のミサイル」、そして最終的には「ミサイル」と断じて行きながら、朝鮮の自主権にたいして侵害した。そして、更なる追加措置として、「独自経済制裁」を発動した。そののち、朝鮮はストックホルム合意に基づいて、特別委員会を解体する。社説では、最初に「日本の独自制裁への対抗措置」として朝鮮の問題が述べられ、不思議なことに次にまた、「制裁の追加」が述べられる。奇妙な文章の書き方である。「日本の独自制裁」=「制裁追加」であるにもかかわらず、である。

このように巧みに歴史を語る順序をずらしていく。間違いなく、ストックホルム合意を一方的に破棄したのは、日本である。そして、朝鮮はストックホルムの相互尊重の意志に則って、調査委員会を解体した。


2.いわゆるUN安全保障理事会の「制裁決議」について

これまでUNは朝鮮にたいして、どれほどの「決議」を行ってきたのであろうか。
1950年6月28日、朝鮮戦争が始まったのち、すぐに発動された「対朝鮮輸出禁止措置」から始まり、これまで65年もの間、一日の中断もなく、決議をもって苦しめてきたのが、アメリカ主導のUNによる「制裁」である。
「決議1695」(2006年7月15日):すべての加盟国動員し、軍需物資と資金を共和国が「調達」できないようにする
「決議1718」(2006年10月14日):核実験にたいしての決議
「決議1874」(2009年6月12日):第二次核実験にたいしての決議
「決議2087」(2013年1月23日):人工衛星発射がこれまでの決議に反するとして決議

これらは、代表的な「制裁措置」である。朝鮮が一貫して主張したのは、「朝鮮のみ弾劾することは許されない」である。戦争状況におかれた朝鮮が自国自衛のため軍事的訓練をするのは当然のこと。それに対して反発するのならば、毎年恒例で東海にて行われている「軍事演習」にたいして「制裁」をしろということだ。
人工衛星発射に関していえば、全世界の国家が持つ自主権、発展権をUNがないがしろにするのか、と批判している。この「決議」は民族自決権の侵害であり、朝鮮が発展することが「違法」ということになる、として抗議している。

そのような「決議」に違反しているから、日本が強硬姿勢を貫くのは全くもって筋が通る。という話は、まったく筋が通ってない。要は、朝鮮を国家として認めるのかどうか、という問題であり、そのような認識の欠けた国家と国交正常化などできるはずがないのである。日本にあえて一言を付け加えて言うのならば、別に国交正常化など頼んでいない。日本が過去に行った罪悪を贖罪する覚悟があるのならば、はじめて議論してもいいくらいであるのだが、東アジアの安全・平和のため、戦争回避と人民の生命財産・在日朝鮮人のためにかなりの譲歩をしてあげているのである。
それから、「技術転用云々」の問題を述べているが、別に日本の技術がわたっているわけではないだろう。「事実上のミサイル」というのならば、目覚まし時計だって「事実上の時限爆弾」である。問題は、かつての「大本営発表」のごとく振る舞い、大手をふるっているマスコミである。せいぜい、垂れ流し報道をするがいい。そして、過去来た道をまたあゆみ、失敗することとなるであろう。

3.中国の常任理事国としての「責任」について

あまり、長々と書きたくはない。
中国の言い分、朝鮮半島の緊張の原因は米日韓の三角軍事同盟との対立にあるわけなので、対話で解決しなさい。中国が「経済制裁」に乗り気じゃないから、朝鮮が「生きている」などという言葉は間違っているし、これは中国が手助けしているのみならず、中国の東北三省も朝鮮経済とともにあるのだという証左である。
中国が言っているのは、なぜ、自国までをも狙いに定めた米日韓の軍事的・経済的利得のためにわざわざ自分が出ていくのか?自分達でやれ。という話である。
対話に出るのならば協力する。以上である。
それから、アメリカや日本の行っている「制裁」はもう意味がない。カードを全部切ってしまったことだろう。だから、これからは在日朝鮮人団体にたいして、とくに民族教育弾圧に舵を切るしかなくなるだろう。そして、国会では現在朝鮮学校の「補助金」削減の議論をしているのである。

歴史にふたをして、正義ぶって話してところで、嘘は嘘。真実は真実である。
結局、日本は「拉致被害者」のために何をしたのであろうか?
仮に、朝鮮が拉致被害者家族を、朝鮮に全員招聘し、とことん納得のいくまで調査する、という方策を出せば、日本がどのような顔をするであろうか。。。

そのような過程は、対話でしか作られない。そして、今日本は「制裁」を発動し、これに対して右も左も、本土も沖縄も関係なく、「やれやれ!」と言っている。沖縄に「ミサイルの迎撃のため」自衛隊がやってきて、「安心」する姿(そしてそれは、おそらくすべてを代表するものでは決してない)を見て、大いに落胆したものだ。

いまの、日本という状況を作り出しているのは、間違いなく、「右翼」などではない。どこかで見たことがあるな、と思ってしまうのである。



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